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Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜

Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜 Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜
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掲載日:2015年8月24日
更新日:2020年8月24日

「やるなら一番素敵に」という野心を持ち続けよう

女性に特化したマーケティング会社、トレンダーズ株式会社を26歳で創業し、2012年に当時の女性最年少社長として東証マザーズ上場を果たした経沢香保子さん。14年10月には、ITを活用した育児支援事業を展開する株式会社カラーズを立ち上げました。28歳のころは、トレンダーズが急成長していた時期。20代の女性社長として注目を浴びる一方で、マネジメントのあり方を模索する日々が続いたと言います。この時のもがいた経験が、その後の仕事の「基礎体力」になったと振り返る経沢さんに、お話を伺いました。

株式会社カラーズ 代表取締役社長経沢 香保子さん

1973年生まれ。慶應義塾大学の経済学部を卒業後、株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社。その後、創業間もない楽天株式会社に転職し、出店者向け教育システム「楽天大学」など、さまざまな新規事業の立ち上げに携わる。2000年、26歳でトレンダーズ株式会社を創業。女性向けの起業塾や女性を対象にしたソーシャルメディア・マーケティングなどを展開。12年東証マザーズに上場し、当時の上場企業の中で最年少の女性社長となる。14年に株式会社カラーズを設立し、代表取締役社長に就任。「アイディアとテクノロジーの力で、女性が輝く社会を実現する」をビジョンに掲げ、1時間1,000円からで即日オンライン手配できるベビーシッターサービス「キッズライン」などを運営する。小学4年の男児と小学1年の女児の母。

~28歳の時~ 強い決意や計画性を持たずに“できちゃった起業”
人のマネジメントは不慣れで模索

小学生のころから「将来は社会に出て働く」というイメージが自分の中に明確にありました。仕事をすることは、経済的にも精神的にも自由になることだと感じていたからです。ただ起業への関心は、社会人になってからも特にありませんでした。26歳でトレンダーズを創業したのは自然な流れというのが正直なところです。大学を出てからリクルートと楽天で経験を積み、MBAの資格を取るために留学しようと楽天を退社。留学に向けて準備をしている間、個人でマーケティングコンサルタントの仕事を請けていました。

そうこうしているうちに規模が徐々に大きくなり、顧客から「法人にした方が取引しやすい」と言われて「それならば」と、自宅でたった一人で起業。強い決意や計画性を持って起業したわけではなく、“できちゃった起業”ですね。留学に行く代わりに、その資金を使って会社経営の経験を積んでみようという気持ちでした。

28歳というと起業して2~3年目のころ。売上が前年の2倍近くに伸び、会社が急成長していた時期です。業績が順調な一方で、会社組織で部下を一度も持ったことのないまま起業した私は、人をマネジメントすることには不慣れで「どうしてみんな私と同じように考えないんだろう」「私だったらこうするのに」と常に「私」が主語で、今思えば人間的に本当に未熟でしたね。会社員時代に鍛えた営業力や突破力で、業績を上げることには何の不安もなかったのですが、いかに組織を強くするか、社員を育成するかということについては、方法が見えず模索していました。

「会社の経営は業績が良ければ良い」とは限らない

少しでもヒントを得ようと、先輩の経営者に話を聞いたり、本をたくさん読んだりしました。その中で、会社の経営というのは、業績が良ければいいということではなく、社会の評価や社員の意欲など、いろいろな要素が相乗的に機能しあって初めてうまくいくものだということに気付いたのです。それからは業績だけでなく、周囲の評判や採用の質などを並行的に高める努力をしながら、マネジメントスキルを磨いていきました。28歳の私は不器用ながらも気力・体力とも十分だったので、一つひとつの試練すべてに真剣に体当たりするしかできませんでした。

がむしゃらに仕事に打ち込んでいた20代。「今は仕事より大切な存在はつくらないと自らを追い込み、『ペットを飼ってはいけない』と自分に言い聞かせていました(笑)」

〜28歳から今〜 思い通りにはいかない子育ての中に
マネジメントのヒントを発見

28歳のころ、もがきながら努力を重ねた経験は、その後の仕事の「基礎体力」になったと感じます。「努力できること」自体が強みであると気付けたし、小さなことを継続する力や困難に直面しても逃げない姿勢など、仕事に対するメンタリティが鍛えられました。退路を断ってあれだけストイックに仕事に打ち込んだのは、今思えば、「自分自身への絶対的な信頼」が欲しかったのかもしれません。一度きりの人生、誰かに依存するのではなく、自分という存在を信じて自由に描いていきたいという思いが強かったのです。

