毎日、仕事が立て込んでいて、家に帰っても仕事のことばかり考えてしまう。昼休みは、毎日デスクでランチしながらメールの返信をしている。そんな人はいませんか?

 

最近はスマートフォンなどでもメールの送受信ができるため、仕事のオンとオフを切り替えづらい社会的環境下で働いているといえるかもしれません。しかし適度な休憩を取ってこそメリハリがつき、仕事の生産性は上がるもの。そこで今回は20代のビジネスパーソンに向けて、仕事が捗る休憩の仕方をお伝えします。お話を伺ったのは、『休む技術』の著者で精神科医・医学博士である西多昌規さん。

今日からすぐに実践できる「休む技術」は、実はこんなにも簡単なものでした。

 

オン・オフを区切りにくくなっている時代だからこそ「休みたい」

週末の金曜日。一般的な企業に勤めているAさんは超多忙だった平日の業務を切り抜けて、いよいよ土曜・日曜の「休日」を迎えようとしています。しかし最近Aさんの部署では残業が禁じられていることもあり、今週中に終えられなかった業務が山積み。翌週月曜の朝に〆切を控えた仕事も残っています。仕方なくAさんは家に仕事を持ち帰り、土日の時間を使ってその仕事を終わらせることにしました――。

 

働き方改革が社会的な話題を呼んでいます。政府はこれまで労働基準法(36協定により、時間外労働月45時間まで)の限度はあるにせよ、事実上いくらでも残業ができる、いわば野放し状態にある長時間労働の制度に歯止めを掛けるべく、月平均60時間(月最大100時間)の残業を上限とする改革案を検討しています。

 

そうした社会的情勢から、多くの会社では従業員に対し「残業をさせない」方針を打ち出しています。しかしそれで従業員側に十分にプライベートな時間が生まれたとは言い切れず、「近くのカフェで仕事をする」「家に仕事を持ち帰る」といった人が増えているといわれています。さらに最近では、「時短ハラスメント」(残業させないことを強制するハラスメント)なんて言葉も生まれてしまいました。

 

そんな実状を踏まえて、『休む技術』(大和書房)の著者で精神科医・医学博士である西多昌規さんは、「オフの時間に仕事の時間(オンの時間)が浸食しやすい今の時代こそ、休むときには休む――そんな『休む技術』が必要」と忠告します。

 

「『会社で仕事をできない』を理由に家へ仕事を持ち帰っても、思うように仕事が進まないこともあるでしょう。そればかりか、そんな週末が毎週繰り返されていくことで、段々と気を病む人が増えているのも事実。ネット環境とパソコンやスマホさえあればどこでも仕事ができる時代だからこそ、自ら能動的に『休む』ことに気を配れなければいけません」。

 

ずっとベッドでゴロゴロ…実は間違っている「休み方」

西多さんはビジネスパーソンの「休み方」を、静的な休み方・動的な休み方、2つの側面に分けて解説します。

 

静的な休み方…家でぐっすり寝る、家でのんびりする

動的な休み方…どこかに出かける、外で遊ぶ(例:ゴルフの打ちっぱなし、ヨガ、買い物)

 

休むときに重要なのは「どちらの休み方が優れているというよりも、2つを巧みに使い分けること」なのだそう。

 

「当然、からだが疲れているならば静的な休息が必要になりますし、気分をリフレッシュしたいならば外出などの動的な休みが必要になる。どちらのほうが自分に適しているのかは人それぞれ。自分に適した休み方をしっかりと見つけることが大前提となります」。

 

とはいえ、土日ずっとベッドでゴロゴロしている休み方は「精神医学的によいとはいえない」と西多さんは続けます。

 

「からだを休めているといっても、実はそれが本当に『休む』ことにつながっているとは言い切れません。寝っぱなし・座りっぱなし・太陽の光を浴びない――そうしたなかば引きこもりともいえる状態は、精神医学的に言っても気分を後ろ向きにし、10の疲れを100の疲れに増幅させてしまいかねないのです」。

 

休みの日は「休息・外出・仕事」の時間をしっかりと区切る

では休みの日を、私たちはどのように"計画"を立てて過ごせばよいのでしょうか?

