落語家といえば、男性のイメージがありませんか? 露の団姫(つゆの・まるこ)さんは、数少ない女性落語家のひとり。しかも、天台宗のお坊さんという異色の肩書きの持ち主でもあります。

 

年間250席以上の高座(落語の舞台)に上がるとともに、仏教のPRを兼ねた講演活動などで全国を奔走する露の団姫さんに、落語家・お坊さんとしてのキャリアや、現在の夢を聞きました。

 

 

落語家でお坊さんで、夫はクリスチャン

─露の団姫さんは落語家としてだけでなくお坊さんの肩書きもお持ちですが、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?

 

露の団姫:私は“職業:落語家、生き方:お坊さん”をコンセプトに、高座の他にもテレビ・ラジオで活動しています。高座では古典落語に加え、自作の“仏教落語”を全国各地で披露し、講演では、「生き方」、「人権」、「子育て」といったテーマで、老若男女問わずイキイキとした人生へのアプローチを行っています。

ちなみに私生活では5年前に結婚しました。私は仏教徒ですが、夫はクリスチャンで、一児の母でもあります。

 

─考え方や仕事が非常に柔軟なんですね。子ども時代はどのような性格だったのでしょうか?

 

露の団姫:基本的に明るい性格でしたが、怖がりで、一人でお風呂にも入れないような子どもでした。小さいころは落語家になろうと思っていませんでしたが、自分がスーツを着用して仕事をしているイメージは湧かなかったんです。警察官や学校の先生などに憧れたこともありますね。

 

高校一年生のとき「法華経」と出会い衝撃を受けた

─そんな露の団姫さんが「仏教」、「落語」を知るきっかけとなったのはなんだったのでしょうか?

 

露の団姫:仏教に関しては、小さいころ、「人間は死んだら魂はどこに行くのだろう」ということが疑問で、中学生ごろから宗教に興味を持っていたんです。それで、高校1年生のときに人生の指針となる「法華経」というお経に出会ったんです。

そのときあまりの感激に「この教えを独り占めにしてはもったいない。もっと多くの人に知ってもらわなければ」と思い、お坊さんになりたいと思うようになったんです。

落語は、両親がもともと落語好きで、私もいつのころからか自然と好きになりました。また小さいころ「劇団ひまわり」に所属して舞台公演を重ねるなかで「一人ですべてを演じる」落語に魅力を感じたというのもあります。劇団ひまわり時代に舞台で失敗し、責任の押し付け合いになったことがあって。そのため、失敗しても自己責任でできる落語に、生涯の仕事として魅力を感じるようになったんです。

 

仏教で「苦」を抜き、落語で「楽」を与える

─仕事として落語家の道を選んだのはなぜでしょうか?

 

露の団姫:落語はもともとお坊さんの説法からはじまったものですので、私にとっては落語と仏教の教えはイコールだと思っていて。それで、自然と落語家としての今の自分のあり方になりました。

仏教には“抜苦与楽”(ばっくよらく)という教えがありますが、私の場合は仏教の教えで「抜苦」、つまり苦を抜いて、落語で「与楽」、つまり楽をお客さまにプレゼントする。それが私の仕事だと思っています。

 

─露の団四郎師匠へ入門、天台宗の修行と二つの修行を経験されたそうですが、それぞれ大変だったのではないでしょうか?

 

露の団姫:どちらも大変でしたね。落語家の修業は3年間住み込みでした。盆も正月も休みなし。自分の時間は一切なし。睡眠時間は短く毎日叱られてばかりで本当に大変でしたが、おかげさまでとても打たれ強くなれました(笑)。

天台宗は男性も一緒に修行を行うのですが、私は体力が全くついていかず毎日ヘトヘトでしたね。ただ、落語家の修業を先にしていたので精神的にはへこたれることなく、とても充実していたと思います。

 

夢は寄席もできる「駆け込み寺」の建設

─今のお仕事をされていて、喜びを感じるのはどんなときですか?

 

露の団姫:お客さまが大笑いしている姿を見るのが何よりの喜びです。また、お客さまと交流を持つことによって自分自身が学ぶこともたくさんあるので、これほど魅力的な仕事はないと思っています。

 

─自分の働き方、生き方において大切にしている言葉はなんですか?

 

露の団姫:伝教大師・最澄上人の「一隅を照らす」という言葉です。

この言葉は「自分自身の人生での役割を知り、まずはその役割を一生懸命頑張って輝く。自分自身が輝けば、まわりの人も照らされる。そうやってみんながそれぞれの持ち場で頑張ることで、世の中が平和に明るくなっていく」という意味があります。“ナンバーワンよりオンリーワン”をすすめる1,200年前の言葉で、私の大好きな言葉です。

 

─落語家でありお坊さんという、オンリーワンの存在で人々に笑顔を届けている露の団姫さんはまさに「一隅を照らす」という言葉通りですね。そんな露の団姫さんの現在の夢を教えてください。

 

露の団姫:落語家としての夢は名人になることです。名人になるためには、とにかく高座の数をこなすことが必要だと思っています。100回の稽古より1回の舞台のほうが勉強になるので、さまざまな客層の前で演じ心をつかめるように精進したいと思います。

お坊さんとしての夢は自殺者をゼロにすることです。現在の日本は物質的には満たされているにもかかわらず、精神的な不安を覚える方が少なくありません。生きにくい世の中ですが、「自分が死んだらこの人が悲しむからやめておこう」と思える存在が一人一人に必要です。私の場合はそれがお釈迦様ですが、おばあちゃん子ならおばあちゃん、愛する人がいるなら愛する人……と、信仰や人の愛で救えるいのちがたくさんあります。

そして、生きていれば必ずいいことがあります。そこで今は寄席もできて、お悩み相談、DVや虐待などの緊急避難の窓口にもなる駆け込み寺の建設資金を貯金中なんです。

 

─まさに“抜苦与楽”な駆け込み寺になりそうですね。駆け込み寺の建設は、実現するとしたらどのくらい先の話になるのでしょうか?

 

露の団姫:ここ10年で具体的な場所、建物、スタッフを整えたいと考えています。スタッフはすでに募集中で、「この人ならば!」という人には「将来駆け込み寺を手伝ってください」と声かけをし、スカウトしたりもしてるんですよ。

 

まとめ

「仏教」と「落語」を組み合わせ、オンリーワンの存在となった露の団姫さんの夢は、寄席もできる駆け込み寺をつくることでした。「一隅を照らす」という言葉を愛する露の団姫さんにピッタリの夢ですね。

いったいどんなお寺が出来上がるのか……露の団姫さんの今後の活躍が楽しみです。

 

(オススメ記事)
あのお嬢様芸人が秘めた“夢への熱い思い”。たかまつななのキャリア観に迫る

 

識者プロフィール

露の団姫(つゆの・まるこ) 1986年生まれ。上方落語協会所属の落語家。兵庫県尼崎市在住。高座の他にもテレビ・ラジオで活動。高校卒業を機に初代・露の五郎兵衛の流れを組む露の団四郎へ入門。3年間の内弟子修行を経て主に古典落語・自作の仏教落語に取り組んでいる。2011年、天台宗で得度。2012年、比叡山行院で四度加行を受け正式な天台僧となる。現在、年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する。