日々の生活から切っても切り離せない、会社への通勤時間。人によってその長さはさまざまですが、実は通勤時間が長い人ほどストレスがたまりやすく、ネガティブ思考に陥りやすいといわれています。では、通勤や通勤時間によって引き起こされるストレスは、私たちの体や思考、働き方にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?

 

そこで今回はベリテワークス株式会社の代表取締役であり、心理カウンセラーの浅賀桃子さんに通勤時間とストレスの関連性について伺います。

 

通勤時間が長いと心身ともに悪影響を及ぼす

毎朝早起きをして、満員電車に揺られながら1時間以上かけて出社。帰りも仕事でヘトヘトになった状態で1時間以上かけて帰宅……この状態が毎日続いてしまうのは、決して楽なこととはいえません。通勤時間が長いと、体や思考、働き方にどのような影響が起こるのでしょうか。浅賀さんは大きな影響として以下の3点をあげています。

 

①幸福度が失われる

「経済学者のブルーノ・フライ博士が1985年から2003年にかけて行った幸福度調査によると、人が1日の中で不快に感じる1位が通勤時間であったと発表しています。また「通勤時間が20分増えるのは、給料が3割カットされるのと同じくらいのストレスが生じる」と述べているほど、通勤時間が人に与えるストレスは大きく重要な問題なのです」

 

②睡眠不足

「自宅から会社までの通勤時間が長ければ長いほど早起きをしなければいけませんし、仕事が終わって家に着くまでの時間も遅くなります。しっかりした睡眠がとれないと、精神的な疲れがたまりメンタル失調を引き起こす可能性が高くなるのです。

2009年にアメリカのブラウン大学が実施した調査によれば、通勤時間が1分増えるごとに睡眠時間が0.2205分ずつ減ることが分かっています。仮に通勤に往復1時間かかる人と往復2時間かかる人では、1日で約13分、週5日の通勤で週に1時間以上の睡眠時間の差が出てしまうのです」

 

③運動不足になる

「上記で紹介した論文によると、通勤時間が1分増えるごとに運動時間が0.0257分ずつ減ることも分かっています。運動時間が減ることによってネガティブな感情を引き起こし、『電車に乗りたくないなあ』『毎日、会社へ向かうのがしんどいなあ』と、気持ちが負の連鎖に陥ってしまうリスクが増してしまうようです」

 

通勤が引き起こすストレスが、仕事にも大きな影響を与える

通勤によって生じるストレスをためてしまうことで、具体的にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか? 次の3つが主な影響なのだそう。

 

①集中力の低下

「仕事への集中力が散漫になり、本来は問題なくこなせるはずの作業でミスを連発するようになります。そんなミスの積み重ねによってさらにプレッシャーを抱えてストレスを感じてしまい、働くことへの意欲が下がりネガティブな感情が生まれてしまうように」

 

②運動不足

「先ほどの説明の通り、通勤時間が長い人は運動量が減ってしまう。そして十分な運動量がとれないと、人は短気になる傾向があるようです。そうすると、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、他人に文句を言うようになったり、周囲からの信頼も落としてしまうことに……」

 

③ストレスで腹痛を起こす

「電車に乗った途端にストレスで体が拒否反応を起こし、お腹が痛くなる人がいます。それによって、急行電車に乗らなければいけない場合でも、途中下車ができる各駅停車を選ぶようになってしまいます。そうすると、さらに早起きをして家を出なければいけなくなるので、睡眠時間も減り、余計にストレスをためる悪循環につながってしまいます」

 

1日30分間の運動によって、ストレスを軽減できる

ここまでは、通勤時間が長いと心身共にどのような影響が起こりえるのかを説明してきました。しかし、問題なのは通勤時間を短縮するためには引っ越しをする以外に方法はないこと。引っ越しはコストもかかりますし、物件を探したり手続きをしたり、毎日の仕事に追われている20代のビジネスパーソンにとって、簡単に行えることではありません。

では、引っ越しをする以外に、どのようにして通勤時間によるストレスを改善すれば良いのでしょうか。

 

「実は長い通勤時間で不足気味になってしまう運動こそが、通勤のストレスを発散する大事なポイントになります。通勤時間が長いし、仕事も忙しくて運動している時間はない、と思ってしまいがちですが、意識して少しの運動をするだけでストレス軽減に大きな効果が望めるのです。

 

ネガティブ思考になる原因は、脳の中にあるセロトニンという物質が少なくなるからだといわれています。しかし運動をすることで、セロトニンをはじめとした活力を生み出すのに重要なホルモンの分泌が活発になるのです。このようにストレスと運動には大きな関連性があり、体を動かすことはストレスを制御する上で大事なことだといえるでしょう」

 

浅賀さんいわく、理想の運動量は1日30分が目安だそうですが、運動する時間をきっちり確保するのはなかなか難しいですよね。平日は会社の中などで以下のような運動を取り入れてみるといいようです。

 

・1時間に1回、休憩がてらオフィスの周りを歩いてみる

・エスカレーターやエレベーターの利用は避けて、なるべく階段を使う

・帰りは自宅まで1駅分、歩いて帰る

日常のちょっとした時間を上手に使うだけで、ストレス発散につながるそう。これくらいなら、毎日続けることができそうですね。

 

ストレスは適度に発散して、心も体も健康を保つ

通勤時間が長いと自分の自由な時間が減ってしまうため、働くモチベーションも下がりやすくなってしまうかもしれません。ご紹介した運動を日々に取り入れるほかに、持て余しがちな通勤時間を少しでも有意義に生かすことで、情報収集や自分のスキルアップにつなげるなどの工夫ができそうです。

例えば、電車で移動する際にスマートフォンで新聞を読んだり、朝に5つの英単語を覚えるなどして小さな学びの時間にすれば、仕事へのモチベーションも保てるのではないでしょうか。

 

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識者プロフィール
浅賀桃子

浅賀桃子(あさか・ももこ)

ベリテワークス株式会社代表取締役 心理カウンセラー。
慶應義塾大学卒業後、東証一部上場ITコンサルティング会社人事等を経て独立。キャリアパーソンのメンタルヘルス・キャリアカウンセリング件数は延べ5,000名以上にのぼる。ストレスマネジメント、メンタルヘルス、ハラスメント、コミュニケーション等の研修講師としても活動。日本におけるカウンセリングの敷居を下げ身近な存在にすべく、スヌーピーの漫画を用いた独自の心理学「スヌーピー心理学」を展開するほか、ノーツマルシェSELFTURN ONLINEなどでメンタルケア、キャリア、ライフスタイル関連の記事を発信している。