会社にはさまざまな用件でお客さまがいらっしゃいます。お客さまにとって訪問先の会社は自身の会社とは違うため、不慣れで戸惑うことがあります。特に初めての会社に出向くときは、不安な気持ちでいっぱいかもしれません。

 

そこで今回はビジネスマナー講師の金森たかこさんから多くの若手ビジネスパーソンが知っておくべき来客応対の基本を伺います。来客応対での大切なポイントは、お客さまに不安感を抱かせないことと常に会社の代表という意識を持って応対すること。ポイントとコツをしっかり押さえてお客様に安心していただける環境を作りましょう。

 

来客応対の基本とコツ1-お客さまの出迎え-

【来客対応の基本】:「明るく」「迅速」「正確」「丁寧」

まず、お客さまがいらしたら、即座(迅速)に立ち上がり、お客さまの目を見て笑顔(明るく)であいさつをします。次に会社名と名前、そしてアポイントの有無を確認(正確)します。その後、復唱(丁寧)して担当者に取り次ぎます。

 

◎アポイントがある場合

「ABC社の○○様ですね。お待ちいたしておりました」と言ってお辞儀をし、担当者に取り次ぎます。「お越しくださりありがとうございます」という歓迎の気持ちを言葉と行動で示し、心のこもった応対を心がけましょう。

スムーズに取り次ぐためには、来訪者の会社名、名前、来訪時間、取り次ぎ先などの情報を頭に入れておくとよいでしょう。

 

◎アポイントがない場合

「ただ今確認してまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と告げ、担当者の意向を確認します。

仮に担当者がいたとしても、その場では担当者の在・不在は伝えません。もしかすると、担当者はすでに会議で離席してしまっているかもしれませんし、すぐに外出しなければならないかもしれません。したがって、必ず担当者の在・不在を確認することが先決です。そして、担当者がいる場合は、本人の予定や意向を確認した上で対応しましょう。

 

【ワンランクアップの応対】:情報共有の徹底

特に受付がなく、入口付近にいる人や気付いた人が対応する場合、来訪者の会社名、名前、来訪時間、自社の担当者名などを一覧にして情報共有できるようにしておくと、誰もがすぐに対応でき、お客さまをお待たせすることがありません。

お客さまを案内するときは、不安にさせないために「3階の応接室へご案内します」というように、必ず行き先を告げてからご案内しましょう。

 

来客応対の基本とコツ2-移動中-

【来客対応の基本】:お客さまに合わせて誘導する

 

◎廊下を歩くとき

お客さまには廊下の中央を歩いていただき、案内人はお客さまの右斜め前、2~3歩先を歩くのが基本です。途中適度に振り返り、お客さまの歩調に合わせて部屋まで案内します。

 

◎階段やエスカレーターに乗るとき

一般的には、お客さまが上、案内人が下に位置するといわれています。具体的には、上がるときは、お客さまが先に上がっていき、案内人がその後ろから。降りるときは案内人が先(下)に、お客さまはその後に続きます。

しかし、ビジネスシーンにおいては、上がるときには、案内人が先に上がり、お客さまはその後につきます。理由は、お客さまが不慣れな場所で先に歩くのは不安になるからです。また、例えばお客さまがスカートをはいた女性で、案内人が男性の場合、自分のすぐ後ろを男性が上がってくるのは、あまりいい気はしないかもしれませんね。
このときに、必ず「お先に失礼いたします。どうぞお足下にお気をつけください」というひと言を添えることを忘れずに。黙って先に上がっていっては、マナー違反(失礼)となります。

 

◎エレベーターでのご案内

エレベーターでお客さまをご案内する際の最大の注意点は、中に誰か乗っているか、いないか、という点です。それによって、ご案内の仕方が変わります。

【乗る前】
エレベーターの上下ボタンどちらかを、案内人が必ず押します。お客さまに押してもらうことのないように注意しましょう。

【中に誰もいない場合】
「お先に失礼いたします」とひと言、お客さまに断ってから案内人が先に入ります。密室のエレベーターには、まず案内人が先に入って安全確認をします。また、エレベーター内にお客さまを一人にしないという配慮からなる案内の仕方です。
中に入ったら、案内人はすぐに操作盤の前に立ち、片手で『開』ボタンを押し、もう片方の手でドアを押さえ、お客さまに入っていただきます。

