ベテラン、新人にかかわらず、どんなに気を付け努力をしていても、ミスや失敗を完全になくすことは難しいもの。特にビジネスの場においての失敗は、少なからず相手に迷惑をかけてしまう可能性があります。

ミスをしたら謝る、迷惑をかけたらおわびをする。これは人として当たり前のことですが、許してもらえるかどうかは相手次第だったりします。例えば、同じような失敗なのに、一方は許されてかえって関係が深まったのに対し、もう一方は怒りが収まらず取り引き停止になってしまった、ということも。

 

いま一度相手の立場に立ち相手が許そうという気持ちになるような謝罪をしているか、ビジネスマナー講師の金森たかこさんに謝罪のコツを伺いながら学んでいきましょう。

 

きちんとした謝罪が大切な理由

謝罪とは、ミスや失敗によって相手に損害などの迷惑をかけたときに、自らの非を認め相手に許してもらうために謝ることです。当然、許すか許さないかの決定権は相手にあります。「本当に申し訳ない」という気持ちが相手に伝わり許してもらえた場合、何かあっても誠実に対応してくれる人、安心して取り引きできる会社など、ミスを起こす前よりプラスのイメージを持ってもらえる可能性もあるのです。

 

一方で謝罪が受け入れられなかった場合は、理由にもよりますが双方共に大きなダメージを受けてしまいます。

相手に受け入れてもらえる謝罪、相手が“もういい、許そう”と思ってくれる謝罪とは、お互いのこれからに良い影響を与えてくれる謝罪ともいえるでしょう。

 

謝罪のコツ

では、申し訳ないという気持ちを、どのように言葉と行動で示していけば、相手も許す気持ちになってくれるのでしょうか。

 

①相手に話してもらう

自分が話すより、まずは相手に話してもらいましょう。何より大切なことは相手の話をしっかりと聞くということです。相手は自分の身に何が起こったのか、どんな不利益を被ったのか、どれほどつらい思いをしたのかというマイナスの感情を誰かにぶつけ、聞いてもらい分かってほしいのです。

まずは相手にしっかり話してもらうこと。解決の糸口はその先にあると考えてください。

 

②「なぜ」を考え、正しく状況を把握する

「なぜミスをしてしまったのか」「そのミスによって、相手にどんな影響があるのか」「相手はなぜ怒っているのか」というように、常に「なぜ」という視点を持って聞き、事実を正しく把握することが大切です。的外れな形だけの謝罪は、相手をさらに怒らせてしまう原因にもなります。

 

相手が何に対して怒っているのかが分かれば、筋の通った、的を射た謝罪をすることができます。また、そのことに対する原因の究明や適切な対応策を示すこともでき、納得してくださる可能性も高まるでしょう。

さらに「相手はどうしてほしいのか」という本心が分かれば、相手の気持ちに正しく寄り添った的確な提案をすることが可能です。状況を正しく把握することは、適切な判断につながり、二次クレームを予防することにもなるのです。

 

③迅速に対応する

自分のミスに気付いたら、気付いた時点ですぐに報告し謝罪をすること、これは鉄則です。ビジネス上のミスやトラブルは、対応が早ければ早いほど挽回の可能性が高まります。言いにくいからと黙っていると、取り返しのつかない事態になりかねません。

 

また、ミスは隠していても絶対にバレるものです。ずるずると引き延ばし、ミスが発覚してから謝ったところで、相手に誠意は伝わらないでしょう。

「謝罪は迅速に」トラブルを最小限に抑えるための必須条件です。

 

④言い訳をしない

ミスや失敗をすると、つい言い訳がでてしまうことも。本人は説明しているつもりでも、相手にとっては言い訳にしか聞こえないこともあるので注意が必要です。

言い訳は、自分は悪くないという責任逃れとも受け取られ、相手の心証を悪くしてしまいます。

特に新人の場合、謝罪の言葉の前に「新人なので」「まだ入社したばかりなので」と言ってしまいがちですが、これは絶対に控えましょう。相手にとっては、担当者が新人だろうがベテランだろうがまったく関係ないからです。

言い訳はせず、間違いを素直に認めて謝罪する。こういった誠実な態度が相手の心に響くのです。

 

⑤次につながる言葉で締めくくる

一般的には「申し訳ございませんでした」というおわびの言葉で終えるのが普通ですが、その後に「貴重なご意見、ありがとうございました。今後はこのようなことがないように気を引き締めます。これからもよろしくお願いいたします」といった、次につながる言葉を続け締めくくりましょう。

お客さまからのクレームなどは、お客さま自身も言おうか言うまいか悩んだ末に、会社が良くなってほしいという思いから、あえて言ってくださることもあるでしょう。誰だって嫌なことは言いにくいもの。そんなお客さまに対して、謝罪の言葉だけでなく“言ってくださってありがとう”という感謝の気持ちを伝え、言ってよかったと思っていただくことは今後も良好な関係を続けていく上でとても意味のあることといえるのではないでしょうか。

 

⑥身だしなみを整える

謝罪では目から入る情報も、印象を大きく左右します。謝罪の場に臨む際は、きちんと反省しているという気持ちが相手に伝わるように、身だしなみを整えることを忘れてはいけません。

 

身だしなみには、服装や髪型だけでなく、言葉遣いや態度振る舞い、礼儀を正しくするという意味もあるそうです。謝罪の場に合わせて身なりを整え、相手が話しやすいような態度や表情、言葉がけをしてしっかりと話を聞く。言い訳はせず、心からの謝罪の気持ちを相手に示す。これこそが、謝罪における身だしなみを整えるという意味といえるでしょう。

 

謝罪のキモは『心』にあり

私の師であるマナーコンサルタント・西出ひろ子先生は、マナーの「3つのこ」を提唱されています。「3つのこ」とは、「こころ(心)」「ことば(言葉)」「こうどう(行動)」のこと。

例えば謝罪の場合、相手に対する“大変申し訳ない”という「心(気持ち)」を、「申し訳ございません」という「言葉」、そして、お辞儀という「行動」で相手に示し、おわびをするということです。

そこには、“この場合のお辞儀の角度は何度で……”などという考えはありません。申し訳ないと思う心、その気持ち分に比例して、自然にお辞儀の角度も深くなっていくのです。

謝罪とは、まずは相手に対する申し訳ないというおわびの気持ち、「心」ありきなのです。

 

まとめ

ミスは誰にでもあることです。そのミスによって迷惑をかけた方々に対し真摯に謝罪した後は、同じ過ちを二度と繰り返さないというのが何よりも大切なこと。

そのためには、いつまでもミスを引きずらず、気持ちを切り替えて前に進むことが必要です。

謝罪をして終わりではありません。その後の意識と行動次第で、あなた自身がさらに大きく成長する可能性が秘められているのです。

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識者プロフィール

金森たかこ(かなもり・たかこ) 京都市在住。ビジネスマナー講師。食品メーカーのOLとして勤務後、フリーアナウンサーとして独立。仕事をする中において、人間関係、コミュニケーションの重要性を感じ、マナーある人間関係づくりのため、マナー講師としての活動を開始する。アナウンサーとして培った話し方、ボイストレーニングを取り入れた独自のマナー研修が人気。テレビ番組などのメディア出演やドラマのマナー指導なども行う。ウイズ株式会社の社長としても活躍中。