 

「まず、1日を2分割ないしは3分割に区切って計画すること。計画的に区切った時間をしっかりと守ることが、休む技術には必須です」。

 

どうしても休日にこなさなければならない仕事がある場合、例えば「午前/午後」の2分割にして、仕事のことを考えるのは午前中のみ。午後は仕事のことはいっさい忘れて、休息するなり外出するなりして楽しみます。このとき午後の時間は、仕事のメールなどもいっさいチェックしてはいけません。

 

「『午前/午後/夜』と3分割で区切った場合、午前は休息、午後は外出、夜は仕事――と計画してもOKです。その際は、20代の若者、特に男性は夜型傾向といわれていますので、あまり朝の時間に無理なタスクを課さないほうがよいでしょう」。

 

気を付けなければいけないのは「夜に仕事をして、そのまま朝までやってしまうこと」と、西多さん。夜、仕事をしてみたら、思っていた以上に捗ってついつい朝までやってしまった……なんてこと、あなたは経験ありませんか?

 

「注意していただきたいのは『今は若いからできている』という点です。特に20代は、夜型傾向であるのに加え、1日に活動できる量が多いので、誰にでも"夜更かし力"があると考えられます。そうした生活リズムの乱れは、社会的な問題になっている『うつ病』にもつながっていきます。体調不良・気分不良といった"社会的時差ぼけ"を引き起こし、平日の仕事にも悪影響を及ぼすことも。徹夜を続けていると、やがて精神的な疲れが一気に襲いかかるかも、と自覚したほうがよいでしょう」。

 

平日は1日の中にスキマ時間を上手につくる

一方で、平日(業務時間)の過ごし方はどうすればよいのでしょうか?

 

「スキマ時間を上手に使いましょう。デスクワークが多い仕事だと、ずっと座りっぱなしで仕事をしがちになります。同じ体勢が続くと生活習慣病などになりやすいのはもちろんですが、さらには気分的な部分、そして業務効率にも影響が及びます。1時間おきに、数分程度でもよいので離席し、特段用事がなくても会社の中を出歩いてみるなど、集中時間から離れるオフの時間(スキマ時間)をつくるとよいでしょう」。

 

さらに、「有給休暇も上手に使ってほしい」と西多さん。

 

「時短ハラスメントもそうですが、会社都合で付与された休みは得てして喜びを感じられないものです。自分で自由に選択できる休みは、積極的に計画を立てやすい。それぞれの職場環境や担当案件によって簡単に取得できない場合もあるかもしれませんが、『自分で休みをつくれる』状況をいかにつくるか、ということも意外と重要になると思いますよ」。

 

今回、西多さんに教えてもらった「休む技術」は以下の通りです。

 

・静的な休み、動的な休みを使い分ける

・休日は、1日を2分割、3分割で区切りメリハリをつける

・平日の業務時間中はスキマ時間をつくる

・自ら選択できる「休日」をつくる

 

どれも今日から実践できそうなものばかり。仕事の生産性を上げるには、こうした休む技術を磨くことも大切。気づいたら一日中、仕事のことしか考えていないという人は、ぜひ試してみてくださいね。オンとオフをしっかり切り分けるだけで心身ともにストレスが軽減し、仕事への集中スイッチが入りやすくなるかもしれません。

 

(取材・文:安田博勇/編集:東京通信社)

 

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識者プロフィール
西多昌規(にしだ・まさき)

西多昌規(にしだ・まさき)
1970年石川県生まれ。東京医科歯科大学卒業。東京医科歯科大学精神行動科学分野助教、自治医科大学精神医学教室講師、ハーバード大学医学部やスタンフォード大学医学部での研究留学などを経て、2017年より早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授をつとめる。精神科医・医学博士。著書に『「テンパらない」技術』(PHP文庫)、『「疲れない!」技術』(ソフトバンク文庫)など。本稿の関連書に『休む技術』(大和書房 )がある
オフィシャルウェブサイト:http://masakinishida.com