会社員にとってあまりなじみがないのが確定申告。ほとんどの会社員は、会社から渡される年末調整の書類を提出さえすれば、確定申告をしなくても問題ありません。

ところが実は、会社員でも確定申告をしなければならない場合と、した方が良い場合が存在するのです! 今回は、木村税務会計事務所代表の木村聡子さんに、年末調整と確定申告の基本的な知識を伺いました。

 

そもそも年末調整と確定申告って何?

会社員だと12月に年末調整というものを行うと思いますが、そもそも年末調整とはどのようなものなのでしょうか?


「会社員の場合、毎月の給料の中から所得税・復興特別所得税の分が天引きされていますが、これを源泉徴収といいます。 源泉徴収の額は毎月の給料やボーナスなどから『概算で』計算しているため、実際の所得税・復興特別所得税と、年間の源泉徴収額との間に差異が生じてしまいます。 差異が生じる原因としては、①昇給した(減給した)、②今年の途中から入社した、③扶養家族が増えた(減った)・結婚した、などがあります。 その差異を年の終わりに調整して還付・徴収するというのが年末調整です。いわば、会社員の『プチ確定申告』なのです」(木村聡子さん:以下同じ)


年末調整の際、生命保険料の支払い履歴などを記入しますが、これにはどのような意味があるのでしょうか?


「生命保険、地震保険などを支払った場合、支払金額に応じて、所得金額から課税対象となる金額を差し引くことができる『所得控除』を受けられます。 この控除の資料を付けると年間の税額は少なくなるので、源泉徴収された額の一部が還ってくる(還付)、もしくは徴収額が少なくなるのです。 これが年末調整の書類に生命保険料などを記入する理由です」


年末調整というものが「プチ確定申告」だということは分かりました。では、確定申告とはどのようなものでしょうか。


「会社員の場合、前述したように源泉徴収と年末調整によって年間の所得税が確定します。 しかし、個人で商売をしていたりフリーランスでやっている人は、基本的には源泉徴収されません。 そのため、自分で1年間の収入と経費を集計して1年間の所得と納税額を『確定』して『申告』しなければならないのです。これが確定申告です」

 

会社員でも確定申告をしなければならない3つのケース

では、会社員は確定申告をしなくても問題ないということでしょうか?


「会社員の場合は、基本的には年末調整によって納税が完結するのですが、会社員でも確定申告をしなければならないこともあります。

1つ目は『他の所得がある人』。例えばアフィリエイトをやっていたり執筆・講演などの雑所得があったりする人です。あとはマンションを貸している人などもそうです。 このように、給与所得以外に他の所得がある人(もしくは2つ以上の会社から給与所得を得ている人)は確定申告をしなければなりません。 ただし、この『他の所得』が20万円以下の人は、原則としては確定申告は不要です。

『他の所得』を得た場合、支払い側が事業者の場合はその報酬等について税務署に報告しているため、 確定申告をしておかないと追徴課税されペナルティ(延滞税等)を支払わなければならなくなることもあります。 したがって、『他の所得』が20万円超である場合は、確定申告をするようにしてください。


2つ目は何らかの理由で『年末調整をされていない人』です。年末調整は会社側の義務なのですが、小規模の会社の場合は年末調整をされていない場合があります。 一方、年の途中で退職した人は、12月31日の時点で就職していないため、年末調整がされていません。


3つ目は『年収2000万円を超える人』。年収2000万円を超える人は会社に12月31日まで在籍していても、所得税法の規定により年末調整はしてもらえません。 これに該当する人は、会社からもらう源泉徴収票をもとに確定申告をする必要があります」

 

会社員でも確定申告をしたほうがいい3つのケース

それでは、会社員でも確定申告をするとお金が還付されるのはどのような場合なのでしょうか。


「実は年末調整で受け付けてもらえない控除が存在します。代表的なものは①医療費控除(医療費が10万円を超えてしまう場合に受けられる控除)、 ②「住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)」の1年目(2年目以降は年末調整で減税できる)、③寄附金控除の3つです。 これらは確定申告によって控除を受けられるようになります。これらを申告することで、年末調整の時点で払いすぎた税金が還付されます(還付申告)。 これら3つの控除を受けられる場合は、確定申告をしたほうが良いといえます。

また、例えば不動産を持っているオーナーが、不動産所得について赤字になった際(給与所得以外の所得が赤字になった際)は確定申告をすることで、 税金が戻ってくる可能性があります。これを損益通算といいます。事業所得の赤字が発生した場合でも適用することができます」

 

確定申告をしよう! と決めたら

はじめて確定申告をするには、まず何からはじめればいいのでしょうか?


■ 申告の前に
「まずは自分の住んでいる地域を管轄している税務署を調べてください。確定申告時期には、税務署が無料で相談にのってくれます。 また、毎年1月には国税庁のウェブサイトに確定申告時期に日曜開庁する全国の管轄税務署の一覧が掲示されますので、どの会場に行けば確定申告の相談ができるのか 調べておきましょう。加えて、税理士会各支部による無料相談会も行われています。この相談会も活用して相談してみてください (複雑な所得に関する相談は受け付けておらず、あくまでも簡単な申告だけを受け付けています)」


■申告の時期
「平成26年度確定申告は平成27年2月16日から3月16日までに行います。ただし、会社員のように『還付申告』を目的とする確定申告は1月4日(税務署開庁日)から行えます」


確定申告の時期を過ぎてしまうと、還付申告はできなくなるのでしょうか?


「万が一上記の期限に間に合わなくても、給与所得者で確定申告をしていない人は、最大5年間は還付申告ができます。 ですので、期限を過ぎたとしても諦めずに確定申告をすることをおすすめします」


■申告の際の持ち物

会社員が確定申告をする際に、何を持っていけばいいのでしょうか。


「①まずは『源泉徴収票』です。②『控除を受けたいものに関する書類(医療費控除であれば医療費の領収書など)』も必要です。 医療費の領収書の場合は、病院ごとにまとめて集計して持って行きましょう。③今年度の途中で退職した人は、『国民年金の控除証明書』も必要になります。 国民健康保険については、払った額を集計しておいてください。④住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)の初年度を迎える人は、 『売買契約書』や『登記簿謄本』、『住民票』、『融資額残高証明書』なども持って行ってください。 ⑤紙で申告する場合には認印を、⑥還付金を受ける際の銀行の支店名・口座番号なども忘れずに。⑦以前に電子申告をしたことのある方は電子申告番号も携帯しましょう」


■分からないことがあるときには
申告手続きで分からないことがあるときには、税務署の人に聞けば教えてくれるのでしょうか。


「確定申告の記入の仕方や、添付すべき書類は何かなどついては、税務署の人は丁寧に教えてくれます。ですので、分からないことがあれば気軽に聞いてみてください」

会社員でも確定申告をしなければならない場合と、確定申告をすると還付を受けられる場合があるということを分かっていただけましたでしょうか。 もし、申告する必要がある場合には、税務署等で相談に乗ってもらう前に、まずは手引きや書籍等を見ながら確定申告にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール

木村聡子(きむら・あきらこ)/
ブロガー税理士の草分け的存在。セミナー講師や執筆について多数の実績あり。カフェ好きが高じてオフィスをカフェ風にしてしまったほど。 ブログでは税金に関するトピックだけでなく、カフェラリーのデータも掲載中。主な著書『注文の多い料理店の消費税対応』(中央経済社)