「明日、休みだけど出勤できる?」
急いで対応しなければいけない仕事や同僚の病欠など、その理由はさまざまですが、上司からこのような言葉で、休日出勤を依頼されることもあるのではないでしょうか。社会人たるものやむを得ない事情も分かるので、できる限り協力したいものですが、休みの日に出勤する以上は手当の有無や金額も気になるところ。そこで、今回は休日出勤をする前に知っておきたい、休日手当の仕組みについて、社会保険労務士の榊裕葵さんに教えてもらいました。

 

■休日出勤をしても手当が出ないことがある!?

会社から休日出勤を依頼された場合、なんといっても気になるのは休日出勤手当の有無。所属する会社の雇用契約や就業規則によっては休日出勤手当を支給されないことも。榊さんによれば、休日出勤をしても休日手当が支給されないパターンは次の3つが考えられるといいます。

 

【パターン1】基本給の中に休日出勤手当が含まれている場合

「たとえば雇用契約書に、『基本給25万円とする。ただし、うち5万円は固定払いの割増賃金とする』と書かれていた場合、時間外労働や休日出勤によって発生する賃金が5万円を超えない限り、休日手当は支払われません。いわゆる“みなし残業”と呼ばれ、固定残業制や定額残業制という名の下に賃金が定められているケースです。年俸制であっても、年俸の一部に時間外労働や休日出勤に相当する割増賃金が含まれている場合があります。まずは雇用契約書を確認するようにしましょう」(榊さん:以下同じ)

 

【パターン2】労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合

「管理監督者は労働基準法の時間外労働や休日労働に関する条項の適用除外となっており、会社は割増賃金を支払う必要がありません。管理監督者とは経営者と一体的な立場で仕事をしており、出社・退社、勤務時間について厳格な制限がない、地位にふさわしい待遇がなされている人のことで、契約書上は主に管理職の人が該当します。ただし、会社から管理監督者と認定されていても、実務上の権限や賃金等の待遇がともなっていない『名ばかり管理職』といったケースもあるので注意が必要です。雇用契約書を確認し、管理監督者としての実務内容や待遇に疑問点があれば、労働基準監督署などの専門窓口に相談してみるとよいでしょう」

 

【パターン3】振替休日の適用対象となる場合

「振替休日とは、『日曜日に出勤してもらう代わりに水曜日を休みにする』など事前に会社が予告した上で、休日を変更するものです。この場合、会社が『休日を移動して取得させた』ということになるので、労働者へ休日手当は支払われません。ただし、会社側が振替休日を行うには、就業規則等であらかじめ振替休日の制度や適用条件等を定めておく必要があるので、まずは就業規則を確認するようにしましょう」

 

■休日出勤をする際に知っておきたい予備知識

休日手当が出ない状況で働く、といった不利な状況を避けるためにも、休日関係の基本的な法律用語を押さえておきましょう。

 

1.「休日」と「休暇」の違い

基本的に、休日手当は「休日」には発生しますが、「休暇」には発生しません。
(そもそも、労働者の休む権利である「休暇」に出勤させるということは法的にあってはならないことです)

休日:会社のカレンダー上、はじめから休みになっている日のこと
休暇:会社のカレンダー上、出勤義務がある日を、法律や就業規則の根拠に基づいて休みとする日のこと(有給休暇・産前産後休暇・裁判員休暇など)

「会社によっては、休日が連続する場合“GW休暇”とか“年末年始休暇”と呼んだりすることがありますが、この場合の“休暇”とは、上記の法律上の“休暇”とは異なり、法律上は“休日”の一種ですので、混乱しないようにしましょう。“GW休暇”や“年末年始休暇”に出勤した場合も、休日扱いになり、もちろん休日手当の対象になります」

 

