転職のメリットは年収アップだと思っていませんか? 大日本印刷などの大企業からライブドアといったベンチャーまで、全て正社員で計9回の転職を経験してきた小林佳徳さんは「年収アップ目的での転職ならば、しないほうがいい」と語ります。そこで年収アップが見込めなくても後悔しない転職の条件を、小林さんに伺いました。

 

通算転職回数は9回! そのキャリアとは?

小林さんは、現在は株式会社マナボという教育系スタートアップで「スマホ家庭教師mana.bo」という、中高生向けのデジタル教育サービスの開発を行っています。また昨年には著作『社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話』を出版するなど、活躍の幅を広げています。

「小林さんは新卒時、大日本印刷からキャリアをスタート。その後、大企業であるベネッセコーポレーションや、堀江貴文さんが社長を務めたメガベンチャー企業のライブドアへ転職。その後も社員数十名規模のスタートアップなどさまざまな規模やステージの企業で職歴を持ち、その転職歴はなんと9回! それぞれの転職がどのようなものだったのか、振り返ってもらいました。

 

■1社目→2社目
大日本印刷株式会社→株式会社ベネッセコーポレーション
(1)転職時の年齢:25歳
(2)前職に比べ年収:アップ
(3)職種:ネット系企画総合職→デジタル教育サービス開発運用職
(4)会社の規模:1万人→1,500人
(5)転職の目的:
・より先進的にインターネットをビジネスに取り入れている企業へ行きたかったため。
・BtoBよりもBtoCの将来性に引かれたため。


■3社目
→株式会社クロスポイント(IT系ベンチャー)
(1)転職時の年齢:29歳
(2)前職に比べ年収:激しくダウン
(3)職種:Webサイトマスター
(4)会社の規模:10人
(5)転職の目的:
・教育という事業ドメインだけにとらわれず、上流工程のみならず、自分の手でダイレクトにサービスを制作してみたくなったため。


■4社目
→エッジ株式会社(ライブドアの前身)
(1)転職時の年齢:30歳
(2)前職に比べ年収:ややアップ
(3)職種:携帯サイトディレクター
(4)会社の規模:200人
(5)転職の目的:
・雑誌で見かけたホリエモン(堀江貴文)のコラムに興味を持ち、ブームになっていたビットバレー(渋谷)のベンチャー企業で働いてみたかったから。


■5社目
→株式会社モバイルファクトリー(モバイル系ベンチャー)
(1)転職時の年齢:32歳
(2)前職に比べ年収:ダウン
(3)職種:Web系新規事業企画
(4)会社の規模:30人
(5)転職の目的:
・“ライブドア事件”が起こり、一度自分の働き方をリセットしたかったため。
・ライブドアに入ったころのような小さい組織で働きたいと考えたため。


■6社目 
→株式会社ライブドア
(1)転職時の年齢:33歳
(2)前職に比べ年収:アップ
(3)職種:人事総務担当
(4)会社の規模:2,700人
(5)転職の目的:
・現LINEの代表取締役社長CEOの出澤剛さんに呼び戻されたため。
・ライブドアで、事件が起こってしまって成し遂げられなかったことに再挑戦したかったため。


■7社目
→株式会社イトクロ(教育系ベンチャー)
(1)転職時の年齢:35歳
(2)前職に比べ年収:ダウン
(3)職種:人事総務マネージャー
(4)会社の規模:30人
(5)転職の目的:
・今の自分で会社に貢献できることはやり切った感があったため。
・未経験だった新卒採用業務に取り組んでみたくなったため。
・これまでの経験を踏まえ、若手のネット人材育成の可能性を感じたため。


■8社目
→有限会社コロン(モバイル系ベンチャー)
(1)転職時の年齢:36歳
(2)前職に比べ年収:そのまま
(3)職種:携帯サイトディレクター&人事
(4)会社の規模:20人
(5)転職の目的:
・前職において年収面で厳しい条件を提示され、生活していくために。
・ライブドア時代に取引があった会社だったため元同僚のエンジニアの紹介で。


■9社目
→株式会社ベネッセコーポレーション
(1)転職時の年齢:39歳
(2)前職に比べ年収:そのまま
(3)職種:デジタルマーケター
(4)会社の規模:2,000人
(5)転職の目的:
・10年前の退職からデジタル教育市場の環境も大きく変わったので、あらためて身に付けたスキルがどれくらい通用するかリベンジするため。


■10社目
→株式会社マナボ(教育系ベンチャー)
(1)転職時の年齢:41歳
(2)前職に比べ年収:ダウン
(3)職種:スマホアプリ開発ディレクター
(4)会社の規模:15人
(5)転職の目的:
・これまでの「デジタル」と「教育」の経験が、どこまで通用するか試してみたかったため。
・投資などの資金調達で、ITベンチャーでも大企業に負けない成長を今ならできると考えたため。

 

転職において重視すべきポイントは?

