出張でかかった交通費、接待や打ち合わせで立て替えた飲食費など、月末になると「経費精算」を行っている20代のビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

 

会社のルールに従って粛々と行っている方が大半かもしれませんが、そもそも経費の定義とはなんでしょうか? 経費精算に関して多くのビジネスパーソンが疑問を持つ事例について、社労士の榊さんから具体的な解説をしていただきました。

経費に関する疑問は今回の記事でスッキリ解決してください!

 

経費の基本的な考え方

そもそも「経費」とは何でしょうか。詳しく説明するに当たって、まずは前提知識として、企業会計についてのお話をさせていただきましょう。

 

企業会計は「売上-費用=利益」という構図で成り立っています。この「費用」の中には原材料費、人件費、事務所賃料、広告宣伝費、光水熱費、移動交通費など、企業活動に必要なあらゆる出費項目が含まれているのです。

 

これらの「費用」においては法的には厳密な定義はありませんが、原材料費や人件費にように定期的に必ず発生するものを除き、経営や日々の業務を行う中で必要に応じて随時発生する費用を指して一般的に「経費」と呼んでいます。具体的には、「出張旅費」「接待交際費」「セミナー参加費」などが「経費」の代表例といえるでしょう。

 

そして、「経費」は会社名義のクレジットカードで支払ったり、請求書を発行してもらって後日会社から振り込みで支払ったりすることもありますが、通常、次のような流れで処理されることが多いかもしれません。

 

①自分のポケットマネーでいったん立て替える

②会社名義の領収書を発行してもらう

③会社の経理部などに領収書を持ち込み、立て替えた額と同額を支払ってもらう

 

これが、実務上「経費精算」と呼ばれているものです。

 

経費申請にまつわるQ&A

経費について、基本的な考え方は理解いただけたのではないでしょうか。そこで次は「これって精算どうしたらいいのかな?」「申請してもいいのかな?」といった疑問一つひとつに対し、榊さんから教えていただきましょう。

 

Q1.「交通費、実際使ったルートよりも値段が高いルートで精算したい…これって大丈夫かな?」

 

交通費を精算する際は、領収書や旅費精算書を添付して申請をするのが一般的。ですので、これらの添付書類を故意に偽造して会社から実費以上の交通費を受け取ることは詐欺罪に該当します。精算の際に領収書や旅費精算書の提出を不要としている会社でもそれは同様です。発覚した場合、少額であれば会社も刑事告訴などしないかもしれませんが、社内での信用が失われてその会社に居づらくなってしまうかもしれません。

 

もし精算書の記載ミスなどの勘違いで、本来受け取る額以上の精算を受けてしまった場合は、社内のルールに従って上司または経理部などに申告をし、差額の戻し方について指示を受けるようにしましょう。もちろん、最初から記載ミスをしないことが大切ですが、間違えてしまった場合には正しく修正申告をする姿勢は、「あの人は誠実だ」という評価にもつながるはずです。

 

また、新幹線や在来線特急の利用が認められている区間において、普通電車を利用したにもかかわらず特急料金を請求して、差額を懐に入れるという行為も詐欺にあたりますので絶対にやめましょう。会社は移動時間を含め、出張を短時間で完了させることで業務効率化を目指したり、社員の疲労を軽減させたりすることを目的に特急利用を認めています。この点については社員も会社の意図をくみ取るべきだといえるのではないでしょうか。

 

Q2.「電車で行ける距離だけどタクシーを利用している。これって経費で落とせる?」

 

これについては、会社ごとのルールによります。出張旅費規定等に「どのような場合にタクシーを使えるのか」が書かれていると思いますので、「使える場合」に該当していれば経費精算を受けられますし、該当していなければ自腹にならざるを得ません。

出張旅費規定等の明文化されたルールが存在しない場合は、社会通念を踏まえての個別判断になりますので、上司や総務部などの担当部門に事前確認を行いましょう。

 

たとえば「公共交通機関は通っているが、本数が少なすぎて合わせられない」といった合理的な理由があってタクシーを使いたい時には、あらかじめ出張旅費規定などに目を通し、明確に「タクシー利用可能」とされていなければ、上記の理由を添えて上司に相談するのがよいといえます。

自分の判断でタクシーを利用し、事後的に経費として精算を申し出たところ、会社から経費と認められなかった、というケースも考えられますので、必ず事前にタクシーを使ってよいか上司に相談をしましょう。

 

なお、「出張中に電車のダイヤが乱れたため客先のアポイントに間に合わない」など、緊急でやむを得ずタクシーを使いたいという場合は、携帯電話などで上司に相談をすべきですが、直属の上司に連絡がつかなければ人事部門の責任者など然るべき立場の人に許可をもらい、臨機応変に対応しましょう。

 

Q3.「休日の接待ゴルフ。移動費や滞在費はどうなるの?」

 

まず、会社から業務命令を受けて接待ゴルフに参加をする場合は、当然に移動費や滞在費も「経費」ということになります。

 

