給与が上がったり、ボーナスをもらえると、うれしい気持ちになりますよね。お金は私たちを幸せにしてくれるものだと、多くの方が信じているでしょう。

 

しかし一方で、お金をたくさん持っているにもかかわらず、幸せになれない人もいるようです。お金を持って幸せになれる人と、そうでない人の間には、いったいどのような違いがあるのでしょうか。

 

現在、NPO法人ETIC.で社会起業家の応援活動をする渡邉賢太郎さんは、新卒で入社した証券会社で「お金」について疑問を持ち、「お金」をテーマに世界一周の旅に出たそう。その旅を通して、「幸せなお金持ち」と「不幸なお金持ち」の違いが見えてきたといいます。その違いとは、一体なんだったのか……渡邉さんに聞きました。

 

「幸せなお金持ち」と「不幸なお金持ち」

証券会社に勤めていた時代、個人や法人に営業と資産運用アドバイザリー業務をしていた渡邉さんは、あることに気がついたそうです。

 

「まず、証券会社に勤めて分かったのは『お金持ちってたくさんいる』ということです。何億、何十億円という資産の持ち主が日本にはたくさんいる。また、そういった富裕層の中にはお金と上手に付き合っている『幸せなお金持ち』と、資産維持に翻弄される『不幸せなお金持ち』がいることに気がつきました。

僕なんかが大金を手にしてしまったら『一生働かなくていいや』って、楽観的に過ごしてしまいそうですが、一方でお金を維持するために株価を欠かさず見たり、税理士さんとやり取りしたりと、お金があるのにお金に縛られている人が多くいたんですね」(渡邉賢太郎さん:以下同じ)

 

そうした思いを持ちながら働いていた渡邉さんが世界一周の旅に出たのは、リーマン・ショックがきっかけとなったそうです。

 

「リーマン・ショックはある意味、お金が世界中とつながっていることに気づかせてくれた事件でした。そもそも、リーマン・ショックってアメリカで起きた金融危機なのに、なぜ日本の建築会社が潰れたりしているのかが、全くふに落ちなかったんです。パソコン上で推移する株価の動きによって現実に職をなくしている人が多くいて、『金融ってなんだ?』って考えさせられたんです。

例えば、僕はお客さんにインドの鉄道の株を勧めたりしていたわけです。でも、よく考えたら『俺、インド行ったことないな』って(笑)。データとしては『これからインドの鉄道が7万キロ伸びるから、買いだ』ということは考えられても、金融のシステムの裏側にある現実は分からないわけです。そういう小さな違和感が、具体的な形として現れたのがリーマン・ショックでした」

 

旅をして見えてきた「お金の正体」

金融の裏側にある現実を知るため、念願であった世界一周旅行に出かけた渡邉さん。とある中国の田舎町でのある体験が、「お金の正体」について知る糸口になったそうです。

 

「中国のある田舎町で、おばちゃんから受け取った一元札が、ボロボロで、メモのような文字も書かれていて、本当にお金として使えるのか疑わしいものでした。おばちゃんは『絶対によそでも使える』と言い張るので受け取りましたが、案の定ほかの店では受け取ってもらえず(笑)。でも、そのことでお金について何か少し分かった気がしたんです。

僕は、ボロボロの一元札にお金として価値があるものだと信じた。しかし、ほかの人はその一元札の価値を信じず、その結果使うことができなかった。じゃあ、この紙きれはなんだろう?って思ったんです」

 

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「(お財布から千円札を出して)僕らはこの紙きれが本物の『日本銀行券』で、それには価値があると信頼しています。そして、僕はこの紙を出せば『千円の価値のものと替えてもらえる』と信じてるわけです。そして、この紙切れを受け取るだれかも、これが千円の価値のあるものと交換できると信じている。

つまりお金というのは、『自分からの信頼』、『他者からの信頼』、『国(発行元)への信頼』という、三つの信頼があって初めて成り立つ道具なんです。僕はこのことから、お金は本質的に“信頼の媒介物”にすぎないと気づいたんです。

