きっと一度はあなたも遊んだことがある「LINE GAME」。まるで友達と遊んでいるような感覚になれるLINEならではの魅力で、大ヒット作を次々に生み出しています。

 

これだけたくさんの人に愛されるゲームを作っているのだから、その仕掛け人はさぞかしゲームに詳しいはず……と思いきや、その立ち上げに関わった奥井麻矢さん(30)は「当時、ほとんどゲーム経験がなかった」のだそう。なのになぜ、LINE GAMEの立ち上げに関わることになったのでしょうか?

 

社会人最初の数年間は、自分の肥やしになる仕事を

「LINE ポコパン」や「LINE ポコポコ」など、数々のヒット作にプロデューサーとして携わってきた奥井さん。しかし、奥井さん自身、自分がゲームプロデューサーになるとは思ってもいなかったそうです。

 

「就活の時点で、自分が何をしたいのかがはっきりとわかっていなかったんです。だから社会人になって最初の数年間は自分の肥やしになる経験をしたいと思って、まずはいろんな人に出会える営業職を希望しました。

 

就職したのは広告代理店の営業です。最初は人と競争したり、自分の評価が数字として見えたりすることがすごく楽しかったんですけど、だんだんそれに満足するようになってしまって。その上、広告代理店は自社が商品を持っているわけではないので、次第に自社サービスに愛着を持って、それがお客様に届くまでを見届けるような仕事がしたいという気持ちになっていきました」

 

社会人最初の数年間は、自分の肥やしになる仕事を

 

そうして奥井さんは、2012年にLINEの前身となるNHN JAPAN株式会社に転職。それからすぐ、LINE GAMEの立ち上げに関わることになります。

 

最初の頃に務めたのは議事録係。しかしその出来は…!?

「当時はゲームのことはまったく知らなかった」と笑いながら話す奥井さん。なぜ、立ち上げに関わることになったのでしょうか。

 

「社内でLINE GAMEの立ち上げに携わりたい人を広く募集していて、その時に社内で私を推薦してくれた人がいたんです。『何も知らない人が何の役に立つんだろう……』と最初は半信半疑でしたが、立ち上げリーダーと話してみると、『LINE GAMEは20代前半で、普段からスマホを使ってるけどゲームにはあまり関心がない、あなたのような人がターゲットなんだ』と言われました。もともとNHNはオンラインゲームサービスを開発・運営していたので、ゲームに詳しい人ばかりだったんですよね。反対に言えば、ゲームの素人は全然いない。説明を聞いて、その観点であれば役に立てるかも、と思って参加したんです。

 

とはいえ、苦労もたくさんありました。ゲームって専門用語がすごく多いんですよ。参加当初は議事録係をしていたのですが、会議では聞いたこともない言葉が飛び交っていて。しかも韓国の方と共同開発だったので、通訳を間に入れながらの話し合いを議事録にまとめないといけない。さらに、『LINEはゲームのプラットフォームとしてどういう機能を提供するべきか?』というような議題になると、知らない開発用語も連発されて……最初の頃は議事録の内容がぐちゃぐちゃでしたね(笑)」

 

そんな苦労もありながら、初心者ならではの目線でアイデアを出すことで、ゲームの制作へ携わった奥井さん。完成したLINE GAMEを見た時は「これは絶対にヒットする!」と思ったそうです。

 

「人をつなげるツールであるLINEらしいゲームにすることを大切に、意見を出していました。そうして生まれたのが、プレイするのに必要な“ハート”を交換したり、ランキングで競い合ったりするシステム。友達と一緒に遊んでいる感覚になれるのがゲーム経験のない私にも面白くて、きっと私と同じターゲットにも受け入れてもらえると感じました。やっぱり、サービスのターゲットとなる方々と自分自身の感じ方が自然にリンクしているほど、シンプルに良いサービス提供がしやすい。LINE GAMEはその価値を自分でも体感できたので、とてもやりがいがありました」

 

自分が手がけたゲームのキャラクターに、子どもたちが抱きつく光景

こうして、最初にリリースされたのが2012年の「LINE POP」をはじめとする5タイトルです。このリリースに裏方で携わった後、奥井さんはプロデューサーに挑戦します。

 

「プロデューサーはそのゲームタイトルの完全な責任者として、関係各所とコミュニケーションをとりながらゲームの方向性やプロモーションなどを決めていきます。私自身は、バランスを見た上での総合的な判断や、ユーザーとの目線合わせを得意としているタイプなのかなと思います。苦手なところは周りの意見に耳を傾けフラットに取り入れたり、時には判断を委ねて補ったりしています。

 

自分で戦略を立てながら進行していけるし、続々と届くユーザーの意見を取捨選択しながら、それをどう反映していくかみんなで考えるのがすごく楽しくて、こんなに面白い仕事があるのか!と思いました(笑)。もちろんうまくいかない時は苦しいですけど、やりがいのある仕事だと感じています」

 

奥井さんがプロデューサーになってはじめて手がけたのは「LINE ポコパン」というゲームでした。

 

自分が手がけたゲームのキャラクターに、子どもたちが抱きつく光景
奥井さんがはじめて手がけたゲーム「ポコパン」。ピンクのウサギがキャラクターのポコタ © Treenod, Inc. All rights reserved.