2.「法定休日」と「所定休日」の違い

出勤した日が「法定休日」か「所定休日」かにより、休日手当の計算式が異なるので、違いをしっかりと理解しておきましょう。

法定休日:週1日、または4週4日与えなければならない法律上の最低限度の休日
所定休日:法定休日にプラスして会社が付加的に与える休日

「たとえば週休2日制の会社であれば、土曜日が所定休日、日曜日が法定休日、というようなイメージです。ただ、必ず日曜日を法定休日にする必要はありませんので、土曜日が法定休日でも差し支えありません。会社の就業規則次第です」

 

3.「振替休日」と「代休」の違い

振替休日は休日手当が発生しませんが、代休は発生します。

振替休日:「日曜日に出勤してもらう代わりに水曜日を休みにする」と、事前に休日変更を予告された場合
代休:「本来は休日である日曜日に出勤させてしまったから、代わりに次の水曜日休んでいいよ」と、事後に特定の出勤日の就労義務を免除した場合の休み

「この2つの違いは“事前”か“事後”かです。振替休日は『休日を移動して取得させた』ということになるので休日手当は発生しませんが、代休は『休日に出勤させた』という事実自体は消えないので、会社は休日手当を支払う必要があります」

 

■休日手当を計算する3ステップ

基本的に、休日手当は次の計算式によって求められると言います。

「1時間当たりの賃金×割増率×出勤時間」

 

【ステップ1】「1時間当たりの賃金」を出す

「時給者の場合は時給そのままです。(時給1,200円の場合は1,200円が該当する)
月給者の場合は、『月給×12÷(365-年間休日)÷1日の所定労働時間』の計算式で求めます。月給者は、月毎の休日数によって1時間あたりの賃金がデコボコにならないよう、年平均で1時間あたりの単価を出すことになっているのです」

 

【ステップ2】「割増率」を選んでかけあわせる

「法定休日に出勤した場合は1.25倍、法定外休日に出勤した場合は1.35倍になります(法定どおりの割増率の場合)。会社の就業規則でこれ以上の割増率が定められていることもありますので、就業規則を確認してみてください」

 

【ステップ3】「出勤時間」をかける

「最後に、実際に出勤した時間をかけあわせます。これで休日手当の額を算出できます」

例)月給20万円、年間休日120日で、1日の所定労働時間が8時間の人が、法定外休日に出勤して8時間働いた場合の休日手当

20万×12÷(365日-120日)÷8=1,225円(1時間当たりの賃金) ※端数は切り上げた
1,225円×1.25×8時間=12,250円

 

■休日出勤は信頼獲得のチャンス

今後、私たちが休日出勤を行う際に何に気を付ければいいのか、榊さんにアドバイスをいただきました。

「休日手当は、きちんと法律に基づいて計算されるものです。給与明細を受け取ったとき、自分の休日出勤分が正しく反映されているかを確認し、誤りや疑問があればすぐに申し出ましょう。

また、休日出勤で得するためには、上司から休日出勤を頼まれた場合、冠婚葬祭などの事情がない限り、快く応じることがポイントです。上司も内心『申し訳ない』と思って頼んでいるので、前向きに返事をすれば『頼りになる部下だ』と信頼してもらえることでしょう。普段、こうして快く応じておけば、本当に用事があるときに『この日だけは…』と断りやすくなることもあります。

また、休日に仕事をするときは、平日のように慌ただしく電話が鳴ったり、来客や会議で上司が席を外したりすることもないでしょうから、落ち着いて上司に相談できますし、アドバイスを受けることもできるはずです。ランチをごちそうになりながら、普段と違う上司の一面も見ることができるかもしれません。休日出勤をしなければならない機会があったときは、休日出勤という環境を前向きに生かし、上司の信頼を勝ち取りましょう」

 

いかがでしたか? 休日手当や会社の雇用契約書に書かれた内容について、事前に正しく理解する必要があることがお分かりいただけたことでしょう。その上で、休日出勤の依頼があれば、快く受け入れたいものです。上司から依頼されるのは、頼られている証拠。信頼獲得のチャンスをものにするつもりで臨んでみてはいかがでしょうか?

識者プロフィール

榊裕葵(さかき・ゆうき)/特定社会保険労務士(あおいヒューマンリソースコンサルティング代表)。上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。