数多くの転職を経験してきた小林さんが考える、転職において重視するべきポイントは2つあると言います。

 

◯スキルアップを重視〜自分の市場価値を高めるための転職〜

「転職条件をする上で、20代のうちは、年収よりも転職することで積める経験、スキルアップ、手に入る環境について重視するべきでしょう。

もし、20代でたまたま年収1,000万円の職業に就けたからといって、そこで実績を上げることができなければ、その先リストラされたりするかもしれませんし、転職したくなっても経験がなければ同じ給料をもらうことは難しいといえます。

向こう5年10年先だけの収入ではなく、60歳以上になっても稼ぐことができる市場価値の高い人材になるために、今何を身に付けるべきか、そのために転職するべきかどうか考えるのが良いでしょう」(小林さん)

 

◯仕事へのワクワクを重視〜モチベーションを維持するための転職〜

「もうひとつ、重視するポイントは仕事へのモチベーションです。『ワクワクするような仕事がどれくらいありそうか』、『新しい経験や人脈がつくることができそうか』、『ロールモデルになりそうな人がどれくらい働いていそうか』などを踏まえ、朝起きたときに早く職場に行って働きたい!と思える状態を維持するのもポイントです」(同)

 

後悔しない転職をするための4つの条件

それでは、後悔しない転職をするための条件はなんでしょうか?

 

1.無計画な転職をしない。

「特にフリーになりたいわけでなければ、『転職活動に時間が割けないから』と次の仕事が決まる前に会社を辞めるのはNGです。

確かに働きながらの転職活動は普通に働くだけの場合の2倍くらい大変ですが、限られた時間の中で努力をするいい経験にもなります。

また、完全に無職になってしまってからなかなか次の就職先が決まらないと社会保険もなく、貯金も減っていくので焦ってしまい、余計に決まらなくなるという悪循環になるリスクがあります」(同)

 

2.限られた情報だけをうのみにしない。

「限られた情報だけで企業を判断せず、多面的に情報収集するのが大切です。また、多くの情報から価値のある情報を選び取るために、転職において何を重視するのかという、ブレない軸をまず決めてから、企業を絞り込んでいくのがいいでしょう。

そのため、優先したい条件は明確に決めておくと進めやすいでしょう。また、希望する会社で働いている人と事前にコンタクトをとってみるのも有効です」(同)

 

3.労働条件や環境は徹底的にリサーチする。

「新卒の就職活動時には聞きづらいような質問も、中途であれば、思い切って経営層にぶつけてみることも必要でしょう。

どういう人材を採用して、どういうビジネスをやっていこうと考えているのか、何を期待されているのか、どんな上司につくのかなど、労働条件や環境に注意します。そこの確認が曖昧なまま表面上の条件確認だけで入社してしまうと入社後に『こんなはずじゃなかった』ということにもなりかねません」(同)

 

4.うまい話には要注意!

「『とにかくすぐ来てほしい』そんな会社も中にはあると思いますが、あまりに極端な場合は要注意です。数名のスタートアップであればやむを得ませんが、何にしろ『どうしてそこまで急に人が必要になったのか?』と相手の立場になって考えてみるべきです。

極度に不安定な就労環境の可能性もあるので、うまい話も冷静に受け止めることが必要といえます。条件が良すぎる、なども要注意です。うまい話には裏があると考えるべきです」(同)

 

最も大事なことは自分の市場価値を上げること!

いかがだったでしょうか? 最後に小林さんは、20代のビジネスパーソンに向けて以下のように語ってくれました。

「転職をすると『自分の力は社外でどれくらい通用するのか?』『自分の腕だけでどれだけ稼げるのか?』など、自分の市場価値を嫌でも意識させられます。そうした“自分自身の稼ぐ力”から目を背けず、毎日の仕事にも取り組むことが、なりたい自分に近づくための方法です」

最近は、会社が個人の生涯を一生保障する時代ではなくなってきています。皆さんも会社という枠に縛られず、転職活動を通じて“自分自身の稼ぐ力”を見つめ直してみてはいかがでしょうか? 

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識者プロフィール

小林佳徳(こばやし・よりのり)/ 1973年5月16日、山梨県甲府市生まれ。1998年に新潟大学大学院修了後、大日本印刷、ベネッセコーポレーション、ライブドアなど、大企業やベンチャー、スタートアップなど10社を経験。一貫してインターネットビジネスの制作業務に従事。またライブドア事件の経験を元に記した著作『社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話』を2014年夏に出版。現在は、株式会社マナボという教育系スタートアップで中高生向けのデジタル教育サービス「スマホ家庭教師mana.bo」の開発ディレクションを行う。

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