皆さんは普段、有給休暇をどれくらい取得できていますか?
先日国会で「管理職を含むすべての正社員に、年5日程度の有休を取らせることを義務付ける」という労働基準法の改正案が提出され、与党部会から承認されました。この改正案が提出された背景として、厚生労働省の調査で2013年の労働者の有休取得率が48.8%*にとどまったことがあります。これは、日本は諸外国と比べて有休取得率が低いことや、社員のほうから有休取得を申し出ることは職場への遠慮からなかなかされにくいなどの事情もあるといわれています。
この改正案が実際に施行されると、働く私たちにはどのような影響があるのでしょうか?
今回は、社会保険労務士の榊裕葵さんに、この年次有給休暇の義務化についての詳細や働く側の懸念点、準備しておきたいことなどを伺いました。

 

年次有給休暇の義務化後、取得方法は変わるの?

−−実際、年次有給休暇の取得が義務化された場合、有休取得方法はこれまでと変わるのでしょうか?
「社員が会社に対して申し出て取得するという原則自体は変わりません。有給休暇は勤続年数に応じて最大で年間20日付与されますが、現在の政府案においては、付与される有給休暇のうち、5日分に限っては、会社が時季を定めて与えるという形になるようです。なお、会社が時季を定めるにあたっては、社員側の意見を聞くべきことが努力義務として厚生労働省令に盛り込まれる見通しです」(榊さん:以下同じ)

 

パートやアルバイトも有給休暇取得が義務化される?

−−ところで、正社員に限らず、パートやアルバイトでも有休取得の義務化はされるのでしょうか?
「パートやアルバイトであっても、勤続年数に応じて、有給休暇が付与され、義務化の対象にもなります。そもそも、有給休暇の付与に限らず労働基準法は正社員とパートやアルバイトを区別していません。
ただし、有給休暇には『比例付与』という考え方があり、勤務日数や勤務時間が一定以下のパートやアルバイトの人は、有給休暇の付与日数がフルタイムで働く人よりも少なくなる場合があります。勤務日数が少なかったり、勤務時間が短かったりして、その年に与えられる有給休暇の日数が10日に満たない人は、現在の法案では義務化の対象にはならない見通しです」

 

働く立場にとっての懸念点は?

取得が義務化されるとすると、労働者にとってはメリットがあるように感じられますが、同時に懸念点もあると榊さんは言います。


懸念点1:会社がカレンダー上の休日を有給休暇の付与日にしてしまう可能性
「実務上、私がもっとも懸念しているのは、有給休暇の義務化の制度自体が『骨抜き』になってしまうことです。会社がこれまでカレンダー上の休日であったお盆や年末年始を出勤日とし、そこを有給休暇の付与日にしてしまえば、稼働日を減らすことなく法律上の義務を消化できます。社員にとっては、単に手持ちの有休日数が減っただけ、という結果に終わってしまいかねません」


懸念点2:休暇が増えることで仕事が終わらず、書類上の有休になる
「書類上は有給休暇を取得したことにして出勤させられる、あるいは自発的な責任感から出勤したり、自宅に仕事を持ち帰って有給休暇の取得日に仕事をしたり、ということも起こりうると思います。根本的な打開策としては、やはり仕事自体の効率化を図っていくしかないと思います」

最後に、榊さんに年次有給休暇の義務化にあたり、私たち働く側が準備しておくべきことや心構えを教えてもらいました。

「まずは、会社の繁忙期や閑散期を意識し、“自分がどこで有給休暇を取得するべきか”をシミュレーションしておくといいでしょう。多くの会社において、まずは社員側から休みたい日を自己申告させて、それを元に上司が調整をするという段取りになると思います。このとき、“空気を読んだ有給休暇の申請”をすれば、上司や同僚からの信頼も上がるのではないでしょうか」

制度を利用して自分の株を上げるというのはなかなか鋭いですね。また、自分が休みやすい体制を日頃からつくっておくことも大切、と榊さんは語ります。

「前もって、自分の仕事の“棚卸し”と“見える化”を行っておけば、上司や同僚が自分の仕事の内容を知り得るので、自分が休んでも最低限のフォローはしてもらえます。部署の中で、お互いにフォローし合えるような体制をつくっていくことで、気持ちよく有給休暇が取得できる職場環境が醸成されていくのではないでしょうか」

有給休暇が義務化されるにあたって、ますます上手な有休取得方法を身に付ける必要がありそうです。榊さんのアドバイス通り、今から対策やできることを考えておきましょう。

*出典:平成26年就労条件総合調査結果の概況(厚生労働省)


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識者プロフィール

榊裕葵(さかき・ゆうき)/ 特定社会保険労務士(あおいヒューマンリソースコンサルティング代表) 上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。