いつも通り過ごしていても気にならないほど軽かったり、その場にうずくまってしまうほど重かったりと、女性によって異なる生理中の症状のつらさ。特に症状が重いと、下腹部痛だけでなく、腰痛、頭痛、めまいなどに悩まされ、仕事に支障をきたしてしまうこともありますよね。

しかし実は、そうしたつらい生理日に取得するための休暇として、労働基準法には「生理休暇」という制度があるのをご存知でしょうか。そこで今回は、生理休暇を取得するために知っておくべき基本について、特定社会保険労務士の菊地加奈子さんに伺います。

 

生理休暇とは

そもそも生理休暇とは、「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」として、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と労働基準法第68条で定められた制度のこと。

ただ、「生理だからといって無条件に仕事を休めるという規定ではなく、症状がつらすぎて働くことができないということが条件になります」と菊地さんは語ります。

 

「生理休暇は、生理日に休ませるのが目的ではなく、つらくて働けない状態のときに本人が請求すれば(その部分に関してのみ)働くことを免除しますという主旨であるため、症状に応じて本人の申し出が時間単位、また、半日単位での請求であればその単位で与えればよいとされています」(菊地さん:以下同じ)

 

また、生理日のつらさは人によって異なるため、会社側は取得者に対して、「生理休暇が取得できるのは月に○日までとする」というように、生理休暇の日数に上限を設けることができないのも、この制度のポイント。

しかし、給与の支払いの有無における上限を設けることは違法ではないため、労働者からの虚偽の申告による休暇取得を防ぐ意味でも、会社側が「月に○日までは有給、それを超えた場合は無給」と定めることは可能なのだそうです。

 

知っておきたい生理休暇のポイント

それでは、生理休暇における法律の決まりごとにおいて、実際に取得する際知っておくべきポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。

 

◎雇用形態を問わず取得ができる

「生理休暇は『労働者』であれば、パート、アルバイト、正社員など雇用形態を問わず、誰でも請求することができます。

また、有給休暇は就業規則等で『○日前までに申請すること』と定められていることが多いですが、生理休暇はあくまでもそのときになってみないと分からないことであるため、当日の急な休みであったとしても、会社は認めなければなりません」

 

◎取得時に特別な証明義務はない

「生理日の症状については個人差がありますし、仕事に支障が出るほどつらいのに医師の診断書などを要求するとなると、わざわざ病院に行かなければならないことになり、生理休暇自体取ることができなくなってしまいます。

したがって、女性労働者の請求があった場合には、特別の証明がなくても会社は生理休暇を与えることとし、特に証明を求める必要が認められる場合であっても、医師の診断書のような厳格な証明を求めることなく、そういった事実があることを会社が認識できれば十分なので、同僚の証言程度の簡単な証明によるもので判断すべき、という通達が出ています(昭63.3.24 基発150号 婦発47号)」

 

◎給与発生の有無は会社と労働者との取り決めで異なる

「労働基準法に定められている休暇で給与の支払いが命ぜられているのは、年次有給休暇のみで、これ以外の休暇については何も規定されていませんので、生理休暇で休んだ日(時間)に対して、会社が給与を支給しないとすることは違法ではありません。

逆に、労働契約や就業規則などで生理休暇を有給扱いとするケースの場合は、会社はその定めに拘束されますので、労働基準法が有給だといっていないからといって、女性従業員が生理休暇をとった日に給料を支払わないことはできません」

 

また、生理休暇の取得によって、精勤手当がもらえなくなるかどうかについて、菊地さんは次のように続けます。

「法律では、生理休暇取得日を出勤扱いにすることを義務づけているわけではありません。ですので、あくまでもその取り扱いは会社と労働者との合意に委ねられており、実際に、『生理休暇取得日を精皆勤手当の支給要件において欠勤扱いとする制度は有効とする』という判決が出ています。

ただし、賞与や昇給の査定などで生理休暇の取得を極端に不利に扱うことは、法の主旨から許されないとされています(日本シェーリング事件、最高裁 平成.1.12.14)」

 

確認必須! 生理休暇取得時の注意事項

また、生理休暇を取得する際に注意すべきポイントについて、菊地さんは次のように語ります。

 

◎生理休暇が多いと有給休暇の付与に影響も

「会社が有給休暇を付与する際の基準には、『労働日の8割を出勤していること』というものがあります。この基準が認められれば有給休暇を取得することができるのですが、この8割が満たされているかどうかを見る際に、産前産後休業や育児休業、有給休暇を取得した日、労災による休業は出勤扱いとしてカウントされる一方で、生理休暇は『欠勤』として計算されてしまいます。よって生理休暇が多いと有給休暇を付与されなくなる可能性もあるのです」

 

◎不適切な取得で過去には懲戒処分例も

「生理休暇を取得したその日に夫の運転する自動車で深夜に遠隔地(高速道路で4時間を要する場所)まで行き、その翌日に民謡大会に出場したことが判明し、申請者が懲戒処分を受けた、という事件が過去にありました。

裁判所は、生理休暇を取った日に入っていた業務にはそれほど苦痛ではないものも含まれていたので、『生理日のため「就業が著しく困難」であったとはいえない』として懲戒処分を有効と判断したのです(岩手県交通事件・盛岡地裁一関支部平成8年4月17日判決)

生理休暇は請求すれば当日の急な休みも認められることになりますが、『就業が著しく困難』な状態でもないのに、どの女性従業員も当たり前に休むような慣習ができてしまったら、会社の経営が成り立たなくなるばかりでなく、女性従業員全体に対する信用がなくなる事態になります。ですので、生理休暇を取得する際は、法律の主旨に沿って適切に使用することが重要です」

 

生理休暇は働く女性の味方

制度についてきちんと知り、適切に取得することで、働く女性の味方となってくれる生理休暇。日頃から生理のつらい症状に悩まされることが多い人は、自分の働く会社における労働契約や就業規則を確認した上で、上手に活用してみてはいかがでしょうか。

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識者プロフィール

菊地加奈子(きくち・かなこ) 特定社会保険労務士 菊地加奈子事務所代表。開業後も、大手社労士法人で経験を積みながら労務問題の多い業種を中心に労務顧問に携わり、就業規則や賃金規程の作成・見直し、人事関係の諸手続き、助成金申請、人事制度構築、給与計算業務など、多岐にわたった業務を行うほか、労働基準監督署での労働相談員として労使双方からの1000件を超える労働相談にも対応している。