相手に自分の思っていることを伝えられない、伝えても誤解されてしまうなど、多くの方が抱えるコミュニケーションの悩み。そこで有効なのが「アサーション」というコミュニケーション技法です。

 

アサーションとは、「人は誰でも自分の意思や要求を表明する権利がある」という立場に基づき、適切な自己表現を行う技法のこと。今回はそんなアサーションの基本スキルを、株式会社日本・精神技術研究所の石井隆之さんに伺いました。

 

アサーションとは?

アサーションとは具体的にどのようなものなのでしょうか。石井さんはこう教えてくれました。

 

「アサーションとは、“伝える”と“受け止める(聴く)”のバランスをとることで、自分も他人も尊重するコミュニケーション方法であり、人間関係のスキルです。

つまり、アサーションのスキルを用いることで、やりとりの中で自分の気持ちや考え、欲求などを後回しにせず、それでいて伝えたい目の前の相手のことも十分に尊重した自己表現をすることができます」(石井さん:以下同じ)

 

アサーションで自信と信頼が得られる

自分も相手も尊重したコミュニケーションの方法であるアサーション。20代のビジネスパーソンにとって、どのようなシーンで、どのように活用できる手法なのでしょうか。

 

「仕事上、先輩や上司に囲まれるシーンが多い20代の場合、陥りがちなのが自分の意見やアイデアを言えない、分からないことがあっても遠慮して聞けない、などの状況です。

また日常生活でも、親しい友人との関係を保ちたいあまりに頼まれごとを断れなかったり、家族に対して日頃のうっぷんをぶつけてしまうなど、自分の言いたいことが的確に相手に伝わらない・伝えられないというコミュニケーション上の悩みは尽きないものです。

そこで、“誰もが自分を表現しても良い”という権利に根ざしたアサーションをしていくことで、コミュニケーションに自信がなかった人は自信を持つきっかけになりますし、率直なコミュニケーションによって、相手との信頼関係を築くことにもつながります」

 

アサーションの基本スキル5つ

コミュニケーションに自信を持ち、信頼関係を築くためにも、ぜひ実践したいアサーション。まずは次の、5つの基本スキルから取り組んでみましょう!

 

(1)“私”を主語にして伝える

「自分が相手に伝えたいと思っていることは、自分にしか分かりません。ですから、そのことを伝えるときは主語を“私”にして伝えましょう。

自分の気持ちは自分自身が起こしているものですから、“あなたが”とか“みんなが”ではないのです。“私”を主語にして伝える“私メッセージ”によって、自分の気持ちを把握して伝えることで、自分の言動にも責任が持てるようになります」

 

(2)自己開示をする

「自己開示とは“自分のことを相手に知らせる”ということです。“話上手は聞き上手”とは言うものの、聞いてばかりでは相手に理解してもらうことはできません。コミュニケーションはキャッチボールですから、自分の話もオープンにしてみましょう」

 

(3)“聞く”のではなく相手に興味を持って“聴く”

「これは“積極的傾聴”といわれるものです。相手が何かを言っているということは、自分に何かを伝えようとしてくれているということです。そのメッセージを受け取るときは、相手の発した言葉だけを聞くのではなく、“何を伝えようとしているのだろう?”というように相手の思いや気持ちを理解しようという姿勢で“聴く”ことが大切です。

言葉だけを受け止めるのではなく、相手そのものに興味を持つということは、スキルというよりも姿勢や態度を工夫することといえるかもしれません」

 

(4)言葉と言葉以外のメッセージを一致させる

「コミュニケーションは、言葉のみでされているわけではありません。表情や姿勢、口調など、言葉以外(非言語)のものからもたくさんのメッセージが送られています。

笑顔で“やめてください”と言っても“やめてほしい”気持ちは伝わりませんよね。言葉と言葉以外のメッセージが一致しないと、相手には伝わらないどころか、相手は混乱することもあります。特に気持ちを伝えるときには、表情や姿勢、口調なども一致させるよう心がけましょう」

 

(5)DESC法を使って伝える

「“DESC法”とはアサーションのスキルの一つで、問題解決場面や交渉、考えをまとめたりするときに有効な方法です。

DESCは、Describe、Express、Specify、Chooseのそれぞれの頭文字を取ったものです。

 

Describe:取り上げたい事柄を客観的に描写する

Express:その事柄に対する自分の気持ちを表現する

Specify:DescribeとExpressを受けて、自分としてどうしたいか、どうしてほしいかなどを明確に提案する

Choose:提案に対する相手の反応を予測して、「YESの場合」「NOの場合」と、それぞれの結果に対する自分の対応の選択肢を用意する

 

この4つのステップをD→E→S→Cという順番に、セリフとして用意するのが“DESC法”です。

例えば、“約束があるときに急ぎの仕事で残業を頼まれたが、約束を優先したい”と思った場合、それを上司やチームリーダーに申し出るときは、次のようなセリフが考えられます」

 

D:急ぎの仕様書作成の依頼があったということですね。今からだと残業になってしまいますが、実は今日、同窓会の予定が入っているんです。

E:お客さまから急ぎの要望で大変なのは分かりますが、私も卒業して初めての同窓会で楽しみにしておりました。行けないとなると、とても残念です。

S:あの製品に関しては、詳しい者もおりますので、他の方にお願いできないでしょうか。

C:返事がYESの場合:ありがとうございます。私も、時間の許す範囲で協力させていただきます。

返事がNOの場合:そうですか。急ぎとのことですが、明日のお昼前までの提出で間に合うかどうかご確認いただけますか。もし間に合うようでしたら明日の午前中に仕上げるようにします。

 

この方法が身についていると、解決したいことがある場合、受け身ではなく自分からやりとりの一歩を踏み出すことができますし、自分の提案に対して相手がNOと返してきても、あわてることなく冷静に対処することができます。

また、“何に対して、どう思っているから、このように提案している”という思考のプロセスが自分の中で明確になるので、相手にも伝わりやすくなります」

 

(6)自分の気持ちを率直に伝える

「アサーションは、“相手”を変える、“相手”を思い通りに動かすというものではなく、いかに“自分”を伝えていくかということがポイントです。

そのために“自分が相手に伝えたいことはなんだろう?”“自分が相手に何をしてほしいのだろう?”など、自分の気持ちを確かめて、そのことを正直に、率直に言語化してみましょう。

自分が伝えたことを相手がどう受け取るかは、相手にしか分からないことです。ですから“どう受け取られるか?”を気にするよりも、“正直に伝える”ことに目を向けるほうが現実的なのです。

その際に、言いっぱなしにするのではなく相手の反応もしっかりと受け入れることで、お互いが深く分かり合うコミュニケーションにつながります」

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。日頃から、コミュニケーションがちょっと不得意、言いたいことを相手に伝えるのが苦手、と感じている人は、ぜひこのアサーションのスキルを活用してみてくださいね!

 

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著者プロフィール

石井隆之(いしい・たかゆき) 株式会社日本・精神技術研究所 心理測定事業部心理判定員。資格:臨床心理士。アサーション・トレーニング認定トレーナー。専門はグループアプローチ。川村学園女子大学心理学科非常勤講師等を経て現職。都内看護専門学校「人間関係論」非常勤講師を兼務。グループアプローチの視点を生かした、「参加者同士が相互に学び合える研修の場づくり」が持ち味。企業、医療機関、官公庁などでアサーション研修や人間関係トレーニングの経験多数。 (株)日本・精神技術研究所が開催しているアサーション講座の詳細はこちら