28歳、32歳、35歳など、皆さんも転職の限界となる年齢について、いろいろな説を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

「結局のところ、どの説が本当なんだろう?」今回はそんな疑問を、株式会社インテリジェンスのキャリアカウンセラーである中谷正和さんにぶつけてみました!

転職限界説のウソ・ホント

その1:28歳転職限界説

―まず、28歳が転職のリミットという説があります。その理由としては、「その人の人材価値を決定づける30代前半に実績を残すためには、30歳までにはその仕事に就いて、2年ほど仕事を覚える必要がある」ということ。この説は本当ですか?


中谷さん:「リミット」という意味では本当ではありません。30歳まででないと転職できないというわけではないからです。しかし、「28歳までに転職を考えておいた方がいい」という意味では、本当であるといえます。


―つまり28歳は「リミット」ではなく、転職を考えておくひとつの「目安」として捉えておくといいということですね。それはなぜでしょうか。


中谷さん:キャリア理論的には、20代は自分のスキルや可能性を探す「探索期」、30代は専門性を確立する「確立期」だといわれています。このような考え方からすると、30代で専門性を確立するために、20代のうちに転職して、自分に合った専門を探すのはひとつの方法です。


―それでは、もっと早い時期である20代の前半に転職して、自分の確立すべき専門性を探す、というのもアリなのでは?


中谷さん:20代前半で経験が無い人よりも、4、5年は経験を積んでいて、なおかつ伸びしろがある20代後半の人の方が、企業にも採用ニーズがあるのです。そういう意味では、26、27、28歳くらいは転職という手段で自分の可能性を探索するひとつの目安となる時期です。


―なるほど。専門性の探索期である20代のうちでも、企業の採用ニーズが高まる時期であるため、20代後半が転職のひとつの目安になるのですね。

 

その2:32歳転職限界説

―また、32歳が転職のリミットという説もあります。その理由は、「上司が年上であるギリギリの年齢であるため」というもの。これは本当でしょうか。


中谷さん:たしかに、気にする会社もあります。例えば「トップが30歳で、それよりも部下が年上になってしまうことを気にする」などです。しかし、基本的には気にしない会社が増えてきています。日本人的な考え方でいうと、たしかに「上司が年下」であったり「部下が年上」であったりすることで問題が起こります。しかし人口構成が変化して、そうした状況が珍しくなくなってきました。それに伴い、上司と部下は「上下関係」ではなく「役割」の違いであるという考え方の会社が増えてきたのです。


―「上下関係」ではなく「役割」の違いとは、どういうことでしょうか。


中谷さん:つまり「上司と部下」の違いは、「どちらが偉い」ということではなく、「マネージャーとスペシャリスト」というスキルの違いなのです。そうである以上、上司が年上であったり部下が年下であったりしなくてはならない、という慣習もなくなりつつあるのです。

 

その3:35歳転職限界説

―また、一番よく耳にするのが35歳が転職のリミットという説。「その歳を超えると、定年の60歳まで25年を切ってしまい、キャリアアップの時間が足りなくなるため」というのが理由ですが、この説は本当でしょうか。


中谷さん:本当ではありません。理由は、今では35歳以上の方は転職成功者の中の25%以上もいるため。つまり4人に1人は、35歳以上なのです。


―なるほど。以前は35歳限界説が本当だった時期もあったのでしょうか。


中谷さん:そうですね。転職者の平均年齢は上がっていて、今は32歳くらいです。しかし、かつて転職市場が盛り上がっていた2006、7年には、29歳ほどでした。当時は、1993年~2002年前後の就職氷河期に採用することができなかった若手世代を、「第二新卒」のようなかたちであらためて採用する企業が多かったのです。そのように若手への需要が高まった反面、35歳以上の人材への需要が少なかったのです。


―そうした状況が、今は変わってきているのですね。


中谷さん:はい。今では、35歳以上でもスキル・経験を持っている人材へのニーズは増してきています。また、労働人口が減る中で20代が減り、ボリュームゾーンである30代や40代の人材を採用していかないと、企業も人が採れなくなってきています。このような、「人材ニーズの変化」と「年齢構造の変化」のため、現在では35歳限界説は当てはまらないといえます。

 

その4:女性30歳転職限界説

―女性ならではの説もあります。それが、「女性は30歳を超えると求人が減るため、30歳が転職のリミット」というもの。これに関してはいかがでしょう。


中谷さん:これは△でしょうか。当てはまるとしたら、たしかに事務職は30歳を超えた人への求人は減ってくる。女性だから求人が減る、というわけでなく、求人が減る事務職には、これまで女性が多かったのだといえます。でも総合職や専門職であれば、男性と同じくリミットはありません。


―とはいえ、結婚や出産などの人生での節目において、仕事ができなくなることを気にする企業もあるのではないでしょうか。


中谷さん:やはり企業が気にする要素のひとつではあるでしょう。企業も人が欲しくて採用をしているので、1年や2年で抜けられると困る。しかし「30代の女性だから求人しない」というのはなく、年齢にかかわらず、結婚が近いと思われる年代の女性はそのように企業から見られることもあります。でも、それでは若い人材が減っていく今後、どの会社も人を採れなくなってしまいますから、今後そうした状況も変わっていくのではないでしょうか。

