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【エグゼクティブのキャリア進化論】 これからの時代をリードするゼネラル・マネジャーの条件とは

時代の変化とともに、キャリアも変化する。それはエグゼクティブとて同じ。今求められるのは、会社の枠を越えて力を発揮できる人材や、自社批判を厭わず、未来に向けて変革を起こせる人材だ。ところが実態はまだまだ追いつけていない。その背景を探るとともに、新事業創出&IPO支援のプロ、エグゼクティブ転職支援のプロの声を聞くことで、いまどきエグゼクティブのあるべき姿を再確認したい。

OPINION 〜インタビュー〜

  • 新事業創出&IPOサポートのプロ 業界を超えて活躍するための秘訣は、掛け算のキャリアにあり トーマツベンチャーサポート株式会社 木村 将之
  • エグゼクティブ転職支援のプロ イノベーションを起こせる人材以外は、企業から求められにくい時代に パーソルキャリア株式会社 木村 浩明

誤解されている、
ゼネラル・マネジャーという仕事の本質

ゼネラル・マネジャー(部長クラス)と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。役職、経験、影響力といった表面的要素だけではなく、新規事業を起こしたり、既存事業に付加価値を創造し次のフェーズに押し上げたり、部下の職業能力を開発し、真の成長を促せたり、ゼネラル・マネジャーとはあらゆる局面にイノベーションを起こせる人材だ、と考える人も多いのではないだろうか。ところが――。

ここに興味深いデータがある。職業別の労働力構成を6カ国で比較したグラフである。各国の労働力を6つのジャンルに分けて比較。特徴が顕著に出ている。まず、イタリアとスウェーデン。専門職が圧倒的に多い。アメリカは他国に比べて管理職の比率が高い。問題は日本である。どの国よりも現業的職業と事務的職業の比率が高いのである(現業とは管理・経営に対して工場・作業場など現場で行う業務を指す)。この実態に警鐘を鳴らすのは、株式会社パーソル総合研究所主任研究員の須東朋広氏だ。

株式会社パーソル総合研究所
主席研究員 須東 朋広

PROFILE

中央大学商学部経営学科、産能大学院経営情報学研究科MBAコース(組織人事コース)卒業。法政大学院政策創造研究科博士課程在学中。専門領域は、グローバル人材マネジメント、人事論、雇用政策、キャリア政策。2003年日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長を経て、2011年7月1日より現職。著書に『CHO~最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社、2004年共著)、『人事部の新しい時代に向けて』『人事部門の進化;価値の送り手としての人事部門への転換』(産業能率大学紀要、共著)などがある。学会発表や人材関連雑誌など寄稿多数。

「ショッキングなデータです。たとえ肩書きは部長でも、実質は事務的職業や現業的職業かもしれない、ということを示されているわけですから。これで世界と戦えるのか。間違いなく今後の課題の一つでしょう。『叩き上げの人材しか社長になれない』『営業成績を上げた人が、マネジメント能力がなくても管理職に上がれる』といった文化も根源は同じです。そもそも「役職者=マネジャー」の概念が間違って認識されていることこそが問題だと感じています」

《図1》 就業者の職業別構成比

アジェンダ設定の重要性

「ゼネラル・マネジャーという役職について研究したJ.P.コッターは著書『The General Managers』の中でこう語っている。"ゼネラル・マネジャーとはアジェンダを創造し、アジェンダを達成するための人的ネットワークを構築する人物のことを指す。人をコントロールするのではなくビジョンへの共感を導く。ただの役割分担ではなく動機づけまでおこなう。社内政治など力のリーダーシップだけでは務まらない"」

須東氏はリーダーシップについての認識の勘違いも指摘する。
「リーダーシップには、対仕事と対人の2種類があります。ところが、日本には対人偏重の人が多い。まったく戦略を持たず、人間関係で乗りきろうとする人材ばかりになると、組織に仕事のできない人の輪が広まってしまう。上司が『いかに社長になるか』というアジェンダ設定をしてしまうと、部下も同じような行動をとる。重要なことはポジションじゃない。短・中長期に向けてビジネスをどのようにしていくのか。そのために仕事の方法をどう変えたのか。部下たちをどう導いたのか。現状をどう変革させたかであるべきです」

マネジャーが果たすべき、10の役割

カナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグの『マネジャーの仕事』という本がある。ここに、マネジャーがおこなうべき10の仕事が整理されている。須東氏は、ゼネラル・マネジャーになる前のマネジャー(課長クラス)という役割から見直すべきである。マネジメントの基本を知り、自分自身を照らし合わせるというシンプルな行為がまず大切だと語る。

「日本ではKPIを管理することがマネジャーの仕事だと勘違いしている人も案外多い。事実(図2の要素でいうと)5.周知伝達者と8.障害処理者の役割しかできてない管理職が多いというのが現実です。一方で、こうした指標を自分のキャリアを創造的に育てるツールとして活用する人も存在する。例えば、マネジメント文化の先進国であるアメリカでは一般的なことです」

《図2》 マネジャーが果たすべき、10の役割

経営陣になれるマネジャーと
なれないマネジャーの違い

マネジャーの役割は経営陣とメンバーとをつなぎ合わせることであり、それは「連結ピン」と言われるくらい重要な任務である。この種のマネジメントにおいても、経営陣になれる人となれない人の違いが出やすいと須東氏は分析する。

「部下に対する管理の指標が、KPIと業績目標達成だけ。数字というコミュ二ケーション手段しか持ってないなら、マネジャー失格と言わざるをえません。それでは組織は動かない。経営陣に対しては『経営をどう良くしていくか』という経営言語で。メンバーに対しては『あなたがどう成長していくか』というキャリア言語で語ること。そうして初めて、マネジャーが組織の中枢として機能することができるのです」

《図3》 キャリア展望を持たせるためのマネジメントとは

課長と部長の違い、答えられますか?

ITやICTの発達、グローバル化により、商品寿命は短縮化。1970年代には5年以上の寿命がある商品が市場の60%を占めていたところが、現在では20%の商品が1年未満という短命で終わると言われている。

「作れば売れる時代の終焉を迎え、モノ主体から人材主体のパラダイムにシフトしていく。そんな中、求められるのは、創造のための変革に挑む人材です。自分のキャリアを守ることに精一杯の管理職に未来はありません。ここに、経営陣とゼネラル・マネジャー(部長クラス)とマネジャー(課長クラス)という3つのレイヤーの仕事を整理しました。実は、部長と課長の仕事の違いを答えられない人も、案外多いのです。今、自分がどのレベルの仕事をしているのか。次は何に挑むべきなのか。キャリアアップの一つの指標として活用いただけると思います。転職する、起業する、今の場所で上を目指す。キャリアアップに場所や形式は関係ありません。自分のキャリアにイノベーションを起こす人こそ、これからの時代をリードする人材なのではないでしょうか」

《図4》 自ら【挑戦と変革】を率先垂範するマネジャーとして

須東氏の提言は、近接領域のプロフェッショナルにはどのように映るのだろうか。多くの新事業創出やIPOをサポートするトーマツベンチャサポートの木村氏、エグゼクティブクラス転職の専門家であるパーソルキャリアエグゼクティブエージェント木村氏にも話を聞いた。

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