【中に誰か乗っている場合】
お客さまに「どうぞ」と言葉と方向を手で示し、先に入っていただきます。
このときに、もう片方の手で、ドアを押さえることを忘れないようにしましょう。
中に入り、操作盤の前に立てそうであれば、ボタンの操作をします。すでに他の人が操作をしている場合は、「失礼いたします」と言って軽く会釈をし、自分で行き先階のボタンを押します。もし、手が届かない場合は、「恐れ入りますが、5階を押していただけますでしょうか」と操作盤の前に立っている人にお願いをします。操作を行っていただいたら、「ありがとうございます」と必ずお礼のひと言を伝えます。

 

◎エレベーターでの席次

エレベーターの中では扉から遠い奥が上座です。一般的に、扉から見て左奥が最上席となり、扉に近い場所が下座になります。

案内人はもちろんのこと、若手社員は積極的(先手)に操作盤の前に立って、自分以外の人たちのために、ボタン操作を行いましょう。

 

【ワンランクアップの応対】:お客さまに安心感を与える丁寧な案内

廊下など、社内で迷っているお客さまを見かけたら、聞かれる前にこちらから声をかけましょう。不安な気持ちでいるときに「どちらの部署をお探しですか。よろしければご案内いたします」と声をかけられたら、どんなにうれしくほっとすることでしょう。
同時に、あなたや会社に対する印象はグッとアップするはずです。

また、手で方向を示すときは、指先をきれいにそろえます。これは、意識していないと、つい、指が開いたり曲がったりしてしまいます。指先は相手から見ると大変目につく箇所です。常に意識をして実践しましょう。

さらに、廊下の曲がり角などでは黙って曲がらず、お客さまと目を合わせ「こちらでございます」と手で方向を示し、曲がることをお知らせすると親切です。案内人のひと言で、お客さまは不安や不快を感じることなく、安心して案内されます。

 

来客応対の基本とコツ3-応接室へのご案内-

【応接室へのご案内の基本】:ドアの開け閉めは静かに

ドアを3回ノックし、中に誰もいないことを確認してからドアを開けます。ドアには内開き(押す)と外開き(引く)、スライド式(引き戸)がありますが、いずれの場合も、ドアを開けるときはドアとともに動き、閉めるときはドアの方を向いて静かに閉めましょう。

◎内開きのドア:「お先に失礼します」と言って会釈をし、案内人が先に入室します。ドアノブを持ち替えてドアが閉まらないように押さえ、「どうぞ」とお客さまを招き入れます。

◎外開きのドア:手前にドアを引いて、「どうぞ、お入りくださいませ」とお客さまに伝え、先に入室していただきます。

◎スライド式のドア:ドアをスライドさせ、お客さまに先に入室していただきます。その際、もう片方の手もドアに添えると丁寧さが伝わります。

席次は、基本的に、出入り口から見て、遠い席、奥の席が上座、近い席、手前の席が下座となります。お客さまには上座にお座りいただきます。

 

【ワンランクアップの応対】:お客さまの都合や要望をくみ取る

基本を知った上で、お客さまの要望を伺い、あえて下座にお座りいただくこともあります。例えば、下座から見える景色が素晴らしかったり、けがをされていて、ドア近くの席の方がお客さまにとって都合が良いという場合などです。

基本を知った上で、お客さまに失礼なく、また心地よく過ごしていただくために、臨機応変な対応力を身につけることも大切です。

応接室でお客さまにお待ちいただく場合、「どうぞこちらにおかけになってお待ちいただけますでしょうか」と、上座の席をはっきりと示し、遠慮なくお座りいただきましょう。

 

来客応対の基本とコツ4-お茶の出し方-

【基本の流れ】お茶出しの順番と茶碗の向き

 

