メールや資料作成など、私たちは日常的に「文章」を書いています。お客さまに、取引先に、上司に、同僚に、正しく物事を伝えるための「文章力」は、できるビジネスパーソンにとっての必須スキル。そこで今回は、『すぐできる! 伝わる文章の書き方』の著者・赤羽博之さんに、文章力がUPするテクニックを伺います。

 

書いたものは独り歩きする

交渉、報告、会議、プレゼン、情報共有……。私たちの仕事のほとんどは、コミュニケーションの積み重ねでできています。赤羽さんは、「自分以外の人と関わり、仕事で成果をあげていくためには、話す、書くなどの『コミュニケーション力』が必要不可欠」だと話します。

「文章力が特に重要な理由は、“書いたものは独り歩きする”から。対面や電話でのやり取りなら、『あ、それはこういう意味です』と、その場で補足が可能です。ところが文章では、多くの場合それができません。ひとたび誤解が生じると、口頭でのコミュニケーション以上に“やっかい”な事態を招きやすいのです」(赤羽さん、以下同)

相手に正しく届き、相手を動かす力のある文章を書くには、やはり一定以上の文章力が必要。そこで次の項目では、やってしまいがちなNG例と、その解決法を教えていただきました。

 

伝わらない文章でやりがちな「3つのNG」と解決法

◎NGその1:長い

「必要以上に“長い文章”は、相手にとって迷惑」と話す赤羽さん。どんなに思い入れたっぷりに書いた長文も、読み手にとっては“負荷”であり、読むためにかかる時間は“コスト”だと指摘します。また、60文字を超えるような“長い一文”は、相手にとっては“ストレス源”にもなる、とも。

「私たちが仕事で書く文章には必ず読み手がいます。必要以上に長い文章、ムダの多い文章は、忙しい相手の時間を奪うものであり、同じ内容を伝えるのであれば、なるべく相手にかかる負荷を減らすべき――。これが私の基本的な考え方です。

どんな文章も、『どこまで削れるか?』というゲームを楽しむつもりで、極力“ぜい肉を落とす”イメージで仕上げましょう」

 

【例文1】

Before:今日は週の初めの月曜日、天気は快晴です。

After:快晴の月曜日。

 

週の初めを強調する必要がなければ、このくらいのボリュームまで絞れそうです。それぞれの文字数に注目すると、「Before」が20字で「After」は7字。実に65%を削減したことになります。

その分、読み手にかかる負荷、コストも減るわけですから、さまざまなビジネス文書でこれを実現できれば、大幅な業務の効率化にもつながります!

また、基本的に「一文は短く」がオススメとのこと。

 

【例文2】

Before:来週のプレゼンでは、お客様からさまざまな分野にわたる専門的な質問が出されることが予測されるため、事前に想定問答集を準備します。

After:来週のプレゼンでは、事前に想定問答集を準備します。お客様からさまざまな分野にわたる専門的な質問が出されることが予測されるためです。

 

原文(Before)は、極端に「長い一文」ではありませんが、原則「文の最後に結論が来る」という日本語の“宿命”もあって、読み手がなかなかゴール(=「想定問答集を準備します。」という結論)にたどり着けません。

「いったい何が言いたいの?」と、相手をイライラさせてしまうタイプの文章がこれ。こんな書き方ばかりしていては仕事がスムーズに進みませんし、通る企画書も通らなくなってしまいます。

そこで、63字で一文だったものを、25字+40字の2つの文に分けました。「想定問答集を準備する」という結論が、以前よりも早く相手に伝わる点に注目です。このように一文が40字を超えてさらに続くようなら、「どこかで文を分けられないか」と考えることがポイントのようです。

 

◎NGその2:くどい

「くどい、しつこい人間は、あまり人に好かれませんよね。実は文章も同じです。『一文の中に同じ言葉が2回以上登場する』『段落の中に同じ言葉が何度も出てくる』など、同じような言葉が重なった状態は、モタモタした“くどい印象”となり、気持ち良く読めるスッキリとした文章とはいえません。

不用意な言葉の『重複を省く』は、とても便利でオススメのテクニック。これを意識して実行するだけで、あなたの文章は確実に一段階レベルアップします」

 

【例文1】

Before:昨日の会議の結論は、原案どおり実施が結論だった。

After:昨日の会議の結論は、原案どおり実施だった。

 

一文の中で同じ言葉(=「結論」)がダブっています。後半の「結論」を省くだけで、だいぶスッキリしますね。この場合、さらに「昨日の会議の結論は『原案どおり実施』だった」というように、読点を使わずカギかっこにすると、会議の結論がよりハッキリします。

 

【例文2】

Before:私はラーメンが好きです。ラーメンの中でも塩ラーメンが大好きです。

After:私はラーメンが好きです。中でも塩ラーメンが大好きです。

 

ひとつの段落の中に、「ラーメン」「好き」がそれぞれ3回、2回と“しつこく”登場しています。そこで、まず2つめの「ラーメン」を省いてみました。が、もっとコンパクトにできそうです。

After2:私は塩ラーメンが大好きです。

要は、これを伝えたかったのでは……?

