労働者を使い潰すブラック企業の存在は、いま深刻な社会問題となっています。2013年には流行語に選ばれるほど、「ブラック企業」という言葉は世間でも大きく広まっています。

「毎日、残業をしているのに給料が一向に上がらない…。もしかしたら、自分が働いている会社はブラック企業なのかな」「ずっと、今の会社で働き続けて大丈夫なのかな」と、職場に対して不信感を抱いている人もいるかもしれません。

そこで、特定社会保険労務士であり、『採用情報で見極めよ!「ホワイト企業」の選び方』の著者・池内恵介さんに、ブラック企業とホワイト企業の違いは何なのか? そして、もしも自分が知らず知らずのうちにブラック企業に入ってしまったらどうすればいいのか、その対処法までお話を伺いました。

 

ホワイト企業かブラック企業かだけで考えない!

ホワイト企業とブラック企業。どちらもよく耳にする言葉ですが、その違いは一体どこにあるのでしょうか?

 

「ホワイト企業という決まった定義はありませんが、私の解釈では労働条件が法定を大きく上回り、それを順守、定着させている企業です。反対に法律や規則を守っていないなど、コンプライアンス的に著しい問題があるのがブラック企業だと思います。

ちなみに、ホワイト企業とブラック企業という二極化ではなく、実はどちらにも入らない企業が一番多いんです」

 

しかし、実際のところ、ホワイト企業とブラック企業の二極化で捉えている人のほうが多いような気がします。

 

「その通りですね。しかし、ブラック企業じゃなかったらホワイト企業だという考え方は間違っています。

企業はそれぞれ、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など、さまざまな法律で社員に対してあらゆる措置をしなければいけないと定められています。しかし、それを守っているからホワイト企業なのか?と言われると答えはノー。本来、法定を守るのは当たり前のことなのです。

先述しましたが、法定以上の労働条件設定をしている企業がホワイト企業にノミネートされるものだと思ってください。例えば、産前産後休業というのは産前が6週間、産後が8週間と法律では決まっていますが、あえて、産前を10週間、産後を10週間にすれば条件が法定よりも上回っているので、これは優良企業とみなしていいでしょう」

 

過重労働はブラック企業の大きな特徴

池内さんはご自身の著書『採用情報で見極めよ!「ホワイト企業」の選び方』の中でブラック企業の大きな特徴に未払い賃金、不当解雇、過重労働の3点を挙げています。

中でも20代のビジネスパーソンは体力的に若いこともあり、まれに過重労働を強いられている人もいるように思いますが…。

 

「実は現在、過重労働はとても深刻な問題になっています。去年も長時間労働の問題がニュースで大きく取り上げられたりしましたよね。

残業してなくても良いのに帰りづらい状況に陥り、周りが働いているからと一緒になって夜遅くまで仕事で帰れない人も多いようなのです」

 

では、なぜそのような職場が存在するのでしょうか。

 

「現在の労働時間は、1週間で40時間と労働基準法で制限されていますが、昭和61年までは48時間だったのです。つまり1日分の差があるわけですね。労働基準法が改正される前から働いていた50代以上の方と、そのあとの世代である40代以下の方では、労働時間の感覚にそれだけ差異があることが1つの原因だと思います。

ちなみに働いている職場が、不満を言える環境かどうかはブラック企業かを判断する1つの基準になりますね」

 

この数年で、フレックスタイム制を採用している企業が増えてきました。定時がない分、何時間働いても残業代が支給されない未払い賃金の問題もよく聞きます。

 

「経営者の方で、フレックス制だから残業代を支払わなくてもいいと思っている人がいますが、当然、支払う義務があります。

また年俸制についても同じで、残業代を支払わなければいけないのに払わなくてもOKだと勘違いしている人が多いようです。

 

大企業だと専門の労務担当がいるので、そこはきっちり守られている場合も多いでしょうが、法律を知らないまま素通りしている企業も相当あります」

 

転職を考えているあなたが「見極める」べきポイント

労働条件や労働環境の実態をつかむ上で、私たちが実践できるような最善の方法はあるのでしょうか。

 

「転職活動をしている中で紹介会社を介している場合は、担当コンサルタントに職場の状況や労働環境を詳しく教えてもらえるような質問をしてみると良いですよ。企業を紹介しているコンサルタントなら何度もその会社に出入りしているはずなので、職場の雰囲気もある程度分かっていると思います。

もしくは、OB訪問と併せて大学の先輩や知人をたぐり、その業界の人に話を聞くのも有効です」

 

著書の中で転職の際の注意点としては、募集要項の初任給が高いからといって、すぐに飛びつくのは危険だと話されていました。また、社員の平均年齢を知ることも大事と書かれてましたが、こちらは具体的にどういうことでしょうか?

 

「最初の給料が高額であっても、それからが横ばいでずっと給料が上がらないケース、もしくはすごく緩やかにしか上がらないケースがあるんです。

給与について一番に考えるべきなのは、生涯賃金レベルで考えること。

 

平均年齢については職種にもよりますが、例えばIT系の会社で平均年齢が40歳を超えている場合はよく確認したほうがいいかもしれません。若手の採用を抑制し続け、平均年齢だけが上がっていくパターンかもしれない。こちらは会社にもよるので、一概に言えることではありませんが」

 

コレがホワイト企業の条件だ!

では、最後にホワイト企業の条件を教えていただけますか?

 

「残業等の割り増し賃金がきちんと支払われているかは必要条件です。あとは、福利厚生も含めて諸条件が法定を超えていることが大きな目安。

他にも、評価制度がしっかり定めらているかどうかは見分けるポイントですね。こちらに関しては、雇われている側のモチベーションに関わってきますので」

 

もし、入社した会社がブラック企業かもと感じてしまったら、どのような行動をとるべきでしょうか?

 

「あまり何年にもわたって我慢し続けず、タイミングを見計らって退職するのが良いと思います。ストレスをためすぎることによって、精神的なバランスが崩れ、逆に辞めるという選択が見えなくなるケースがあるからです。

そうなってからでは危険。社内でクレームを言ってもなかなか取り合ってくれない可能性が高いので、一番良いのは労働基準監督署に助けを求めることです」

 

ブラック企業をいつ離れるべきか。それを見極めるタイミングについて教えていただけますか?

 

「次の転職活動のことも考慮した場合、あまりに短期間で辞めると『なんで、そんな早く会社を辞めたの?』とエントリーした会社に不信感を抱かせる可能性があります。

ただ、先ほど述べたように我慢の限界を超えて精神を病んでは元も子もないので、そのあたりはよく自分の気持ちと相談しながらということかと思います」

 

まずは目先の情報を確実に「知る」ことから

池内さんいわく、20代のうちから労働基準法を知っておくことが大事だそう。そうすることで、自分が勤めている会社や転職を希望する会社の労働時間、最低賃金はどうなっているか、確かな情報を取得することができ、ブラック企業か否かの見極めがつきます。

自分にとって安心して働ける職場を探すためにも、記事内のポイントに気をつけて慎重に転職活動を行っていきましょう。

 

(オススメ記事)
【社内サバイバル術】実は違法!?ブラック企業にありがちな5つの社内ルール(栗本裕司)

 

識者プロフィール

池内恵介(いけうち・けいすけ)
特定社会保険労務士。中小企業診断士。人事コンサルタント。2009年に独立し、社会保険労務士事務所早稲田労務経営を開業。現在は労働トラブル相談、就業規則作成、労働基準監督署臨検対応、人事賃金制度・評価制度構築のコンサルティングといった人事労務全般にわたるさまざまな案件を多数手がけている。