近年、転職市場において人材採用時に「オンライン面接」を導入する企業が徐々に増えています。自分のプライベート空間と面接会場をリモートでつなぐこの方式は、求職者にとって「わざわざ会場にいかなくてもいいから便利」「移動時間が省ける分、ほかの面接が調整しやすい」「地方在住でも都心の企業の面接が受けられる」などメリットばかりのように感じるかもしれません。

 

しかし、DODAキャリアアドバイザーの江口遼さんは、「移動などの手間や負担がかからない分、思わぬ失敗をすることも」と注意喚起します。今回は転職サポートのプロである江口さんに、オンライン面接を受ける際のポイントをご指南いただきました。

 

採用企業側にもメリット! 第一関門をオンラインで

各企業で徐々にリモートワークが受け入れられるようになってきましたが、採用面接でもパソコンやタブレットを利用した「オンライン面接」が導入されるようになってきました。これまでの採用面接は「遠方の場合、転職希望者に平日の有休を使って来てもらわなくてはならない」「仕事の合間や早上がりなど、時間調整をしてもらう」というのが通例でした。ところがオンライン面接により、地域に関係なく幅広い人材が募集できるようになったため、企業にとって、効率的に優秀な人材の確保がしやすくなっています。

導入企業の多くは、転職希望者にとって第一関門となる「一次面接」の手段として、オンライン面接を取り入れているようです。

 

転職希望者にとってもまた、働きながらスキマ時間を活用して転職活動ができるため、大きなメリットがあるように感じられますよね。また、家族、友人、恋人との会話など、ビデオチャットはふだんから慣れ親しんだツールでもあるため、「対面での面接や集団面接よりも緊張しなくて済みそう」「わざわざ面接会場まで赴かなくてもいいからいいことだらけ」なんて前向きなことだけを考えてしまいそうですが……。

 

「そうした考えは禁物です」。

 

そう話すのは、DODAキャリアアドバイザーの江口遼さん。キャリアアドバイザーとは、今のキャリアに対して迷い・不安のある方が、自分らしいキャリアを歩めるようなるためのカウンセリングを行い、希望に見合った求人の紹介から、応募書類の書き方や面接のアドバイス、さらには面接日程の調整まで、一人ひとりのスキルや可能性を見いだし、転職の成功まで1対1で寄り添いサポートする"転職サポートのプロ"たちです。

DODAキャリアアドバイザー歴8年、ベテランの江口さんは「オンライン面接を甘く考えてはいけない」と注意を促します。

 

「たしかに、20代はSkype、Googleハングアウト、チャットワークなどオンラインチャットツールの取り扱いに慣れている人が比較的多いかもしれません。事実、採用企業側から指定されるオンラインシステムを導入すること自体に大きな問題はありませんが、これはあくまで採用面接。気を抜いていると、思わぬ落とし穴にはまってしまいます」。

 

意外な落とし穴! 緊張感を持って挑もう

江口さんはいくつかのポイントを挙げながら、オンライン面接の「落とし穴」について解説します。

 

「面接官がもっとも重要視するのが、転職希望者が面接に臨む際の"スタンス"。しかしオンライン面接は転職希望者が緊張感を持ちにくく、それが面接官に伝わってしまうことが最大のデメリットです。現地での面接であれば、相手先までの道順を調べて、電車に乗ってその企業に赴き、受付に行って……と一連のプロセスがあるのでおのずとスイッチが入りますが、オンライン面接はそれらのプロセスが一切ありません。面接会場に行かないことで、どうしても気持ちが緩くなりがちになってしまうのです。緊張せずリラックスして面接に臨みやすいのはメリットである一方、緊張感がなさすぎると『働いているときの自分』を面接で見せることができなくなってしまいます。

 

また、オンライン面接では自宅など自分のプライベート空間が面接会場になるため、さらに気が緩みがちに。『カメラに映らないから』と、上だけジャケット、下はジャージで挑む人もいるようです(笑)。まあそういう方は少ないにしても、そうした気の緩みは必ず面接官に見透かされてしまうもの。オンラインであっても、部屋の掃除や服装などには十分に気をつけましょう」。

 

なかには、通信環境がより整っているネットカフェ、漫画喫茶などを選ぶ人もいるようですが……。

 

「ネットカフェ、漫画喫茶のようなオープンスペースはオススメできません。面接本番中、近くにいる人から『うるさいので静かにしてほしい』なんて言われたら身もふたもありませんし、面接は一定のプライバシーにかかわる内容を話す場なので、情報が漏れてしまう。他にも会社の会議室を使わせてもらうケースなどがありますが、いずれにしても第三者(家族や上司など)が入ってこないよう、完全なプライベート空間をつくるようにしましょう」。

