仕事において初対面の人とのコミュニケーションは、ほとんどの場合が名刺交換からスタートします。

名刺交換とは、「交換」という言葉が示すとおり、お互いの名刺をやり取りすること。単なる自己紹介ではありません。名刺1枚の扱い方ひとつで、あなたの印象は大きく変わります。その後の仕事をスムーズに進め成果につなげるためにも、この回で相手に好印象を持ってもらえる名刺交換のポイントをビジネスマナー講師の金森たかこさんから学びましょう。

 

そもそも名刺とその役割とは?

名刺交換と、単なる自己紹介との大きな違いは2つあります。

 

1.1対1で行う

2.名刺という「モノの取り交わし」が発生する

 

つまり、名刺交換とは1対1で自己紹介しながら、名刺を渡し、頂くことを言います。

名刺に記されているのは、「名前」「会社名」「役職」「住所」「電話番号」「メールアドレス」「仕事内容」……本人の写真や似顔絵入りのものもあります。

名刺とは単なる紙切れではなく、本人そのもの。自分の分身であるともいえるでしょう。

 

そのため、名刺交換で最も大切なのは、名刺の扱い方に心を配ることです。さらに、頂いた名刺は相手の方そのものという気持ちを持って「丁寧」に扱うことが、相手に対する「敬意」を表すことにもつながるのです。

 

名刺交換の基本3つ

それではまず、名刺交換の基本について見ていきましょう。

 

1.相手の正面へ移動する

名刺交換は立って行います。また、間にテーブルがある場合は、テーブル越しには行わず、相手の正面へ移動してから行いましょう。

 

2.相手の名刺よりも低い位置から差し出す

名刺は相手が差し出した位置よりも低い位置から差し出すようにしましょう。特に目上の方から名刺を受け取る際には注意が必要です。「丁寧さ」と「謙虚な気持ち」は、名刺を差し出す高さからも表すことができます。

たとえ自分の立場が上であっても、常に相手に対する謙虚な気持ちを行動で示せることは、人間としてとても素敵ですね。

 

3.立場が下の人(訪問した側)から先に差し出す

名刺交換では、原則として、立場が下の人、訪問した側から先に差し出します。複数の人と交換する状況では、役職の高い人から順に交換していきます。こちらが複数のときも同様に、上司、先輩が交換した後に自分が続きます。

 

もし名刺交換に不慣れで、もたもたしているうちに目上の方から先に名刺を差し出されてしまったら…少しあせってしまいますよね。そんなときは「恐縮でございます」と気持ちを伝え、そのまま受け取ります。

その後、「申し遅れました」と言葉を添えて自分の名刺を差し出し、丁寧に名乗りましょう。せっかく渡してくださっているのに受け取らず、そのままの状態で待たせてしまうのは、かえって失礼にあたります。

その場をスムーズに進めるためには、基本をふまえた上で、状況に応じた臨機応変な対応がポイントです。

 

名刺交換のステップ

次に、名刺交換の具体的な流れを見ていきましょう。

 

◎名刺の渡し方

1.両手で名刺を持ち、相手の目を見ながら会社名と名前を伝えます。

2.名刺を相手が読める方向に向けて、軽く頭を下げ、胸の高さに両手で差し出します。

 

◎名刺の受け取り方

1.「ちょうだいいたします」と言って、両手で相手の名刺を受け取ります。
その際、指で文字を隠さないよう名刺の端を持つようにしましょう。

2.「○○様ですね。」と、相手の名前を確認します。読み方が分からなければ、「恐れ入りますが、何とお読みすればよろしいのでしょうか」と丁寧に尋ね、正確に覚えましょう。この場で確認することは失礼にはあたりません。

3.相手の名刺を持ったまま話をするときは、名刺を胸の高さより下げないよう気をつけましょう。

 