ただ、ゴルフ場までの移動に公共交通機関を使う場合は普通車かグリーン車かということや、手土産や食事のグレードなどはどのくらいの金額まで認められているのかなど、社内のルールを確認し、それに沿った段取りをしましょう。

次に、営業部門の社員が自己の判断で接待ゴルフを行いたいという場合は、自分に与えられた経費枠があれば、その範囲内での自己判断は認められるでしょう。しかし、そのような経費が与えられていない場合や自分の持つ経費枠を超えるような場合は、必ず上司などに相談してください。

事後的に経費申請をして認められなかった場合は、「痛い出費」になってしまいます。

 

Q4.「まずい、残業で終電を逃してしまった! 帰りのタクシー代って経費で落とせる?」

 

先ほどの「電車で行ける距離だけどタクシーを利用」の事例と同様、まずはあらかじめ社内規定がどうなっているかを確認しましょう。社内規定を確認しても不明な場合は、「今日の残業は終電後までかかる可能性があるので、帰りはタクシーを利用してもいいでしょうか」と上司に確認して指示を受けてください。

 

通常はタクシーでの帰宅許可が出るか、「終電で切り上げなさい」という指示を受けると思いますが、もし「タクシー代は出せないが、終わるまで仕事をしてほしい」と言われた場合は、社会通念を踏まえても、少なくとも終電後の残業については拒否をする正当事由になると考えられます。

 

Q5.「会社で資格取得を勧められたけど費用は自己負担…これってどうなんだろう?」

 

言い方は任意のように見えても、実態としてはその資格がなければ仕事にならないとか、「いつ資格を取れるんだ?」と繰り返し問われるような場合は、法的には業務命令として資格取得を命じていると考えられますので、費用は会社で負担をしてもらえるよう求めることができます。

 

一方で、勧められた資格が、語学のような一般的スキルや、業務上必須ではないがその資格があれば出世が早まりそうな場合は、断るか、自己負担で取り組んでみるかは、本人の判断次第です。

その会社で出世をしたいとか、その資格を取ることが自分のやりたいことにもつながるのであれば、取り組んでみる価値はありそうですが、そうは思えないのであれば、無理に取り組む必要はないでしょう。

 

Q6.「経費が現金支給の場合、税金はかからないの?」

 

経費は振込であれ、現金支給であれ、いったん自腹で支払った金銭の補填(ほてん)ですから、本人の収入ではないため税金は発生しません。

 

しかし、経費が給与と一緒に振り込まれている場合は、給与計算担当者のミスや勘違いで税金の対象となっていたり、社会保険料の計算に含まれてしまったりする恐れがあります。基本給は変わっていないのに、源泉所得税や社会保険料がやけに高くなっているような場合は、給与計算担当部署に確認をしてみてください。

 

経費申請の時に重要な領収書をなくしてしまった場合

立て替えて支払った経費の領収書をなくしてしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

 

このような場合は、「顛末書を作成し上司の承認を得る」など、会社によってルールは違いますが、何らかの救済策があると思います。しかし中には「領収書がなければ経費精算は認めない」という厳しいルールで運用されている会社もあります。

 

このような場合は、購入店に相談して再発行をしてもらったり、店側で保管している領収書控えのコピーをもらったりするなどの対応を試みてください。

しかし、残念ながらどうしても領収書やそれに準ずるものが手に入らず、精算を受けられない場合は、領収書を紛失した自分のミスとして諦めざるを得ないかもしれません。

 

ただ、証拠を積み上げれば購入したことを証明できるのであれば、裁判を起こして経費を認めさせることは不可能ではないかもしれません。しかし、会社を相手に裁判を起こすということは、今後の仕事に差支えが生じますので、現実的には、立て替え金額が大きすぎて自己負担が是認できないような場合に限られるでしょう。

 

まとめ

一般的に会社の仕事に関連して立て替えた費用は、経費として精算が認められます。しかし、「タクシー利用」や「接待の飲食」のように、「必要かどうかに裁量の余地がある」経費については、どこまでが経費として認められるかは会社のルールにもよります。そのため、「経費の精算が認められず、自己負担になってしまった」ということにならないよう、判断に迷う経費については、必ず事前に上司などに相談するようにしましょう。

そして、精算時のトラブルにならないように、領収書の紛失や精算期限を過ぎないように申請することにも細心の注意を払うようにしてくださいね。

 

(オススメ記事)
これって会社の経費で落ちる? 落ちない? 新社会人のためのケーヒ・スタディー講座
ビジネスパーソンなら知っておくべき! 会社によって違う各種手当とその仕組み
備品購入で貯まるポイントは誰の物? 会社のお金を扱うときに知っておきたいプライベート利用の考え方
知らないと大損!? 会社員のピンチを救う「傷病手当金」とは

 

識者プロフィール

榊裕葵(さかき・ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー
上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。