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コラム・事例・インタビュー

連載【弁護士監修】知らなきゃ損する!転職と仕事の法律のQ&A

内定取り消しの連絡を受けました。これは違法? どうすればいい?

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Q 内定取り消しの連絡を受けました。これは違法? どうすればいいですか?

求人広告に応募した企業から内定をもらい、現在勤めている会社との退職交渉を進めていたのですが、電話でいきなり「内定を取り消したい」と連絡を受けました。これは違法ではないのですか?どうすればいいですか?(26歳/女性)

A 内定取り消しは労働契約の解約、「解雇」に相当します。まずは企業に「理由」を確認しましょう。

企業が「内定」を通知した時点で、雇用する企業と雇用される人との間に労働契約が成立したと考えられます。内定取り消しは労働契約の解約、「解雇」に当たります。

一般的な契約は、契約を結ぶのも解約するのも当事者間で自由に決めることができます。しかし、「解雇」は例外で、法律によって一定の制限が設けられており、「妥当な理由」がなければ解雇できないことになっています。そのため、内定取り消しの連絡を受けた場合、まずはその理由を企業側に確認しましょう。

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「内定取り消し」が認められるのは、どんなとき?

内定取り消しが法的に認められるかどうかの判断ポイントは、解雇の理由として妥当と考えられるかどうかです。

求職者側に原因があるケースでは、採用の過程で企業が知り得なかった事実が内定後に分かった、かつその事実があることで、内定者がその会社の従業員として業務ができないと判断できる場合や、その事実があることで会社との信頼関係を続けられないと判断できる場合は、妥当な理由と考えられ、企業の内定取り消しが認められる可能性があります。

もっと具体的に言うと、例えば、病気やけがなどが理由で内定先の仕事ができなくなった場合や、会社にうその経歴を伝えていて、その経歴がうそだと会社が知っていれば採用しなかったと言える場合などは、内定取り消しが適法と判断される可能性が高いと言えます。

一方で、一般的に、経営難や配属ポストの廃止といった企業側の理由による「内定取り消し」は、人員を削減する必要性だけでなく、適切な配慮を尽くしたことなど、手続の妥当性も踏まえて有効性が判断されることになります。内定者への配慮を欠く一方的な内定取り消しは無効と判断される可能性が高いと言えます。

企業に内定取り消しの理由を確認して、自分に心当たりがある、自分としても納得できる(または納得せざるを得ない)理由だった場合は、別の転職先探しを始めたほうがよいかもしれません。

「内定取り消し」を撤回させたいときは?

内定取り消しの理由が納得できないものだった場合は、どうすればいいでしょうか。

一つは、自分で、もしくは弁護士を立てて企業と交渉し、内定取り消しの撤回を求めることが選択肢となるでしょう。交渉で解決しない場合は、裁判所の手続き(労働審判もしくは訴訟)で争うことも視野に入れる必要があります。弁護士に依頼して裁判所で争う場合の期間は、労働審判であれば3カ月程度、訴訟であれば1年から2年程度はかかるでしょう。また、費用は、いずれの手続きも、総額で少なくとも数十万円程度はかかるでしょう。

弁護士以外では、都道府県労働局(労働局)に相談するという選択肢もあります。労働局では、専門の相談員が、面談や電話で相談を受け付けており、紛争当事者である企業や内定者に対し、紛争の問題点を指摘し、解決の方向性について助言・指導することになります。また、企業が助言・指導に従わない場合は、あっせんという手続きも用意されており、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が間に入り、話し合いによる解決を図ることもできます。このような労働局による助言・指導やあっせん手続きの結果、内定取り消しが撤回されることもあるかもしれません。

一方的に「内定取り消し」を伝えてくる企業はあきらめる判断も

最後に、「企業の言う内定取り消しの理由に納得はできなくても、受け入れて別の転職先を探す」という選択肢があることも、頭の片隅に置いておくとよいかもしれません。

到底納得できない理由で一方的に内定取り消しを伝えてくる企業では働けない、という判断をすることも一つの考え方です。時間と費用をかけて企業と争って内定取り消しを撤回させた上で、それでもその会社で働きたいかを想像した場合に、早々にあきらめてもっと良い企業を探すというのも、賢い判断だと言えるでしょう。

ここで扱った法律

「内定取り消し」は、「解雇」に相当し、労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。

弁護士:藥師寺正典(やくしじ・まさのり)

弁護士法人第一法律事務所 パートナー(社員弁護士)。経営法曹会議会員。企業の顧問業務をはじめ、労働審判・労働訴訟などの係争案件や、ユニオンなどとの団体交渉対応、労災対応、M&Aにおける労務デューデリジェンス対応など、経営者側での労働法務案件を数多く手掛ける。

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