 

「制作現場にいると、周りの友人が遊んでいる状況やユーザーからの声以上の反応が案外わからないんですよね。特にポコパンがどんどん人気になっていく頃は、忙しすぎてあまり覚えてなくて……(笑)。

 

そんな頃、池袋のゲームセンターにポコパンのキャラクターのポコタがやってくるイベントがあったんです。偵察に行ってみたら、着ぐるみのポコタが登場するやいなや子どもたちが大勢ポコタに駆け寄って抱きついている。それを見ていた人たちも『ポコタじゃん!』と喜んでいて。生身のユーザーの反応を見るとやっぱり感動しますね」

 

自分が手がけたゲームのキャラクターに、子どもたちが抱きつく光景

 

自分で手がけた心からいいと思える商品が、お客さんに届くまでを見届けたい。そんな思いを抱き、新しい世界に飛び込んだ奥井さんの夢が現実になった瞬間でした。

 

20代に大切なのは、死ぬ気で頑張るような経験

現在はプロデューサーとしての業務に加え、副事業本部長としてLINE GAME全体の統括も行う奥井さん。目覚ましい活躍を見せる彼女に、これから挑戦したいことをうかがいました。

 

「仕事としては、LINE GAMEがきっかけになってゲームが楽しいと思ってくれる人を今以上に増やすこと、そして事業全体をどう展開していけばそうなるか考え、実行していくことでしょうか。

私個人としては……うーん(笑)。今までもそうなんですが、はっきりとした目標があって、そこに向かって努力するタイプではないんですよね。目の前にあることを頑張っていたらいつの間にか次のステップにいて、そこでまた頑張りながら機会があればまた次の場所へ行って……というほうが性に合っているんです。

なんでそこまで頑張れるの?と聞かれることもあるのですが、部活で一生懸命になって全国大会を目指している中学生と同じ感じで、理由があるというより、“夢中”や“がむしゃら”なのかなと思います。

 

この前、実家を片付けていたら小学生の頃の作文が出てきたんです。運動会について書いたもので、クラスのみんなは『この競技が楽しみ』みたいなことを書いている中、私ひとりだけ『短距離走は顔をあげてしっかり腕を振るようにしたい』とか、運動会でするべきことを箇条書きでひたすら書いていました。ストイックでかわいげがなく、自分でもこんな小学生が近くにいたら引くと思います(笑)。昔から“できない”ことへの悔しさが強くて、それが目の前のことをとにかく頑張る、という性格に結びついているのかもしれないですね」

 

奥井さんは自分の20代を振り返りながら、こうも語ります。

 

「当時は得意分野や進みたい方向がはっきりしていないと、軸がないようで不安を感じたこともあったように思います。でも今になって考えると、20代って長い社会人生活の本当に一番初めの部分でしかないんですよね。視野が狭い状態で将来を見定めるより、その時期には、何かに対して死ぬ気で頑張ってみるような経験が大切なのかもしれません。

 

私自身は、20代のうちに自分のキャパシティみたいなものを広げていこうと思って頑張ってきました。それ以降は20代で頑張ったことの延長線上で、より頭を使ったり、周りにサポートしてもらったりして広げていくイメージなんですね。だから、まずはやりたい分野かどうかにこだわらず、きた仕事に全力で取り組む経験をしておくと、今後チャンスがめぐってきた時に良い結果を出せる基礎体力がつくんじゃないかと思っています」

 

20代に大切なのは、死ぬ気で頑張るような経験

 

与えられた仕事を全力でやり遂げることで、常に前進してきた奥井さん。最初の頃は自分のやりたいことが見えていなかったと言いますが、それでも足を止めずに頑張り続けることで、「こんなに良い仕事なのか!」と思えるプロデューサーの仕事にめぐり逢いました。

 

仕事で失敗した時や、やりがいが見いだせない時、「本当にやりたいことってなんだろう?」と、私たちはつい立ち止まって考えてしまいます。でも、誰しも本当にやりたいことが見つかっているわけではないし、いま活躍している先輩たちも、最初からやりたいことが決まっていた人ばかりではないでしょう。全力で走ってみて、初めて見えてくる景色は必ずあります。そこには思ってもみなかったやりがいや、次のステップへのヒントがきっと隠れているはず。

 

長い社会人生活で20代はあっという間。やりたいことが見つからない人は、一度がむしゃらに目の前の仕事に取り組んでみると、新しい自分に出会えるかもしれませんね。

 

(取材・文:小沼理/編集・撮影:東京通信社/3枚目画像:株式会社LINEさまよりご提供)

 

(オススメ記事)
素通り禁止! LINEカラーでいっぱいなLINE株式会社の新オフィスをご紹介!
赤字、打ち切り寸前から大ヒット作品へ! 仕掛け人に聞く『キンプリ』逆転ストーリー
Rettyの熱き20代社員が語る! 仕事との向き合い方と、僕らが考える未来のグルメサービス

 

識者プロフィール

奥井麻矢(おくい・まや)
1987年生まれ。インターネット広告代理店に営業職として新卒入社した後、2011年、NHN Japan株式会社(現LINE株式会社)に転職。ハンゲームのアライアンス営業業務を経て、LINE GAMEの立ち上げに携わる。プロデューサーとして『LINE ポコパン』など多数のタイトルを手がけ、2017年1月、ゲーム事業1部の事業部長に就任。2018年2月、ゲーム事業本部副事業本部長に就任。

LINE株式会社
コミュニケーションアプリ「LINE」を機軸として、コミュニケーション・コンテンツ・エンターテイメントなどモバイルに特化した各種サービスの開発・運営・広告事業に加え、AI事業として、クラウドAIプラットフォーム「Clova」を展開。
https://linecorp.com/