2013年にサイボウズ株式会社とダンクソフト株式会社の2社に同時転職をした中村龍太さん。実はこのほかも2枚の名刺を持っています。

4社を軸に活動する中村さんは、そうしたご自身の働き方を「副業」ではなく「複業」と自称。どのような経緯からこの働き方を選択されたのでしょうか。サイボウズ本社にてお話を伺いました。

 

きっかけは給与を補うためだった

—日本マイクロソフト株式会社に在籍されていた2013年、中村さんはサイボウズ株式会社と株式会社ダンクソフトに同時転職されています。現在はどのような勤務体系で働かれているのですか?

 

現在、広報チームのリーダーとして勤めているダンクソフトは、毎週月曜日が勤務日となっています。火〜金曜日はサイボウズに出勤し、社長室デジタルビジネスプロデューサーとして、クラウド型データベースアプリ「kintone」の用途開発を担当しています。

 

—転職までにはどのような経緯があったのでしょうか?

 

マイクロソフト(以下、MS)社を辞める1年ほど前、50代を目前に控えた私は、MSのキャリアコンサルタントに今後のキャリアについての相談をしていました。
「中小企業支援」「IT教育」「地域活性」「研究者」「農業」など、いくつかのテーマが浮かび上がったのですが、それを今の仕事のなかでいかに実現していこうか考えていた折、Facebookを通じてたまたまサイボウズの社員と知り合ったんです。

実際にその方と飲みに行く仲になり、最初はこれからのクラウドサービスについておおいに盛り上がっていたのですが、後日、サイボウズの社長・青野慶久とも語り合う機会をもつことができました。そして「自由に働ける」というサイボウズの方針を聞いているなかで、転職を考えるようになりました。

 

—ダンクソフトのほうは?

 

サイボウズへの転職を検討していた段階で、事前になんとなく提示された給与額はMS時代の半分くらいでした。そこで給与を補う手段として、初めて「副業」を意識したんです。副業はサイボウズの就業規定でも認められていました。

その候補として挙がったのが、かねてよりMS時代からおつきあいのあったダンクソフトでした。ダンクソフトは徳島県神山町にサテライトオフィスを設けるなど、サイボウズと同様、新しい働き方の推進という点でとても意欲的な会社です。

両社の社長を交え、3者で協議した結果、私のお給料のことや就業ルールのことなどが決まっていき、「やってみてうまくいかなかったらなんとかしよう」と、3者で合意形成されました。

ですので、もしもサイボウズで十分な給料が提示されていたら、きっと今のような働き方は選択していなかったと思います。

 

「副業」ではなく「複業」なのはなぜ?

—3年間、今のスタイルで働いてみて、気づいたことはありますか。

 

副業の“副”の意味です。私は「副業」ではなく「複業」と呼んでいます。「副業」と聞くと、業務時間外にちょっとだけ仕事をやるイメージがありますよね。しかし私は、1つの仕事が2つの会社の成果になる、というデザインでこれまでやってきました。A社はA社、B社はB社の成果にするのではなく、1つの仕事をすれば、A社にとってもB社にとっても成果になるというのが、私の複業のスタイルです。

そして会社にとってメリットがあるだけではなく、ワークライフバランスの点からも適していると思います。よく「2つの仕事を掛け持つと、時間がなくなるんじゃないか?」なんていわれるけれど、少なくともMS時代のほうが忙しかったくらいですから(笑)。

 

—2社での仕事のほかにも、農業をされているそうですね。

 

はい。2015年からNKアグリ株式会社という会社で、リコピン(トマトなどに含まれる栄養素)をたくさん含んだ「こいくれないニンジン」の栽培をしています。こちらはMS時代に「マイクロソフト農業クラブ」で活動していた経験から始まった仕事です。

 

リコピン人参を栽培中の中村さん

 

実はあともう1つ、今年10月から株式会社スノーピークビジネスソリューションズという会社でも、チームワークプロデューサーとして活動しています。母体であるスノーピークはアウトドアやキャンプの用品メーカー。

そのグループ会社である同社では、チームワークを創るための研修事業、ツールの販売・導入支援、コンサルティング事業を行っています。サイボウズでは「チームワークあふれる社会を創る」ということをミッションとして掲げており、その流れをくんで始まった仕事です。

 

3つの視点で自分を棚卸ししてみる

—50代のキャリアプランを練り、それを実現していくために「複業」の道を選択された中村さんですが、まだ実績を積んでいない若手社会人が、今すぐ「複業」の道を選ぶのはなかなか難しいと思います。
そうした社会人は、将来に向けて何をしておくべきだと思いますか。

 

複業のことはいったん置いておき、まずはこんな絵を思い浮かべながら「やりたいこと」「できること」「人からやってほしいと思われること」の3つの視点で、今の自分を素直に振り返ってみるのがいいと思います。

 

 

例えば「会社からやってほしいと思われること」と「自分ができること」が重なっていれば、それはお給料がもらえる仕事になりますよね。その重なった部分に「自分がやりたいこと」も重なれば、きっとモチベーションはさらに高まるでしょう。

逆に、まず「やりたいこと」があったとして、それが自社でできないとなった場合、それはたとえお金をもらわなくても「やりたい!」と思えるのかどうか。こうしたことを、会社での仕事に限定せず、プライベートな面—例えば、奥さんから家庭での育児を望まれるなど—も含めて考えてみるんです。

何が正解なのかは人によって異なるでしょうが、「3つの輪が重なった部分を今の会社では実現できない」あるいは「たとえもらえるお金が少なくともやりたいことがある」と思うのならば、選択肢の1つとして「複業」という働き方が見えてくるかもしれません。

私はみんながみんな複業するべきだ、なんて思っておらず、できる人ができる社会になればいいと思っています。ただ、今後さらに人口の減少が進み労働者が少なくなれば、優秀な社員をシェアするという価値観も生まれていくでしょう。
それがいつになるかは分かりませんが、そうした来たるべき未来に備え、「3つの輪をどう重ならせるのか」「重なっている面積をより大きくするためにどの輪を大きくするべきか」なんて頭を整理すれば、仕事や人生がとても楽しくなると思います。

 

まとめ

最後に中村さんに20代社会人に向けたメッセージを求めると「何事においても、問題のとらえ方を上手になってほしい」と、サイボウズ式メソッドを伝授してくれました。

これは「問題=理想と現実のギャップ(差)であるととらえ、さらに理想と現実の状態を『事実』『解釈』に分けて考えてみる」というもの。「将来こうなりたい!」というキャリアアップにもきっと役立つ手法ですので、実践してみてはいかがでしょうか。

 

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識者プロフィール

中村龍太(なかむら・りゅうた)
1964年広島県生まれ。大学卒業後、1986年に日本電気株式会社入社。1997年マイクロソフト株式会社(現・日本マイクロソフト株式会社)に転職。同社でクラウドサービス「Office365」の事業立ち上げに従事する。2013年サイボウズ株式会社および株式会社ダンクソフトに転職。2015年からはNKアグリ株式会社に勤め「こいくれないニンジン」のエバンジェリストを担当する。