あなたは福祉業界に対してどのようなイメージを持っていますか? 

これまで持たれがちな福祉のイメージは、3Kと呼ばれる「キツい」「汚い」「危険」といったネガティブなものでした。しかし本当にそうでしょうか? 

いま、福祉のイメージをポジティブに変える活動で注目を集めているのが、NPO法人Ubdobeの代表である岡勇樹さんです。

彼は「福祉はクリエイティブな仕事」だと教えてくれます。もともと音楽が好きな岡さんは、その趣味を生かして福祉社会に何か反映できないかと考えました。音楽療法に出会ったことで彼は自分の道に確信を持ち、医療福祉・音楽・アートを融合させた「医療福祉エンターテインメント」の活動を行う「NPO法人Ubdobe」を立ち上げるに至りました。現在では障がいを持った方たちが参加できる音楽イベントを開催したり、介護や福祉系の企業ブランディングなどの活動を行っています。

今回、従来のイメージを覆すポジティブでクリエイティブな福祉の魅力について、岡さんにお話を聞きました。

 

福祉の新3Kは「かわいい」「かっこいい」「結構おもろい」

―岡さんはしばしば福祉の新3Kを「かわいい」「かっこいい」「結構おもろい」だとおっしゃっています。そう考えるようになったきっかけはありますか?

「もともと僕はショートステイ等、高齢者施設で働いていたんですが、最終的には訪問介護の職に就きました。そこで会えるおばあちゃんが、とってもかわいいんですよね。認知症で暴言吐いたりもするんですけど、通っていくうちに打ち解けて、ふとした時に笑顔を見せてくれるようになるんです。

次に『かっこいい』ですが、戦争経験など僕らが経験したことのない話をしてもらえることもあり、その体験を乗り越えてきた方たちをかっこいいと思うし、自然と敬う気持ちが生まれました。また、年配の方に共通しているのが、死を意識して生きているということなんです。僕らってなかなか普段、死生観を持って日々の生活を送らないじゃないですか? 年配の方たちを見ていると、それぞれに覚悟を感じるんですよね。

最後に、『結構おもろい』なんですけど、これは僕の希望として、そんなに介護を重く捉えないでほしいんです。こういってしまうと同業界の人に『甘くみるな』と怒られてしまうんですけど。

僕はもともと福祉に全然興味がなかったんですよ。でもふとしたきっかけで介護のアルバイトを経験したことで、イメージが変わりました。だから、あまり重い言葉にして入り口を狭めたくないんですよね。まずは軽い気持ち、楽しむくらいの気持ちで体験してみてほしいです。介護って皆さんが思うよりもとっても身近なんです」

 

批判も活動のヒントにつながる

―先ほど「怒られる」とおっしゃっていましたが、福祉のイメージチェンジを図る活動に、業界からの批判や反対意見もあったのですか?

「音楽療法で、障がい児のための野外フェスを開催したんです。そのときは、障がい児の家族会の方から、『障がい者を売りにして金もうけするな』と言われたことがありましたね。

どうしてそのように見られてしまうのだろうと考えた結果、そういった方たちに自分の活動の思いを伝えたうえで、会うことを提案することにしました。返事はいただいたことないのですが、僕はそういった方たちとも話し合うことで、福祉の活動をより良くするヒントをもらえると思っています」

 

福祉を重く捉える必要はない

―福祉業界以外に勤めるビジネスパーソンにとって、福祉はあまり身近でなく、「関係ない」と思う方も多いのではないかと思います。

「僕自身もいまだに福祉と関係ない人間だと思ってます。というのは、僕はずっと音楽好きな少年から変わってないですし、今もその好きなことを生かして仕事をしています。

若者が関係ないと思う気持ちはごく自然なことだと思います。むしろ僕は最初から福祉を重く捉えてしまうことに賛成はしていません。2025年になれば、介護人材は250万人必要になり、100万人足りなくなるといわれています。ほとんどの人が自分の家族の老後の面倒を、自分たちで見ることになるかもしれません。福祉を特別なこととして捉えるのではなく、ごく当たり前のこととして認識し、今後自分の生活の中に福祉をどう取り入れていくのかを意識してもらいたいですね」

 

福祉は実はクリエイティブな仕事

―最後に、岡さんの考える福祉の魅力とはなんでしょうか?

「『クリエイティブなことをしたいのなら、福祉業界に入りなよ』と僕はよく言います。いろんな業界へ展開できるビジネスチャンスがあるという点もそうなのですが、一人対一人のサービスからこの仕事はできているんですよね。

例えば、介護する相手を名前で呼び始めたら、自分はその人の人生をつくっているという認識を持ち始めることが大事です。自分の仕事は、ただの排泄、入浴の手伝いだと思ってしまったらそこまでですが、認識を変えてその人を知ろうとすることで、その人の生活をコーディネートするクリエイターになれるんです。

食事の介助にしても、毎回同じ食事は食べさせませんよね? 今日は何を食べてもらおう、何をして時間を過ごしてもらおう、折り紙は昨日やったから今日は違うことをしよう、と考えるわけです。なので、当然企画力も求められます。 人の人生に関わる以上、その企画力は人に大きな影響を及ぼしますし、とても深いんですよ。

ただ、自分の能力を発揮できるのは環境が大事だと思っています。自分に合う現場が必ずあるはずなので、もし現状に満足いかないことがあるとすれば、どうか介護の世界から離れるのではなく、まずは自分に合う場所を探すことからしてもらいたいと思います」

いかがでしたか? 岡さんの福祉への取り組み方は、今までの福祉のイメージを完全に払拭し、エネルギーで満ち溢れていましたね。介護がクリエイティブな仕事という発想は今まであまりなかったことだと思います。福祉業界の可能性を見いだす、岡さんの今後の活躍にも注目したいですね。

識者プロフィール

岡勇樹(おか・ゆうき)/
1981年 東京生まれ。3歳から11歳までアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで生活。帰国後、15歳でDJとドラムを始め、19歳でディジュリドゥという民族楽器の演奏を始める。20歳でストリートパフォーマンス集団「ウブドべ共和国」をつくり、活動開始。21歳で母親をがんで亡くし、人生観を根底から覆される。 その後リラクゼーション業界の現場スタッフ/エリアマネージャー/店舗開発営業として日本全国47都道府県すべてを回る。26歳で退社し、音楽療法の学校に通いながら高齢者介護や障がい者移動支援の仕事を始め、「Ubdobe」を立ち上げる。29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立し、代表理事に就任。30歳でリラクゼーションセラピスト集団「Unplug Tokyo」を設立。31歳で音楽レーベル「ONE ON ONE LABEL」を設立。33歳で「株式会社ビーンズ」の取締役に就任し、ニューヨークでの訪問介護事業所設立に向けて奮闘中。NHK出演を経て、厚生労働省の介護人材確保地域戦略会議の有識者に選任される。現在はグリー株式会社のプロジェクトであるPlatinumFactoryの「介護のほんねニュース」編集長も務める。