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Progress -女性活用の先駆社- Progress -女性活用の先駆社-

男女雇用機会均等法が施行されて約30年。さまざまな制度の整備などによって、女性活用が推進されてはきたが、本当の意味での活用はまだまだ進んでいない。そして今あらためてその必要性が叫ばれている。そのような中、先駆者的に女性活用を進めてきた企業がある。それらの企業はこれまで、どのような課題にぶつかり、それをどのように乗り越えてきたのか。また今後、どう前進していくのか。先駆“社”をレポートする。

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掲載日:2015年4月20日

Progress story #10
アクセンチュア株式会社

岩下 千草 氏 人事部

1998年入社。コンサルタントとして金融業界や官公庁向けの業務改革に携わる。海外勤務を経験後、2002年に第一子を出産、産休・育休を経て復職。08年に人事部に異動し、以降は一貫してダイバーシティ推進を担当。人材育成プランの策定など、人事戦略の全般に携わっている。

同じ「子育て中の女性」でも
働き方の志向はそれぞれ
キャリアの「アクセル」と「ブレーキ」を、
女性自身が踏み分けできる環境

当初は、「取り組む必要はないのでは」という声も 調査によって浮かび上がった男女の差

女性活用DATA

育児休業制度:

子どもが1歳6カ月になるまで取得できる

短時間勤勤務制度:

子どもが小学校を卒業する満12歳まで利用できる

ベビーシッター補助:

ベビーシッターにかかる費用を補助

復職者向けサポート:

育休明け社員のキャリア構築を1年間、個別にサポートするプログラムを実施

総合コンサルティングファームとして、世界120カ国以上でサービスを展開するアクセンチュア。グローバル企業という背景もあり、もともと男女の区別なく働く企業文化が浸透していたため、最初にダイバーシティ推進の話が持ち上がった時には、ダイバーシティの本当の価値や真意を理解できない社員もいたという。「そこでまずは、社内の現状を正確に把握するための徹底したデータ収集と意識調査から始めました」と岩下氏は話す。「採用比率、各組織の人員構成比率、継続意欲、昇進意欲など、男女別にあらゆる指標を算出して比較したところ、ほとんどすべてにおいて男女差があることが分かったのです」。

中でも顕著だったのが、出産後も働き続けることに漠然とした不安を持つ女性社員が多いこと。クライアント先に常駐することが多い職務柄、不安や悩みを周囲に相談できず一人で抱え込みがちなことも見えてきた。そこで2006年、女性が働きやすい環境の整備や女性同士のネットワーク構築を支援する「Women’s Initiatives(ウィメンズ・イニシアチブ)」という社内活動をスタート。所属や役職を越えた社内横断の組織で、活動は今も続く。

さらに次のステップとして、育児支援制度の見直しにも着手。岩下氏は、「追求したのは『アクセンチュアらしい制度とは何か』です。ひと口に『子育て中の女性社員』と言っても、育児の状況も、働き方の志向もさまざま。そのため、制度はできるだけフレキシブルにする必要があると考えました」と説明する。休業前と同じポジションへの復職を前提に、休職期間の上限ラインを模索、育児休業制度は最大1年半まで取得可能にした。また、子どもが小学校を卒業するまで短時間勤務制度を利用できるようにし、子育て中の社員がその時々の状況や志向に合わせて、キャリアの「アクセルを入れる時期」と「ブレーキを踏む時期」を柔軟に選択できる育児支援制度を整えた。

子育て期に入る前に、いかに社内ネットワークをつくっておくか

ダイバーシティ推進の取り組みは2009年から次のフェーズへ。女性が子育てをしながら長く働けるだけでなく、キャリアアップも続けられる環境の整備だ。そのための施策の一つとして、女性社員に対し、組織の中で影響力を持つ男性管理職を指導役につける「スポンサーシップ制度」を導入。昇進に見合うスキルやリーダーシップを身につけるための育成を、直属の上司の責任で行うという仕組みだ。加えて、キャリアの階層別に女性社員向けのトレーニングを充実させるなど、さまざまなアクションを進めた結果、07年には数名だった女性のマネジング・ディレクターが、15年は十数名にまで大幅に増加した。

女性社員向けトレーニングでメッセージとして強く伝えているのは、社内ネットワークを築くことの大切さだ。「特に若手のうちは、専門性を身につけることと同じくらい社内ネットワークを強化することが非常に重要だと考えます。子育て期に入る前に、自分を信頼してくれる人を社内にできるだけ多く持つことで、将来、育児と両立しながらキャリアアップを重ねていく大きな足がかりになります」と岩下氏。ネットワークを通じて、子育て中の先輩社員から経験談を聞くことで、「まだ見ぬもの」への不安を軽減できる点でも価値は大きいという。

また、アクセンチュアのダイバーシティ施策の特色として、男性も含めた職場全体のカルチャー変革を並行して進めていることが挙げられる。その一つが、管理職に向けた各種トレーニングの実施だ。例えば、部下の性別によって、無意識のうちに対応や昇進判断に差をつける「無意識のバイアス(偏見)」があることを管理職に気づかせ、それを取り除く研修を実施している。こうしたトレーニングはこれまで人事部主導で進めてきたが、最近はトレーニングの価値や重要性が広く浸透し、各部署で社員が自主的に実施する動きも出始めている。

子育てをする社員も、それをマネジメントする管理職も、3割を超えれば、「当たり前」に

アクセンチュアがダイバーシティ推進に力を入れる理由を岩下氏はこう語る。「お客さまに最高のサービスを提供するためには、性別や国籍に関係なく、各プロジェクトに最もフィットする社員を世界中から選定してチームを組む必要があります。そうして集まった多様な人材が、個々の最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするには、その人が『自分自身でいられる環境』、言い換えれば、自身のカルチャーやバックグラウンドが組織内でリスペクトされていると実感できる環境を整えることが不可欠です。つまり、『ダイバーシティ&インクルージョン』の推進は、アクセンチュアのビジネスの本質とダイレクトにつながっているのです」。

取り組むべき課題はなお残る。一つは、クライアント企業に常駐してプロジェクトにあたる社員は、常駐先企業の働き方に大きく影響を受けるため、短時間勤務制度などを利用しづらいケースも出てくることだ。こうした中、多様な働き方を実現するための取り組みについてクライアントと一緒に考えたり、議論したりするような機会も増えているという。また、短時間勤務や在宅勤務など、働き方がそれぞれ異なる社員をチームとしていかにまとめるか、どう公平に評価するかも今後の大きな課題だという。

「物事は、経験者が3割を超えると、『当たり前』になると言われます。育児をしながら働く社員が大幅に増え、数年以内には、その社員をマネジメントした経験を持つ管理職も3割を超えるはず。女性が出産や子育てを経ても、キャリアを追求し続けることが『当たり前』となる日を目指して、今後も手を緩めずに施策を打ち続けていきます」と岩下氏。総合コンサルティングファームならではの、現状をロジカルに分析し、あらゆる手段を講じる戦略性と、課題解決への強い信念が伝わってくる。

COMPANY DATA

企業名
アクセンチュア株式会社
設立
1995年12月
従業員
323,000人以上(グローバル・グループ)
事業内容
総合コンサルティング
(戦略コンサルティング、デジタルコンサルティング、テクノロジーコンサルティング、
アウトソーシングサービス)
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