また、そういうふうに考えていくと、お金持ちの間に家族や友人に囲まれた『幸せなお金持ち』と、お金はあるけど誰も信頼できずにいる『不幸なお金持ち』がなぜ生まれるのかというのが、ストンとふに落ちたんです」

 

お金は道具だということを忘れると「不幸な金持ち」になる
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世界一周中の渡邉さんの写真

渡邉さんは旅の途中で、お金持ちの間に『幸せなお金持ち』と『不幸なお金持ち』が生まれる理由が分かったと言います。いったいその理由とは、何なのでしょうか。

 

「僕はお金は『信頼の媒介物』だと考えています。言い換えれば、お金は人と人のつながり、信頼関係があるところに初めて生まれ、集まってくるものなのです。そして、このお金は本来『人間を幸せにするために作られた“道具”』なんです。

しかし今僕たちは、生まれときから身の回りにお金が存在し、お金をやりとりすることが目的となる『金融』が大きな力を持つ世界にいる。だから、お金が本来の手段としてではなく、目的と考えられてしまう。だからこそ、お金というのはあくまで人を幸せにするための道具だということを忘れちゃいけないと思うんです。でないと、いくらお金を持っていても、家族や友人との信頼関係はなく、ただ紙切れにすぎないお金に縛られる『不幸なお金持ち』になってしまうんです」

 

現在、渡邉さんはNPO法人ETIC.で、ソーシャルスタートアップ・アクセラレータープログラム「SUSANOO(スサノヲ)」のプロジェクトリーダーとして、社会問題とビジネスの間で奮闘する「社会起業家」を応援する仕事をしています。

お金の本当の正体は「人を幸せにするための道具」だと考えた渡邉さんだからこそ、ビジネスと社会課題を結びつける仕事に就いたのでしょう。

 

将来、お金を使う場面は減っていく?

最後に、これからお金はどう変化するのか、渡邉さんの見解を教えてもらいました。

 

「近い未来お金は……無くなりはしないだろうけど、使う場面はかなり減っていくだろうと考えています。これまではお金が信頼の媒介物として存在していたわけですが、今後はインターネットがお金に代わる信頼の媒介物として活用されるし、現にそれは起こり始めています。インターネットが、互いの信頼を可視化することになるからです。

たとえば、僕が旅の間利用していたWEBサービス『カウチサーフィン』は、世界中の旅人と、自宅を宿泊として提供するホストをマッチングするサイトです。このサイトの面白いところは、ホストとゲストの双方が互いの評価を書き込み、それが公開されている点です。これにより、僕に一度も会ったことのない人でも、僕が誰から、どれだけ信頼されているかが見える。だから信頼して家に招いてくれる。

こんなふうに、インターネットが個々人に寄せられる信頼の質と量を可視化することになり、お金に代わって『信頼の媒介物』としての役割を果たすようになっています。

結果として、お金を必要としない価値の交換が生まれているんです。つまり極端な話をすると、これからはお金がなかったときのような『シェア』を根本とした暮らしを、インターネットなど技術の進歩でコストを下げながら行っていくのだと考えています」

 

まとめ

将来はお金持ちになりたいと思っている方もいるでしょう。しかし、気づいたらお金に縛られていた……ということになれば、せっかくお金持ちになっても「こんなはずでは」と後悔してしまいます。

そうならないように、まず、お金とは自分にとってどんな存在なのか、自分にとっての幸せとはなんなのかを折に触れて考えてみることが大事なのかもしれませんね。

 

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著者プロフィール

渡邉賢太郎(わたなべ・けんたろう) 1982年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券を2010年に退職後、2年間、「お金とは何か?」をテーマに世界40カ国を回る旅に出る。その後、新たな経済のありようを探った『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?』(いろは出版)を出版。現在は、社会起業家の育成・支援を行うNPO法人ETIC.で、「SUSANOO」プロジェクトリーダーを務める。