SNS上の共感できる記事を拡散したり、複数の同居人と一つ屋根の下で生活を共にしたり。昨今の私たちの生活には、考えや体験、資源を誰かと共有する「シェア」が密接に関わっていますが、こうしたシェアの風潮がさまざまな経済活動の領域で広まることを「シェアリングエコノミー」と呼び、今後大きな経済効果をもたらすと期待されています。

そこで今回は、このシェアリングエコノミー普及の背景や事例について、一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事の上田祐司さんに伺います。

 

所有する喜びからシェアする喜びへ

場所や乗り物、モノなどの遊休資産(使用されていない資産)を、インターネット上のプラットフォームを介して、個人間でシェアする新しい経済の動き「シェアリングエコノミー」。現在、このシェアリングエコノミーが広く普及している背景について、上田さんは、「私たちの身の回りの環境的な変化と、ライフスタイルの変化が大きく関わっている」と語ります。

「まず環境の変化については、スマートフォンの普及によってTwitterやFacebookといったソーシャルメディアが、広く利用されるようになったことが挙げられます。いつでもどこでも個人と個人がつながる、という状態がインフラ化しているので、知らない相手とネット上でつながることにも慣れてきているのです」(上田さん:以下同じ)

 

そして、もう一つのライフスタイルの変化については、「人々が求めるものが、過剰消費・単独所有の文化から、共有を楽しむ文化へと変わってきている」と上田さん。

「かつてのバブルの時代は、一生懸命お金を貯めて、欲しいものを買うことや人より優れたものを所有することなどが、人々の価値基準や働くモチベーションになり得ました。

しかし今は、ソーシャルメディアの普及で、誰かとつながるという状態が当たり前のようになっています。シェアハウスをはじめ、バーベキューや山登り、ランニングなどでも、誰かと一緒に体験すること、誰かと一緒に楽しむことに価値を感じる人が増えてきているのです」

 

多様化するシェアサービス

それでは実際に、シェアリングエコノミーはどのように私たちの身の回りに広がっているのでしょうか。

 

◎民泊サービス「Airbnb」

「民泊サービスを提供する『Airbnb』は、シェアリングエコノミーにおいて最も主流なサービスです。ホテルや旅館、ゲストハウスと比べて異なるのは、個人の部屋を物件として登録し、提供すること。海外からの訪日客を中心に、登録された部屋に宿泊することで、文化交流や食事を一緒に楽しむという動きが広まっています」

 

◎料理のシェアサービス「Tadaku」

「『Tadaku』は、日本に暮らす外国人が母国の料理を参加者に教える料理教室型のサービスです。レシピを学びながら一緒に作った料理をみんなで食べられることに加え、その国の文化について学んだり、外国料理好きな仲間と出会えたりする点が、特に日本の30〜40代のOLを中心に人気となっています」

 

◎ライドシェアサービス「Uber」・「notteco」

「ライドシェアの『Uber』は海外発のサービスで、個人が運転する自動車を呼び、空いている席に乗ることで一緒に移動するというものです。相乗りというよりタクシー的な意味合いが強く、個人が迎えに行き、利用者の行き先へ連れて行ってあげるというのが特徴です。

また、ライドシェアには長距離分野もあり、代表的なものに『notteco』というサービスがあります。例えば、単身赴任で東京にいる方の実家が大阪だった場合、かなりの頻度で東京・大阪間を移動されると思うのですが、そうしたときに東京行き・大阪行きの車に相乗りができるというものです。低コストで、バスよりもゆったりと座れるため、就活生や学生などにも利用されています」

 

◎スペースシェアサービス「スペースマーケット」

「『スペースマーケット』は、町家やお寺などの普段使われていない場所を、企業や一般の方に貸し出すサービスです。例えば、これまでの社内イベントなどは企業が提携している場所で開催することが一般的でしたが、このサービスを利用することで、町家で合宿を開催したり、お寺でイベントを実施したりすることができます。

また最近では、神奈川県の猿島という無人島がサービスに登録されたことで、一般のコスプレイヤーたちが島を借り切り、みんなでコスプレや撮影を楽しむ、といったイベントも開催されています」

 

◎子育てシェアサービス「AsMama」

「『AsMama』は、顔見知り同士で子育てを頼り合うマッチングサービスで、登録されている個人の“ママサポーター”に、子どもの送迎やお世話を依頼することができます。ママサポーターは保育免許を持っているわけではないのですが、トレーニングに合格した方だけを厳選して登録していることや手頃な価格で依頼できること、万が一のケガや破損、食中毒に適用される保険がついていることなどが高く評価されています。

現在、保育施設の不足が問題になっていますが、最近では奈良県の生駒市がAsMamaと提携・活用して生駒市の子育てをみんなで助け合うという、公共の役割をシェアリングサービスが代わりに担う動きも出てきています」

 

◎スキルシェアサービス「クラウドワークス」

「株式会社クラウドワークスが運営する『クラウドワークス』は、クリエイターのクラウドソーシングサイトです。エンジニア、デザイナー、ライターなどのプロフェッショナルの登録があり、コンテンツ制作やアプリ開発、ロゴデザインなどの仕事を発注することができます。全体のなんと85パーセントの受注を地方の方が担っていて、これは地方における雇用の創出にかなり貢献しています。実際にクラウドワークスと地方自治体が提携して、雇用を生み出すという動きも進んでいます」

 

今後は公共の役割を代替する動きが広がる

このように、現時点ですでに多様化しているシェアリングエコノミーですが、今後社会や経済に与える影響や可能性について、上田さんは次のように語ります。

「遊休資産を活用し、今まで価値がないとされていたものに価値を与えるシェアリングエコノミーは、誰もが販売者になることができ、それに伴ってさらなる雇用も生み出せるなど、大きな経済効果をもたらす日本の新たな成長戦略の一つとして期待されています。

また、今後は『AsMama』のように、シェアサービスがより公共の役割を代替していくと考えられます。少子高齢化で働く人材が減少していく状態では、税金でカバーできる範囲も限られてくると思うのですが、シェアリングエコノミーはそこを補うための共助の仕組みを、これからもいろんな自治体に広げていけるのではないかと思います」

 

シェアで助け合う社会へ

個々のつながりが重視される時代から生まれたシェアリングエコノミー。従来のサービスが担えなかった細やかなニーズへの対応力や、不足する役割をカバーできる柔軟さで、今後はより日頃の助け合いがしやすい社会になるかもしれません。

 

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一般社団法人シェアリングエコノミー協会

シェアリングエコノミーの普及・発展を目的として設立。「すべての人がさまざまなカタチで、経済行為に参加できる社会の実現」「新しい経済行為を活性化させ、日本経済全体の発展に寄与すること」「プラットフォーム事業者の健全なるビジネス環境と利用者保護体制の整備」を理念として、シェアリングエコノミーが持つ可能性を、豊かな社会の実現につなげるためのさまざまな活動を行う。