 

その5:石の上にも3年説

―最後に、これは年齢にかかわらず、「どんなに嫌な仕事も、3年は頑張れ」という説があります。これは説得力があるのでしょうか。


中谷さん:あくまでも3年というのは目安ですが、本当です。その理由は2つあって、「専門性の蓄積」と「実績の再現性」です。まず、すぐ仕事を辞めてしまうと専門性が身に付けられない。さらに、転職をしようと思ったときには前職での実績をアピールする必要がありますが、そうした実績は3年続けて出して本物だとみなされることがあります。


―なるほど。もう少し詳しく「実績の再現性」について教えてください。


中谷さん:例えば、1年目で実績を出して転職をしようとしたとしても、企業から「1年ならラッキーで結果が出ることもある」とみなされてしまうことがあります。でも、3年間やって3年とも実績を出していれば、「うちにきても確実に結果を出してくれる」と思ってもらえる。そのように、3年という数字は実績の再現性(繰り返し実現できるか)を証明する証しになるかと思います。


―それではやはり、向いていないと思う仕事でも、3年は粘り強く働いたほうがいいのですね。


中谷さん:気を付けなくてはいけないのは、ただ「3年働けばいい」というのではなく、「今の仕事をしっかりやりきる」ということ。「実績が出せないから、他の仕事が向いていると思う」というのは、向いているのではなく逃げているだけだとみなされてしまいます。そうではなく、例えば「苦手な電話開拓を100本やりました。実績も出しました。でも、私がやりたいのはひたすら量をこなすのではなく、お客さんにじっくり提案をして、問題を解決していくことなのです」と面接で言うほうが、絶対に説得力があります。とにかく、いまの仕事をやりきる。その上で「なにか違う」と思うのであれば、次の仕事を見に行ったほうが良いと思います。


―大事なのは「3年」という数字ではなくて、「やりきること」だと。


中谷さん:変に転職を軽く考えてほしくないのです。「転職をすればなにかが見つかるんじゃないか」とか、「やりたいことが見つからないから転職して探す」という人は、転職してもなにも見つけられないでしょう。まずは目の前の仕事をやりきらないと、自分の能力や素養が見えてこないのです。

考えるべきは「リミット」よりも「スキル」

―ここまでお話しを伺っていて、実は現在では、転職の「リミット」はなくなりつつあるのではないかと思いました。


中谷さん:たしかに、今までの採用はその人の「年齢」がものさしになっていました。しかし人口構成が変わっていく中で、その人の「スキル」にフォーカスを当てる動きが高まってきています。スキルがあれば、転職のリミットはなくなりつつあるのです。逆にいえば、生き残っていくためにはその人の「スキル」が常に問われることになります。なので、自分の「スキル」について考えることが20代のうちから必要です。


―つまり、大企業に入りさえすれば安定したキャリアを歩める、という明確なキャリアパスが描けなくなってきた現在では、自分の「スキル」を自覚的に高めていくことが必要だということですね。

身に付けるべき2つのスキル

―具体的にはどのようなスキルを身に付けることが大切なのでしょうか。


中谷さん:身に付けるべきスキルは、「専門スキル」と「ポータブル・スキル」の2つです。これまで、スキルというと「専門スキル」が語られがちでしたが、私は「専門スキル」と「ポータブル・スキル」を合わせて「スキル」だと思っています。「専門スキル」とは、業界知識や専門技能など、その会社や業界の中だけで発揮できるスキル。一方で「ポータブル・スキル」は、たとえば提案力、ヒアリング力、マネジメント力、社内調整力など、ほかの業界でも活用できる、「持ち運び可能=ポータブル」なスキルです。


―つまり、「専門スキル」に加えて「ポータブル・スキル」を身に付けておくことが、転職しようと思ったときに自分の年齢や業界、職種といったリミットをなくすことにつながるのですね。

いかがでしたでしょうか。転職のリミットについては、いろいろな説があります。しかし実はリミットよりも、自分のスキルについて考えるほうが大事だということが分かってきました。「35歳までに転職しないと!」と焦っていた方は、自分で転職のリミットをつくってしまっているのかも。これを機に、ぜひ「自分の伸ばすべきスキルはなんだろう」と、発想を転換してみてください!

 

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識者プロフィール

中谷正和(なかたに・まさかず)/ キャリアコンサルタント。明治大学法学部法律学科を卒業後、新卒では大手ハウスメーカーに就職。注文住宅の営業職に従事をする。その後、株式会社インテリジェンスに転職をし、現在はキャリアコンサルタントとして転職希望者の転職支援に従事。主に、業界・年齢を問わず、営業職に従事をされている方の転職支援を担当。年間約300名の転職相談を受け、その支援を行う。