昨今、働き方改革の一環として、大手企業を中心に「週休3日制」という働き方が少しずつ浸透してきました。例えばヤフーでは「えらべる勤務制度」として、育児や介護を行っている一定の基準を満たす社員からの申請により、週休3日での勤務を選べる制度を2017年4月1日から導入しています。

 

ただ、言葉だけが一人歩きをしている感もあり、その実態はいまいちよく分からないという方も多いでしょう。

実際のところ、お給与の仕組みや勤務時間はどうなっているのでしょうか? 「週休3日制」という働き方の具体的な考え方から注意点までを、社労士の榊さんに教えていただきました。

 

週休3日制は4タイプある

「週休3日制」という言葉自体に法的な定義はありませんが、実務上取り入れられている「週休3日制」を類型化すると、大きくは「時間配分変更型」と「時間短縮型」の2つに分類されます。

 

「時間配分変更型」の週休3日制は、従来通り1週間の所定労働時間を40時間に維持しつつ、従来「8時間×5日」だった働き方を「10時間×4日」に変更するということ。

 

1週間の総労働時間は減りませんが、「丸1日休み」の日が1日増えることで、副業や自己啓発などの時間と両立を図りやすくすることを主に目指しています。なお、1日の所定労働時間は原則として8時間が法定の上限ですが、「1カ月単位の変形労働時間制」などの制度を利用すれば合法的に1日の所定労働時間を10時間にすることが可能です。

 

「時間短縮型」については、1週間の原則的な所定労働時間が「8時間×5日=40時間」の場合、単純に1日休みを増やして「8時間×4日=32時間」とし、1週間の総労働時間を減らす形の週休3日制になります。

時間配分変更型のように他の日の所定労働時間を延長させるわけではありませんので、育児や介護などのワーク・ライフ・バランスに配慮したタイプの週休3日制といえるでしょう。

 

加えて、週休3日制はもう1つ別の観点から、「常時型」と「臨時型」の2種類に分類されます。

 

「常時型」の週休3日制は、最初に採用されたときから週休3日制という労働条件が決まっていて、退職するまで常に週休3日制で勤務することを想定しているパターン。

「臨時型」の週休3日制は、原則的な労働条件は週休2日であるものの、育児や介護など一定の条件に該当した場合は週休3日制で勤務をすることができるというパターンです。どのような場合に週休3日を認めるかは、会社によって違ってきます。

 

週休3日制の場合、各種手当や支給額は変わる?

まず、「時間配分変更型」と「時間短縮型」に分けて考えましょう。

「時間配分変更型」の週休3日制の場合は、所定労働時間が週40時間であることは通常の社員と変わらないため、基本給や各種手当は通常の社員と同一であることが基本。

もちろん、通勤手当や食事手当のように、出勤日数に比例する性質の手当は差異があっていいのですが、それ以外の労働条件については原則として通常の社員と差を設けることは合理的でないと考えられています。

 

「時間短縮型」の週休3日制については、1週間の総労働時間が通常の社員よりも減少するため、基本給や各種手当が、所定労働時間に比例して減額されることに対して問題はありません。

しかし、職務内容自体は変わらないのに、週休3日ということだけで月給制を時給制に変更されたり、それまで支払われていた手当を支給停止することは、労働条件の不利益変更に当たると考えられ、本人の同意がなければ違法ということになるでしょう。

 

自分の会社で週休3日制が導入された場合、こんなことに気をつけよう

ビジネスパーソンの観点から最も注意すべき点は、週休2日制で働く人との待遇差が合理的なものであるかということ。

週休2日制で働く人と週休3日制で働く人に、職務内容や責任の度合いなどに明確な差がある場合、労働条件の差は不合理であるとはいえません。

 

しかしながら、職務内容や責任の度合いは同じで、出勤日数だけが違うという状況であるにもかかわらず、週休2日制の人と週休3日制の人で大きな待遇差がある場合は、本当にそれが法的に不合理な待遇差なのかは裁判を行ってみないと分からない部分もありますが、少なくとも会社に改善を求める余地があるかもしれません。

 

また、副業を前提として週休3日制で働く場合に気を付けるべきことは、「労働時間の通算」です。

労働基準法においては、「複数の会社に勤務する場合であっても、労働時間を通算する」というルールがあります。たとえば、AさんがX社で時間配分変更型の週休3日制で月~木まで40時間働き、金曜日に副業としてY社で8時間働く場合、Y社の8時間は、Aさんにとっては週40時間を超えた労働になりますので、全て「残業」という扱いになります。したがって、Y社は2割5分以上の割増賃金をAさんに支払わなければなりません。

 

ところが実務上は、この割増賃金が支払われていないケースが非常に多くあります。Y社はAさんの申告がなければX社で何時間働いているのか分からないですし、AさんとしてもY社では残業しているわけではないのに割増賃金を支払うよう依頼することに迷ってしまう。この点は、今後も実務上は「もやっ」とした感じにならざるを得ず、根本的な解決のためには何らかの立法上の対応が必要だと思われます。

 

加えて、自身の体調管理もこれまで以上に気をつかうことが大切になってきます。複数の会社で働くということは両方の会社を合算すると長時間労働になりがちですから、副業を前提として週休3日制(とくに時間配分変更型の週休3日制)の働き方を選ぶ場合は、自分自身で健康管理に十分な注意を払わなければならないでしょう。

 

「週休3日制」は働き方の選択肢を増やす

今後、週休3日制という働き方はさらに広まっていくかもしれません。

現在、国を挙げて推進している「働き方改革」は、一億総活躍社会を目指しているので、女性、高齢者、障がい者といったさまざまな背景を持つ人々が、無理なく働いて能力を発揮するには多様な働き方を選べることが必要です。そのためにも週休3日制は有力な選択肢の1つになっていくのではないでしょうか。働き盛りの世代であっても、自身の病気や親の介護などで、週休3日制という働き方が必要になる場面が出てくるかもしれません。

 

また、副業を容認や推奨する会社も少しずつ増えていますので、副業をしやすくするための週休3日制という働き方も、将来は市民権を得てくるのではないでしょうか。

 

とはいえ、ただ単に就業規則を改定するなどして、「週休3日制」を形の上で取り入れただけでは、かえって現場が混乱して逆効果になってしまうことも。同じ職場に週休2日の人と週休3日の人がいるときには、双方の業務が労働時間に応じて平準化されていたり、週休3日制の人がコミュニケーションや情報共有で阻害されないようにする。

まずはこのように、週休3日制が円滑に機能する職場のルールや仕組みづくりが不可欠になってくるでしょう。

 

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識者プロフィール

榊裕葵(さかき・ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー
上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。