1.人数分のお茶の入った茶碗と、重ねた茶たく、ふきんをお盆にのせます。

2.そのお盆を胸の高さにして両手で持ち、少し横にずらします。これは、自分の息がお茶にかからないための配慮です。

3.ドアを3回ノックし、「失礼いたします」と声をかけ、会釈をして入室します。

4.お盆をサイドテーブルに置き、茶碗を茶たくにセットします。その際、必ずお茶の入った茶碗の糸底をふきんにのせ、水分を拭き取ってから茶たくにセットしましょう。茶碗と茶たくがくっつくのを防ぐためです。

5.「どうぞ」や「失礼いたします」と言葉を添えて、基本はお客さまの右後ろ側から両手でお出しします。最初にお客さまへ、複数いらっしゃる場合は最上席にお座りになっている方から順番にお出しします。お客さまに出し終えたら、自社の担当者に出します。茶碗に絵柄がある場合は、絵柄が相手の正面を向くように出しましょう。

6.お茶を出し終わったら、お盆を脇に挟み、ドアの前で「失礼いたします」とあいさつをし、一礼して退室します。ドアを閉める前、最後にもう一度会釈をすると、より丁寧な印象になります。

 

【ワンランクアップの応対】:お茶出しでの心遣い

テーブルに書類が広がっていてお茶を置くスペースがない場合は、黙って勝手に書類を動かしてはいけません。必ず自社の担当者に「お茶はどちらに置けばよろしいでしょうか」と伺い、指示に従いましょう。

お茶をお出しするのは原則、右後ろ側からですが、部屋のレイアウトなどの関係で、左側、あるいは正面からしかお出しできない場合もあります。その際は「こちらから失礼いたします」と一声かけてからお出しすれば構いません。

至急の用件で、どうしても面談中の人に伝言の必要が生じた場合は、必ず用件を簡潔にメモに書いて渡し、静かに指示を仰ぎましょう。伝言の内容を声に出して伝えてはいけません。

 

お客さまをお見送りするとき

面談が終わったら、あいさつをして、お客さまをお見送りします。自分の担当ではなくても、お客さまを見かけたら、必ずあいさつをしましょう。

担当者としてのお見送りは、部屋の外、エレベーター前、または玄関先の車の前など、相手との関係や状況によって変わります。

 

◎部屋の外でお見送りする場合:丁寧にあいさつをした後、深くお辞儀をしてお見送りします。

◎エレベーター前でお見送りする場合:エレベーターの上下ボタンは必ず担当者が押します。エレベーターが着いてお客さまが乗り込み、最後のあいさつをしたら、エレベーターが動き出すまでお辞儀を続けます。

◎車の前でお見送りする場合:車の前で最後にあいさつをした後、お客さまに車に乗っていただきます。車のドアが閉まったらきちんとお辞儀をし、車が見えなくなるまでお見送りしましょう。

 

まとめ

来社されたお客さまに心地よく過ごしていただくためには、社員一人一人がお客さまの立場に立って考え、気持ちが良いと思うことを行動に移していくことが重要です。

実際の仕事の場では原則はあっても、すべて原則通りというわけにはいかず、シチュエーションによっては違う対応が求められる場合が出てきます。

 

基礎と基本を分かった上で、お客さまに合わせて臨機応変に対応していく。こうした相手の立場に立った誠意ある対応が、お客さまに満足感を与え、人と人、会社と会社の良好な関係を築いていくでしょう。

 

識者プロフィール

金森たかこ(かなもり・たかこ) 京都市在住。ビジネスマナー講師。食品メーカーのOLとして勤務後、フリーアナウンサーとして独立。仕事をする中において、人間関係、コミュニケーションの重要性を感じ、マナーある人間関係づくりのため、マナー講師としての活動を開始する。アナウンサーとして培った話し方、ボイストレーニングを取り入れた独自のマナー研修が人気。テレビ番組などのメディア出演やドラマのマナー指導なども行う。ウイズ株式会社の社長としても活躍中。