◎名刺を同時に交換するとき

1.訪問した側から先に、会社名と名前を名乗ります。

2.お互いに自分の名刺を相手の読める向きにして右手で名刺を差し出し、相手の名刺入れの上に置きます。

3.相手の名刺は、左手で持っている自分の名刺入れの上で受け取ります。

4.自分の名刺を渡し終えたら、すぐに右手を受け取った相手の名刺に添え、両手で持ち直します。

5.頂いた名刺を胸の高さにキープしたまま一読し、名前などを確認します。

 

好印象を与える名刺交換のポイント3つ

それでは、相手に好印象を持ってもらえる名刺交換のポイントを見ていきましょう。

名刺交換は事前の準備から始まっています。

 

1.名刺の確認

 

◎汚れなどはないか

名刺は自分の分身、代理であると考えましょう。したがって、角が折れていたり曲がっていたり、ましてや汚れた名刺を相手に渡すことは大変失礼にあたります。自身の「身だしなみ」を整えるのと同様、名刺の「身だしなみ」にも気を配ることが大切です。

 

◎名刺の枚数が足りているか

名刺の枚数のチェックも忘れてはいけません。名刺交換の場面で数が足りなくなることのないよう、使ったら必ず補充をしましょう。予備も含め、名刺の入った名刺入れを2つ持っていると安心です。

万が一、手持ちの名刺がなくなってしまった場合は、「名刺を切らしてしまい申し訳ございません」と丁寧に謝り、その場で会社名と名前を名乗ります。そして帰社後必ず、おわびとお礼の言葉を添えて名刺を郵送するなどの配慮があるといいでしょう。

 

2.名刺入れ

 

◎必ず名刺入れを使う

名刺は必ず名刺入れに入れましょう。財布や定期入れで代用することは禁物です。名刺の「身だしなみ」に気を配り、美しい状態で相手に渡すためにも、名刺入れは必須です。

 

◎間仕切りのある二つ折りタイプがベター

名刺入れは、二つ折りで中に間仕切りのあるものを選びましょう。頂いた名刺は手前、自分の名刺は奥に入れておくようにすると、間違って他人の名刺を渡してしまうなどという、うっかりミスを防ぐことができます。

最近は、ICカードが一緒に入るパスケース兼用の名刺入れなど、兼用型の名刺入れがありますが、ビジネスにおいては名刺入れ専用のものがよいでしょう。   

 

3.交換前の準備

 

◎名刺は取り出しやすい場所に収納

名刺交換をスムーズに行うためには、名刺入れをしまっておく場所も重要です。男性の場合は上着の内ポケット、女性はバッグの取り出しやすい位置に入れておくと、その場で慌てて探すことなくスムーズに進みます。

絶対に入れてはいけない場所、それはズボンのポケットです。特に後ろのポケットに入れると、座ったときにお尻で敷いてしまいます。名刺が曲がってしまうのはもちろんのこと、自分のお尻で敷いた名刺を相手に渡すのは大変失礼なことです。

 

まとめ

「名刺は相手の分身、自分の代理である」常にこの気持ちを持って名刺に接することが大切です。その思いが行動に表れ、相手にも必ず伝わります。

頂いた名刺を丁寧に大切に扱うこと、相手に美しい状態の名刺を渡すこと、相手の名刺より低い位置から自分の名刺を渡すこと、これらはすべて相手を敬う気持ちからなる行動です。

名刺交換の場は、これから始まるであろう仕事、そして人間関係のスタートとなる重要な場面。相手とより良い関係を築いていく第一歩として、どんなときも敬意を持って臨みましょう。

 

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識者プロフィール

金森たかこ(かなもり・たかこ) 京都市在住。ビジネスマナー講師。食品メーカーのOLとして勤務後、フリーアナウンサーとして独立。仕事をする中において、人間関係、コミュニケーションの重要性を感じ、マナーある人間関係づくりのため、マナー講師としての活動を開始する。アナウンサーとして培った話し方、ボイストレーニングを取り入れた独自のマナー研修が人気。テレビ番組などのメディア出演やドラマのマナー指導なども行う。ウイズ株式会社の社長としても活躍中。