 

注意点――不測の通信トラブル&相手から見た自分の印象

オンライン面接では通信回線を使うため、あらゆる不測の事態が起こりえます。お互いの通信環境の問題はもとより、相手から指定された「聞いたこともないツール」を使うことで利用する前に手こずることも……。

 

「『相手の声が聞こえない』『音声が遅れて伝わる』『解像度が低くてこちらの動作が伝わらない』『映像がフリーズする』等々、面接本番中に不測の事態が起こると、緊張感の薄さも相まって動揺してしまう方が多くいます。そうした事態を避けるべく、技術的な面の対策ポイントとなるのが以下の3つです」。

 

●指定されたツールは、あらかじめ(できれば数日前に)インストールしておく。

●本番で使用するパソコンを使い、実際にそのツールを使ってみる。

●パソコンは無線回線だとトラブルが起こりやすいため、より確実な有線回線でつなぐ。

 

「準備段階で指定されたツールが使えないなどの事態が起こったときは、事前に採用窓口へ相談することができます。そうすれば先方も別の手段などで対応してくれますよね。しかし本番まで確認もせず、直前になってうまく作動せずにモタモタしてしまうと、相手に与える印象はダウン。マイナスからのスタートになってしまいます」。

 

さらに江口さんは「オンラインならでは」の注意点として、次の点を指摘します。

 

「友達同士の動画チャットなどではそれほど気にならないかもしれませんが、パソコンを使うにしてもスマホを使うにしても、相手の顔が映っている『画面』を見ながら話をすると、目線がずれてしまうんです。特にスマホを使用したときにありがちなのが、上から目線になってしまうこと。レンズの位置を自分の顔よりも『下』にすると、おのずと相手から見れば『上から目線』です。相手から見えている姿が自分からはわからないオンライン面接ではそれを意識することがとても大事なんです」

 

対面での面接と、映像・音声で伝える面接では相手からの印象もだいぶ異なるようですね。江口さんは「(オンライン面接時には)うなずきやあいづちはいつもより少し大きめにしたほうがいいですし、レスポンスも少し多めのほうがよい」とのアドバイスもしてくれました。

 

オンライン面接が不慣れな方に「起こりがち」なパターンとして、「パソコンのまわりにアピール用に付箋のメモ書きを貼っておき、見ながら話すために目線が相手からずれてしまう」「ハキハキしゃべっていたつもりがマイクで拾った声が大きく、相手からすると『うるさい』と感じる」なんてこともあるのだとか。

 

「オンライン面接が決まった際は、友達同士で実際のツール・通信環境のもと、模擬的なオンライン面接をしてみるのもよいかもしれません」。

 

逆質問では、そこで働く姿をイメージできる情報を聞くのがベター

さらなる注意点として、「オンライン面接を活用している企業側も、都度こと細かに説明してくれないことが多い」と江口さんは言います。

 

「オンライン面接は、対面の面接よりも得られる情報が少ないんです。特に地方にいて相手企業のことがイマイチわからない場合は、冒頭に申し上げた通り『実際にそこ(相手企業)へ行ってわかるリアルな情報』がすっぽりと抜け落ちてしまう。

そのため、働くイメージがつかみにくいという側面は実際にあるかもしれません。面接本番ではそのことをしっかり自覚したうえで、社風などのざっくりとした質問ではなく『自分がその会社に入ったときにどういう人生を歩むことができるのか』など、イメージを深掘りするような質問をするよう心がけたほうがよいでしょう」。

 

日々忙しくしている転職希望者にとって、移動や時間のコストを削減してくれるオンライン面接は、今後もうまく取り入れたいもの。都心、地方、海外、どんな場所でもあなたの可能性を大きく広げてくれる手段の一つになることでしょう。

 

(取材・文:安田博勇/編集:東京通信社)

 

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識者プロフィール
江口 遼(えぐち・りょう)

江口 遼(えぐち・りょう)
国家資格キャリアコンサルタント、米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
キャリアアドバイザー歴は8年。ITベンチャーを中心とした採用コンサルティング、ITエンジニア担当の転職サポート、事業企画、新規事業開発、マーケティングなど多岐にわたる業務を経験。現在は管理部門専任のキャリアアドバイザーとして、転職を希望される方々をサポートしています。「会計」「企業経営」に関わるキャリア提案を得意としており、これまでに延べ約3,000人の方のキャリアカウンセリングを実施。
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