6月にボーナスが支給され何に使おうかなとワクワクしている人がいる反面、ボーナスが少なかった、支給されなかったなど、ガッカリしている人も多いのではないでしょうか。

支給の時期になると「何に使うの?」「旅行でも行くの?」なんて、話題の中心になる「ボーナス」。しかし、そもそもボーナスとは何なのか? どのような仕組みなのか? しっかり把握している人は多くないようです。そこで、ボーナスつまり賞与とは、どのような仕組みで支給されているのかを社労士の榊裕葵さんに伺います。

 

そもそも賞与とは?

厚生労働省の通達において、賞与とは「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と説明されています。

通常の月度賃金のように、あらかじめ支給額が決まっておらず、会社の業績や社員の勤務成績等に応じて事後的に具体的な支給額が決まるというのが賞与の特徴です。

 

会社に賞与の支払い義務はあるの?

会社の賞与の支払い義務は、就業規則や雇用契約書の定め方次第です。

次のように整理して理解するとよいでしょう。

 

会社の賞与支給義務について

 

ただし、「支給する」と書かれていても、ほとんどの会社の就業規則においては「会社の業績等によっては支払わない場合がある」という「ただし書き」がついており、会社が赤字決算や大幅減益になった場合は、賞与の支給が見送られることがあります。

 

賞与の仕組みとは

このように、賞与の額や支給の有無において会社の裁量権は大きいもの。しかし、だからといって会社が賞与額を無制限に決めてよいわけではなく、一定のルールに基づいて決定されなければなりません。

賞与額の決定される仕組みも雇用契約書や就業規則の定め方次第ですが、大きくは次の2パターンに分かれるのではないでしょうか。

 

(1)中小企業の場合:経営者に一任されていることが多い

社員数名から10名程度の会社の場合は、経営者の目が行き届くので、賞与額の決定は経営者の判断に一任されていることが多いといえるでしょう。

例えば、A君は頑張っているから50万円、B君も頑張っているが、A君には少し及ばないから40万円くらいかな……」というような形で、経営者が社員一人一人の賞与額を決定していくイメージです。

就業規則などに賞与の計算式が特段定められていない場合には、このような経営者の主観的判断による賞与額の決定も法的には問題ありません。

社員数が数十名規模になってくると、部門の責任者が賞与額を一時査定し、経営者が最終決定をするというような2段階を経て決定されることもありますが、いずれにしても、客観的な数式や規定に当てはめて賞与額を決定するというよりも、責任者や経営者の判断が重視され、賞与額が決定する傾向にあります。

 

(2)中堅・大企業の場合:客観的な計算式に基づくことが多い

社員数が百名を超えるような規模になると、各種社内規定も整備が進み、賞与の支払いに関しても客観的な計算式に基づいて行われることが多くなります。

最も標準的な賞与額の決定式は、「基本給×月数×評価係数」の形をとるものであり、業績に応じた月数を設定し、各社員の勤務評価を一定の係数に置き換えて、基本給にそれらを乗じることで賞与額を決定する流れです。

数式の中身を個別に見ていきましょう。

 

◎基本給

上記数式では仮に「基本給」としていますが、そこに各種手当を含めることも差し支えはないので、給与のどの範囲までを賞与計算に含めるかは、就業規則等の定め方次第ということになります。

 

◎月数

中堅企業の場合は会社側の判断により決定されることが多いですが、企業内労働組合があるような大企業の場合は、労働組合との話し合いの結果も重要視されます。いずれにしても、「月数」は会社全体の業績を反映した変数ということがいえるでしょう。

 

◎評価係数

「S評価=1.4倍、A評価=1.2倍、B評価=1.0倍、C評価=0.8倍」というように、評価に応じて賞与額が増減するような係数が設定されるイメージです。「評価係数」は社員個々人の勤務成績を反映した変数ということになります。

 

なお、上記(1)(2)いずれの場合であっても「評価期間すべてに在籍し」「支給日」に在籍している社員に支払うというルールを定めている会社が多いようです。

例えば、「平成28年6月10日の賞与は、同日に在籍し、平成27年10月1日から平成28年3月31日まで正常に勤務した者に限り支給する」というような定めです。そのため、入社して日が浅い場合は、自分が賞与の支給の対象になるかどうかを、就業規則等をよく読んで、把握しておきましょう。

 

賞与に関するトラブルにはどう対応すればいいの?