 

【例文3】

Before:コストの上昇ということが競争力の低下につながっているということについて、早急な改善が必要だ。

After:コストの上昇が競争力の低下につながっている。早急な改善が必要だ。

 

この文章に登場する、「という」「こと」には実質的な意味はありません。重ねれば重ねるほど読みにくく、文意も不明確になります。そこで、「ということ」はすべて省き、オマケに2つの文に分けてみました。いかにムダが多く、ダラダラと長い文だったかが、こうしてみるとよく分かります。

 

◎NGその3:自分勝手

「例えば、中途採用に応募してきた人の自己PR文にこんな一節があったとしましょう。あなたが人事担当だとしたら、どこにツッコミを入れたいですか?」

 

【例文1】

私は食品パッケージなど商業デザイン分野に長年の経験があります。

書いた当人は「長年」が実際に何年なのか分かっているのですが、この文では具体的にどの程度のキャリアの持ち主なのか、読み手には伝わりません。

 

【例文2】

とても大きい機械があって、心の底からすごいと思いました。

こちらは、新入社員が書いた研修報告書の一部だとしましょう。自社工場を見学したときの印象を書こうとしているのですが、先ほどの「長年」と同じように、「大きい」「すごい」と書かれても、書いた本人以外はどう受け取ればよいのか、まったく分かりません。

「長年」「大きい」「すごい」など抽象的な表現、その人の主観に基づく表現では、伝えたいメッセージが相手に正しく届きません。いわば「自分勝手」な表現、書き方であり、ビジネスの現場では重大な誤解を生み出す原因にもなります。

改善するために必要なのは、誰が読んでも同じ意味をつかみやすいもの。その代表選手が“数字”です。以下、先ほどの例を実際に改良していきましょう。

 

【例1】

Before:私は食品パッケージなど商業デザイン分野に長年の経験があります。

After:私は食品パッケージなど商業デザイン分野に12年の経験があります。

 

「長年」という抽象的な表現を具体的な数字に置き換えました。これで、この人のキャリアをより正確につかめます。

 

【例2】

Before:とても大きい機械があって、心の底からすごいと思いました。

After:高さ8mの工作機械。その力強さに思わず「おっ」と声をあげました。

 

具体的な数字を使うと、読み手も大まかな規模を把握できます。また、何かを具体的に伝えるとき、この場合の「『おっ』と声をあげる」のように、カラダの動きに置き換えるのは良い方法。相手が同じ「絵」を思い浮かべやすく、伝わりやすくなります。

 

自分の文章に一度はNGを出す!

さて、“3つのNG”を理解したところで、次に注意したいのが「書いた文章を読み返す」こと。赤羽さんいわく、当たり前すぎて軽視してしまう人が多いため、一度は「自分の文章にNGを出す」つもりで読み返すことが重要だそう。

そこでオススメなのが、「プリントアウト」と「音読」。「清書のつもりでプリントアウトしたら、直したくなった」という経験は誰もがあるはず。プリントアウトは私たちの視点に変化を与え、第三者的な読み方、確認をしやすくしてくれるそうです。

最後の仕上げは「音読」。自分で書いたものを自分で音読してみたときに、あちこちで引っかかったり、すんなり読めなかったりした場合は、まだまだ文章の磨き方が足りないということ。引っかかる、あるいはスピードが落ちる部分を中心に、粘り強く手直しをしましょう。

 

頭の中に言葉の貯金を

最後に、文章を書くことが苦手だという悩めるビジネスパーソンへ向けて、赤羽さんに一言アドバイスをいただきました。

「ただ漠然と『苦手だ』と思っていても、問題は解決しません。『なぜ苦手なのか?』をじっくり考えてみましょう。ほとんどの人は『ボキャブラリー(語彙力)の不足』を感じているのでは? 原因がそこにあると気づいたら、解決に向け具体的な行動を起こしましょう。

目指すのは、難しい言葉を数多く知っている人ではありません。良質な日本語をたくさん読む、書き写すなどを通じて、ごく普通の言葉やフレーズを状況に応じて“的確に”繰り出せる、使いこなせる人になりましょう。

いくらテクニックを身につけても、肝心の頭の中に言葉やフレーズの貯金がなければ、気の利いた表現や相手の心に響くような文章は生み出せません。『書く』を仕事の武器にできるよう、使える言葉、使えるフレーズを徐々に増やしていくことが大切です」

 

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識者プロフィール

赤羽博之(あかばね・ひろゆき) 伝わる文章の書き方・講師/フリーランス編集者&ライター。早稲田大学卒業後、出版社、メーカー系制作会社、有機野菜の宅配会社に編集者として勤務。1999年フリー編集者&ライターとして独立し、雑誌・書籍やWeb広告の制作現場を中心にキャリアを重ねる。現在は企業・団体研修、ライタースクール、セミナーなどで文章の講師としても活動。著書に『すぐできる! 伝わる文章の書き方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。