30代で出産を経験したことは、仕事を続ける上でも大きな転機になりました。子どもを育てるというプロセスは、自分の思い通りにならないことの連続。それを味わったことで、今まで私が人をうまくマネジメントできなかったのは「みんなは自分に従うもの」「自分と同じ考え方をするもの」という前提で考えていたからだと気付いたのです。「人を育てる」という点で子育てとマネジメントは通じる要素が多く、視野が広がるのを感じました。

14年にカラーズを立ち上げ、ITを活用した格安ベビーシッターサービスを始めたのも、子育ての経験があったからです。私自身、ベビーシッターがいなければトレンダーズを上場させることはできませんでした。15年2月にベビーシッターサービスの「キッズライン」を始めて以来、ワーキングマザーたちから「こういうサービスを待ってた」という声が集まっているだけでなく、若い世代の女性たちからも「キッズラインがあれば不安なく子どもを生めそう」「生まれたら絶対に使います」という声が聞こえるのがうれしいですね。間違いなく求められているという手応えが、大きな励みになっています。

日本中の女性がベビーシッターを気軽に使える社会に

今の夢は、日本中の女性がベビーシッターを気軽に使える社会にすること。そのためには、男性も含めた社会全体に働きかけていくことが重要で、その点で私がこれまで15年にわたって経営者として身につけた、理想と理論の中立的なバランス感覚が活かせると感じています。もしこのバランス感覚がなければ、社会全体を巻き込んで変えていこうという考えは持てなかったかもしれません。経営者として、母親として、さまざまな経験を積んできた私にしかできないビジネスだと自負しています。

「ベビーシッターの文化を日本に根付かせることで、子どもを育てることが好きな人が、そのスキルを発揮してお金を稼げる社会にしたいという思いもあります。みんなで子育てをシェアしながら発展していける世の中が理想ですね」

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 自らの価値を上げるには、
自分が一番だと誇れるものを見つけて挑戦を続けること

今28歳の女性たちに伝えたいのは「自分自身の価値を上げられるのは自分しかいないんだよ」ということ。私は新卒で入社したリクルートの新人研修で、1週間で550枚の名刺を集めて関東ナンバーワンとして表彰され、そのことがきっかけで「あの記録を出した新人」と部署内で存在を認めてもらえ、社内での人脈もどんどん広がり、その後の会社生活がとても実り多いものになりました。

自らの価値を上げるには、自分が一番だと誇れるものを見つけ、自身のブランドを築くこと。そのためには、目の前のことを漫然とこなすのではなく、「どうせなら一番になってやろう」「どうせなら高く評価してもらおう」 と野心を持って挑戦を続けることが大切です。「野心」と言うとネガティブに捉えられることも多いですが、私は自分自身の可能性を広げるパワーになる欠かせないものだと思います。

また周りの意見に左右され過ぎないことも大事だと思います。何かをやろうとすると、肯定的な意見だけでなく、否定的な意見が寄せられるのは仕方のないこと。否定的な意見は、現状をもっと良くするためのマーケティングデータなのであって、深く気にする必要はありません。

20代のうちはどうしてもまだ視野が狭く、仕事でもプライベートでも、誰かに言われたひと言を深刻に捉えがちです。広い視野を持って、長いスパンで物事を見ることができれば、小さなことでは動じなくなり、気持ちはもっと楽になるはずです。視野を広げるためにも職場の先輩や年上の友人など、自分の先を歩いている人に積極的に話を聞いてみてください。今あなたが悩んでいることは、その人たちも通ってきた道かもしれません。すぐには解決できなくても「みんな同じように悩んできたんだな」と気付くことで、肩の力を抜いて前向きに考えるきっかけになると思います。

15年6月、ベンチャー企業の登竜門とも言われるInfinity Ventures Summit内の新サービス発表の場「LaunchPad」で「キッズライン」が優勝。「評価を得たことで『よし、この事業で日本の育児スタイルに変革を起こそう』とますます使命感が強まりました」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

20代の女子が一人で起業するなんて、今思えば大それたこと。よく頑張ったなと思う一方で、「目先のことをそんなに心配せず、もっと大きな夢を持っていいよ」と声を掛けたい気もします。もし今28歳に戻れるなら、もっと早く上場できるように努力するでしょうね。さらにさかのぼれば、大学生のうちに起業しても良かったという気持ちもあります。目指すべき大きな目標があれば、目の前の小さなトラブルは本当に取るに足らないものになる。慣れない経営に奮闘していた当時の自分にそれを教えてあげたいですね。

編集後記

小学5年生の時に「スーパービジネスパーソンになって結婚するまでに1億円ためよう!」と決意したのが、経沢さんの原点とのこと。「仕事をすることは、自由に近づくこと」という、子ども時代の「仕事」に対する純粋なあこがれこそが、挑戦を続ける経営者人生において、経沢さんを支える力になっているように感じました。

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「自分らしいキャリアを生きる」先輩からのメッセージ

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