賞与の仕組みが分かったところで、賞与に関する主なトラブルと対応・予防方法を具体的に紹介します。

 

トラブル1:有給休暇や育児休業などを取得したことで、賞与額を減少させられてしまった

有給休暇は労働基準法で認められた権利であり、有給休暇を取得した労働者を不利益に扱うことは許されません。

また育児休業や介護休業に関しては、実際に休業を取得した期間に対して賞与の査定の対象としないことは認められていますが、育児休業を取得した場合には全額賞与を支給しないというような、実際に休業した期間を超えて不利益を課すことは許されません。

 

対応方法:まずは人事部などに相談を

このように不利益な扱いを受けた場合は、まずは会社の人事部などへ相談しましょう。納得のいく対応が得られなかった場合は、労働基準監督署に相談をして会社を指導してもらう必要があります。

それでも改善がなければ弁護士などに依頼し、未払い賃金として労働審判や裁判を起こす流れになりますが、仮に勝訴しても得られる額が小さい場合は、弁護士費用のほうが大きくなってしまう可能性があるので、ケースバイケースでの判断が必要になるかもしれません。

 

トラブル2:求人票には「賞与あり 実績○カ月」とされているにもかかわらず、賞与が支払われない。もしくは求人票とは支給内容が異なっていた

賞与に限ったことではありませんが、求人票の内容に不明点がある場合は、入社前に確認をしておくことが大切です。

例えば、賞与の「実績○カ月」という表現も、1回あたりなのか夏冬合計なのか、毎年安定して同じくらいの月数が支払われているのか、年度で大きく増減しているのかなど、具体的に確認をしておいたほうがよいでしょう。

 

予防方法:書面による労働条件の明示を受けておく

実際に入社をする際には、会社には賞与を含む、主要な労働条件について書面を交付する義務がありますから、トラブルを防止するためにも、必ず書面による労働条件の明示を受けておきたいものです。

 

トラブル3:自分だけ賞与が支払われなかった。または極端に低い額だった

確かに、会社には賞与額を査定するための幅広い人事権が与えられています。しかし、明らかに経営者の好き嫌いだけにより賞与を不支給とされたような場合は、会社の人事権を逸脱し、社会通念に照らし合わせても違法になるものとして、賞与の支給を求めることができるでしょう。

評価期間の大半を休職していたとか、懲戒処分を受けるような行為をしたとか、そういった事情がないのにもかかわらず、その職場でこれまで慣習的に支払われている賞与額や、同じような仕事をしている同僚と比べて、自分だけ賞与額が極端に低いような場合には、会社の人事権の範囲を逸脱している疑いが高いといえると思います。

 

対応方法:まずは会社に説明を求めよう

このような場合には、自分だけ賞与が少ない理由の説明を会社に求め、合理的な説明が得られない場合は、労働基準監督署や弁護士へ相談をしてください。

 

まとめ

賞与は、月度の賃金とは異なり必ず一定額の支払いが確約されるものではありませんが、会社がその都度まったくの自由に決めてよいものではなく、就業規則や雇用契約書、あるいは、法令の定めによって会社の裁量は制限を受けます。

賞与を受け取る場合には、その額のみで一喜一憂するのではなく、自社の賞与がどのようなルールに基づいて決定されているのかを把握し、就業規則や法令の定めに照らし合わせた結果、自分は本来受け取れるべき賞与額をきちんと受給できているのか、一度チェックをしてみることも必要でしょう。

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識者プロフィール

榊裕葵(さかき・ゆうき) 特定社会保険労務士(ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー)上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。