ビジネスのグローバル化が急速に進む近年、グローバルに活躍できる人材への採用ニーズも高まっています。一方で語学力がネックとなり、海外を拠点として、あるいは海外の人を相手にして働くことに対して距離を置いている方も多いはず。しかし、グローバルな人材になるために、ネイティブのように会話ができるほどの語学力は必須なのでしょうか?

「よく『グローバルに働くためにどれくらい語学力が必要ですか?』と聞かれますが、その質問は完全にナンセンスです」

そう語るのは、マッキンゼー・アンド・カンパニー社で12年間採用マネージャーを務めた経験を持ち、2012年に発売されベストセラーとなった『採用基準』の著者としても知られる伊賀泰代さん。今回は伊賀さんの話をもとに、グローバルな人材に求められる条件を考えていきましょう。

社会人は英語恐怖症になっている?

以前キャリアコンパスでは、「決定版!一目でわかるシリーズ一覧 20代の語学力とグローバル志向」という調査を実施しました。

その調査によると、対象となった就労中の22~29歳のビジネスパーソン3,000人のうち、簡単な読み書きや会話ができる(初級レベル)人は全体で23.4%。一方、DODAに寄せられた約5万件の求人のうち、初級レベルの英語力を求める求人割合は全体で61.0%でした。企業が求める英語力とビジネスパーソンの英語力には、大きなギャップがあることがわかりました。

さらに、「英語を使う仕事を担当する」ことを希望する人は21.2%、「昇進・昇格の条件として、英語力を問われる」ことを希望する人は14.4%と、なんと8割のビジネスパーソンは英語を使う仕事に対して消極的であるようです。

グローバルな人材へのニーズが高まっているにもかかわらず、多くのビジネスパーソンが語学力への苦手意識から、グローバルな仕事に対して距離を置いているのかもしれません。たしかに海外で働くことに憧れは抱いても、「英語が話せないしなぁ……」と思うと、諦めてしまいたくなりますよね。

語学力よりも大事な「提供価値」

しかしキャリア形成コンサルタントの伊賀さんは、11月26日に開催されたイベント「DODA×クロスフィールズ×Teach For Japan 特別セミナー グローバルに通用するキャリアの築き方」の講演のなかで、グローバルな人材になるためには語学力よりも「提供価値(自分が提供することのできる価値)」を見極めることが必要だと語っています。

伊賀さんはグローバルな人材とキャリア形成を、この「提供価値」をキーワードに、3つの視点から考えているそうです。

 

■グローバルな仕事

まず「グローバルな仕事」とは、「自分の仕事が海外でも価値がある」「自分が海外でも価値を提供できる」ということ。例えばプログラミングのような仕事は海外でも価値があり、さらに語学力やリーダシップなどの能力が伴うならばグローバルな仕事だといえるそうです。

 

■グローバルな人材

次に「グローバルな人材」については、「グローバルな仕事ができる人材」、つまり「海外でも提供できる価値を持つ」ことに加え、「その価値の提供に必要なスキルを持つ」人材が、海外でも需要があるそうです。そのための語学力は、自分の価値を提供するために必要なレベルでいいと伊賀さんは言います。

 

■グローバルなキャリア形成

最後に「グローバルなキャリア形成」は、「自分の提供価値を高めるためにベストな場所、ベストな組織、ベストな仕事を、地理的制限、言語的制約なしで選ぶ」ことだと言います。例えば金融業界にいた場合、「自分の提供価値を高めるためにベストな場所はニューヨークだけど、語学力や地理的条件が……」などと決めつけてしまうと、グローバルなキャリア形成は難しいと言います。

 

以上のことを踏まえ伊賀さんは、グローバルに働くために ①今の自分の提供価値を見極める ②5年後10年後の自分の提供価値の目標を立てる ③その目標に必要なスキルを身に付ける場所を自分で判断する、ということが若い段階で必要だと語りました。

つまり語学力は、自らがどのような提供価値を持ち、将来身に付けたいと思っているのかによって、どの程度必要かが変わってくるのです。たとえば金融業界に勤める人とメーカーに勤める人、小売業界に勤める人とでは、必要とされる語学力は異なります。その意味で、「グローバルに働くにはどれくらいの語学力が必要か」という問いの前に、「どのような価値を提供したいか」を自分に問う必要があるのです。

さて、皆さんの提供価値はなんでしょうか。もしかしたら自分が提供できる価値は、海外でも求められていることかもしれません。そしてその価値は、自分が思っているよりもずっと簡単な語学力で提供できるものかもしれません。グローバルな人材になりたいという気持ちが少しでもあるなら、語学力があるかよりも先に、自らの提供価値は何か、ぜひ考えてみてください。