「キャリアプラン」というと、本田圭佑選手やイチロー選手のように、中長期の計画をしっかりたて、着実に実行していく、というイメージがあります。    
しかし、キャリア理論の中には、「キャリアの8割は偶然によって決定される」という前提に基づいたものがあるのをご存知でしょうか?    
それが「計画された偶発性理論」。偶発性を計画するとは、一体どういうことなのでしょうか?    
今回は、この「計画された偶発性理論」についてご紹介します。    

 

計画された偶発性理論とは?

「計画された偶発性理論」は、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提案したキャリア理論です。

この理論の要点は、
・個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される
・その偶発的なことを計画的に導くことでキャリアアップをしていくべき
という考えにあります。

たとえば、皆さんも仕事を選ぶとき、人との出会いが決め手となった方も多いでしょう。「計画された偶発性理論」では、個人のキャリアはそうした予期しない出来事の積み重ねで作られる、と考えるのです。

 

どうして偶発性を計画することが大切なのか

キャリア理論を大きく分けると、未来に重きを置く考え方と、いま現在を重視する考え方があると、All Aboutのキャリアプラン・リーダーシップガイドである藤田聰さんは言います。

「『計画された偶発性理論』は後者。今を大切にしようという考え方です。クランボルツ教授は、『あまりに未来ばかりに気を取られると現在が見えなくなってしまう』と考えました。目的ばかり見ていると見逃すことも多い。想定外のチャンスを失ってしまうというのです」

このような理論が生まれたのには、時代背景が大きく関わっています。「変化のスピードが速い現代では、10年以上先の未来なんて誰にも予測できない。それなら、予測できない未来への計画というのはほどほどにして、いま想定できる出会いや出来事をベースに、キャリアを広げていこうという発想なのです」(藤田さん)

 

偶発を呼び込むにはどうしたらいいか

未来が予測不可能であるため、今に注目し、予期しない出来事を計画することによってキャリアを築いていく……。
しかしこのような考え方は
、矛盾しているようにも思えます。どうしたら、「予期しない」出来事を「計画」できるのでしょうか。

藤田さんによれば、「予期しない出来事をただ待つだけでなく、自ら創り出せるように積極的に行動したり、周囲の出来事に神経を研ぎ澄ませたりして、偶然を意図的・計画的にステップアップの機会へと変えていくべきだというのが同理論の中心となる考え方」だと言います。(引用:「計画的偶発性(プランドハップンスタンス)理論とは?」All About

具体的にどうすれば予期しない出来事を創り出せるのでしょうか。クランボルツ教授は以下のような行動指針を持つことが大事だと指摘しています。

(1)「好奇心」 ―― たえず新しい学習の機会を模索し続けること
(2)「持続性」 ―― 失敗に屈せず、努力し続けること
(3)「楽観性」 ―― 新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
(4)「柔軟性」 ―― こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
(5)「冒険心」 ―― 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
(参考:『その幸運は偶然ではないんです!』ジョン・D・クランボルツ、A.S.レヴィン著 花田光世ら訳 ダイヤモンド社 2005)

皆さんの周りにも、こうした行動指針を持っていると思える人はいませんか?
そして、その人にはどんどんチャンスが巡ってきてはいませんか?
この5つの行動指針を持っていると、そうでない人より予期しない出来事を創り出しやすくなるのです。

 

未来と現在の両輪が必要

では、予期せぬ出来事を引き寄せるために以上のような行動指針をもとに動けば、目標をつくらなくてもいいのでしょうか。

「『偶発性理論』は、未来の目標を決めないほうがいいと言っているわけではありません。僕は、未来と現在、両輪があってしかるべきだと思っています」と藤田さんは指摘します。
「自分の5年後や10年後のありたい姿、理想像を、僕は『目的地』という言い方をしています。『目的地』を明確にし、何をしたらそこにたどり着けるかという戦略を考える。それが、すべての推進力になるんです」

未来の目的地を定めることが推進力になる。しかし、猛スピードで目的地まで走ってしまうと、道中で出会う予期せぬチャンスを見逃してしまうこともあります。そこで大事なのが今に集中すること。

「今に集中すれば、予期しない出来事にもうまく対応できる。世界中の成功者は誰もが、ビジョンを持っていて、なおかつ偶然をもモノにしたからこそ、成功しているのだと思いますよ」

このように、“未来”の目的地を定めた上で、「計画された偶発性理論」が提示したような5つの行動指針に基づいて“今”行動することが、キャリアアップにつながるのです。

 

いかがでしたでしょうか。「キャリアプラン」というと、“未来”のことを考えることであるようなイメージがありますが、それだけでは不十分。“今”にも目を向けることが大切なのです。さて、皆さんのキャリアプランは、未来と今をバランスよく見つめたものになっているでしょうか?

 

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識者プロフィール

藤田聰(ふじた・さとし)/All About「キャリアプラン・リーダーシップ」ガイド
米国留学を経て、新卒として日本アイ・ビー・エムに入社。慶應大学大学院経営管理研究科修士課程から、PAOS等のコンサルティング会社でプロジェクトマネジャー、取締役を歴任。1997年、市場価値測定研究所を設立。これまで15年間で150社、延べ50万人以上のビジネスパーソンの能力測定を実施してきた。現在は企業変革創造の代表として、大手企業からベンチャー企業まで個々の社員や企業文化の変革支援を行っている。