安倍政権が実行している経済政策3本の矢である、財政出動、金融緩和、成長戦略。現在、成長戦略の一環として、「解雇規制緩和」が検討されています。でもこの改革案が実現されることで、これまで以上に会社員がクビにされやすくなってしまわないのでしょうか? この改革の意義とは一体?

 

「従来の日本企業は、定年までの長期雇用により、社員の一生を保証する代わりに、単身赴任、転勤、部署移動、厳しい残業などを強いてきました。高度経済成長期まではこの“日本的経営”が上手くいっていたのに、ここ20年ほどで機能しなくなってきた。そこでこの改革案が登場したのです。これは『会社が社員を解雇しやすくする仕組み』ではなく、これまで曖昧だった会社が社員を解雇する際のルールを明確化することで、実は不当な解雇を減らす意味があるのです」(経済学者・安藤至大さん)

 

「解雇規制緩和」なのに、不当な解雇を減らすなんてとてもややこしく聞こえるのですが…。

 

「緩和というよりは明確化といったほうが良いでしょう。例えば仕事がなくなったことを理由に企業が社員を解雇する“整理解雇”を行うときは(1)経営上の必要性かあること(2)他の回避しうる手段を尽くすこと(3)対象者の選定が合理的であること(4)労働組合または労働者との協議を尽くすこと、が必要な四要素で、これにあたらない場合は不当解雇とされています。これは整理解雇をしてはいけないということではなく、『労働組合に入っているから』といった別の理由で辞めさせたいのに、理由を偽って整理解雇の振りをすることが規制されているのです。しかしこのような規制は中小企業ではほとんど無視され、乱暴な解雇が横行しています。それを防ぐために解雇に『金銭解決ルール』やその他の手段を盛り込んでいこうと話し合われているのです。これまでに退職金も払わずに乱暴な解雇をしていた中小企業にとっては、この制度は事実上の“規制強化”になるんですね」

 

他にこの仕組みづくりの争点や20代が知っておくべきことは何でしょうか?

 

「解雇ルールを明確化する議論と同時に、契約のあり方を多様化させる議論が進んでいます。従来型の定年までの長期雇用か短期雇用(3年契約や1年契約)の二択ではなく、5年契約、10年契約で募集という“雇用形態の多様化”がこれから行われるでしょう。ただ誤解してほしくないのは、これは雇用を不安定にするための制度ではなくて、『いつクビになるか分からない』『一度クビになって非正規になると、正社員になれない』という今の日本の不安定な労働環境から、脱却できるように議論がなされているということです」

 

70歳まで働く時代がくるかもしれない今、僕たち20代はあと40年以上働くことになります。一方、今の企業の平均寿命は約23年、従業員の平均勤続年数は約14年だそうです。そう考えると、60年近い社会人人生で、2~3回の転職はあたりまえになってくるかもしれない。20代にとっては、将来的により安心して働ける仕組みが整うことを願って、この政策の行方をきちんと注視していきたいですね!

 

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識者プロフィール
安藤至大 (あんどう・むねとも) /経済学者。日本大学准教授。専門は契約と組織の経済学、労働経済学、法と経済学。 NHK(Eテレ)「オイコノミア」に講師役で出演中。