ポケットに入れた携帯がブルッと振動……でも、気のせいだった。

このように、携帯が着信していないのに振動するような錯覚に陥ることはありませんか? 精神科医の浅川雅晴氏によるとこの錯覚は、“幻想振動症候群”という自律神経失調症の症状のひとつだそう。

また、この幻想振動症候群を放っておくと「気分障害、不眠、耳鳴り、月経不順」など多くの症状を併発するのだといいます。そこで今回は、幻想振動症候群の原因や対処法を浅川雅晴氏に聞きました。

 

幻想振動症候群は自律神経の乱れによる心身症

幻想振動症候群とは一体なんなのでしょうか?

「幻想振動症候群とは心身症のひとつで『ポケットの携帯電話が振動しているように錯覚する』症状です。

人の体には、心臓や胃など意識してコントロールすることができない『不随意神経』と呼ばれる神経があります。この不随意神経は『交感神経』と『副交感神経』という、正反対の働きをする神経によって形成されています。

交感神経は仕事中などの緊張状態のとき、副交感神経は睡眠中などリラックスしているときに働き、ふたつはいわばシーソーのように交互に働く神経です。そして、幻想振動症候群はこの交感神経の酷使によって生じるのです」(浅川雅晴氏:以下同じ)

交感神経の酷使によって幻想振動症候群が引き起こされるとのことですが、具体的な原因はなんなのでしょうか?

「幻想振動症候群の一番の原因は、携帯の着信に対する緊張で交感神経が長時間高ぶっていることだといえます。

もともと、携帯電話が普及する約22年より前には、このような症状はありませんでした。また、パソコンや携帯、TVゲームなど、視覚に頼る作業を長時間することで、脳に負荷がかかり、自律神経が乱れ、幻想振動症候群を引き起こしやすくなるといわれています」

 

幻想振動症候群は脳から発せられる危険信号

幻想振動症候群は、振動の錯覚の他にどのような症状を併発してしまうのでしょうか?

「幻想振動症候群は自律神経の乱れが原因であるため、『体のだるさ、モチベーションの低下、不眠、肩こり、耳鳴り、目の奥の痛み』など多くの症状を併発しかねません。

また、女性は女性ホルモンの乱れがひどく出て、生理前になると感情を抑えづらくなり、月経不順を引き起こす(月経症候群)ともいわれています。

また、幻想振動症候群を放っておくと、ピント調整が利かなくなるなど目の病気も増えてくるといわれているので、思い当たる方は速やかな対処が必要といえるでしょう」

 

幻想振動症候群の対処法

幻想振動症候群はある意味、脳から発せられる危険信号と考えてもよいのかもしれません。そこで浅川氏から、幻想振動症候群の対処法を聞きました。

 

(1)TVゲーム、携帯、パソコンなど電子画面での作業時間を減らす

「視覚は他の器官と比較しても、交感神経の働きに多大な影響力を持っています。そのため、画面に集中する作業をする場合は時間を決めたり、休憩時間に目を閉じた状態で温かいタオルをあてたりして、適度に目の緊張を緩めてあげましょう」

 

(2)お昼休みは30分の仮眠

「睡眠を取ることで副交感神経を働かせ、自律神経を整えることができます。そのため、貴重な昼休みではあると思いますが、30分程度の昼寝をすることが有効です。昼寝は眼球疲労も和らげることもできるので、なおさらお勧めです」

 

(3)休みの日は携帯をOFF

「土日など休日は携帯をOFFにして、仕事とは全く異なる方法で自分なりにリラックスできることをして過ごしましょう。

デスクワークの方は『ゴルフ』や『ピクニック』など、視界の開けるスポーツに興じるのがお勧めです。連絡のしがらみから半ば強制的に離れ、リラックスした休息を取ることで副交感神経が活発に作用して、自律神経を調整することができます」

 

(4)モバイル端末の機能に頼りすぎない

「ナビ機能や調べ物など、何でもモバイル端末に頼るのではなく、なるべく自分の頭と体で調べるようにしましょう。電子機器に依存してしまうと、脳は常にそれらに気を取られて生活する習慣を持ってしまいます。電子機器を頼らずともできることを増やし、モバイル端末への依存をやめましょう」

 

まとめ

いかがだったでしょうか? “幻想振動症候群”は脳から発せられるシグナルです。心当たりのある方は上記の対処法を実践して、早急な処置をするようにしましょう。

 

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識者プロフィール

浅川雅晴(あさかわ・まさはる)昭和61年東海大学医学部を卒業後、同大学病院精神科に入局。その後、平成6年に東京の江東区森下で心療内科・内科・精神科「浅川クリニック」を開業。著書に『心のパワー 70の言葉』(ロングセラーズ)、『心のセラピー』(ロングセラーズ)など他多数。