職場での合理的配慮の具体例、合理的配慮を受ける方法を解説

握手をする車椅子利用者と上司

障害のある方であれば、「合理的配慮」という言葉を一度は目や耳にする機会があると思います。その意味をなんとなくはイメージできても、具体的にどのようなものであるか説明するのは難しい……という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、職場における合理的配慮についてその概要や定義をご説明しつつ、合理的配慮の具体例や配慮を受けるポイントなどをご紹介します。

合理的配慮とは

職場における合理的配慮とは、社会生活へ健常者の方と同様に参加できるよう、個々の障害特性や困りごとに合わせて提供される配慮のことです。障害者本人が無理なく仕事をしていくために、そして職場の方々もスムーズに仕事ができるように、サポート体制を整えたり、設備やツールを導入したりします。

合理的配慮の定義とは?

国連の「障害者権利条約」においては、合理的配慮は以下のように定義されています。

「『合理的配慮』とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」

合理的配慮の定義とは?

「『合理的配慮』とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」

合理的配慮の法的背景

日本国内では、2013年に改正され2016年に施行された「障害者雇用促進法」の中で、合理的配慮の提供が義務化されました。
具体的にどんな配慮がどの程度で必要かは明確には定められてはいませんが、社会的障壁の除去について障害者から意思を表明された場合には、両者相談の上、過重な負担にならない範囲で必要に応じて合理的な配慮をすることが推奨されています。

職場での合理的配慮の具体例

合理的配慮が行われるのは、おもに学校や職場です。ここでは、職場を例に挙げ、実施されている合理的配慮の具体的な事例をご紹介します。

オフィス内外の職場環境の改善

スロープを上がる車椅子利用者

オフィスで仕事をする際に、障害による困りごとが起きないよう、物理的な環境調整を実施することです。具体的な例は以下のとおりです。

  • デスクの高さ調整
  • 暗い場所へのランプの設置
  • 座席位置の変更・配慮
  • 多目的トイレやエレベーター、スライドドアの設置
  • 段差部分へのスロープの設置 など

デスクまわりの設備の改善・設置

パソコンや書類を見るときに役立つ設備やツールを設置したり、これまで以上に改善を図ったりするものです。具体的な例は以下のとおりです。

  • 文字起こしツールの整備
  • 筆談や手話の導入
  • 視覚障害のある方のための支援ツール(拡大文字や読み上げソフトなど)の導入 など

業務遂行の支援

職務・業務内容そのものを調整し、支援を行うものです。具体的な例は以下のとおりです。

  • 時間管理用ツールの提供
  • 業務指示方法の工夫(具体的で正確な指示、イラストによる図解、手順のリスト化など)
  • 休憩スペースの設置
  • 休憩時間の柔軟な調整 など

はたらき方の柔軟化

勤務時間や通勤時間について調整を行い、よりはたらき方を柔軟化させることも大切です。はたらき方の調整についての具体的な例は以下のとおりです。

  • 短時間勤務
  • フレキシブルな勤務時間(フレックス出勤など)
  • テレワーク/リモートワークの導入 など

合理的配慮の提供を受けるためには

障害のある方がはたらく上で合理的配慮が必要だと感じた場合、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、職場において合理的配慮の提供を受けるために取り組みたいことをご紹介します。

自分のニーズを明確にする

まず、自分の障害とはたらき方について、ご自身で理解する必要があるでしょう。業務においてどのような困りごとがあり、それを解決・低減するために何が必要かを明らかにします。困りごとを書き出すなどしてリストアップし、その1つ1つの項目に対して「何をもって解決・低減が可能か」を提示しましょう。その上で書き出した項目に優先順位を付け、順位の高いものを提案候補にするなどの方法で、ご自身のニーズを絞り込みます。

職場とのコミュニケーション

ご自身のニーズがまとまったら、まずは上司や同僚など同じ職場の人たちにそれらを共有します。ご自身と周囲の人とでは「合理的配慮」に関して解釈に齟齬がある場合もあり、それをいったんすり合わせておかなければなりません。
対話と調整を根気よく行って認識のすり合わせが行えたら、上司を介するなどして人事部門に要望を伝達しましょう。

合理的配慮の要求が通らなかった場合の対処法

もし、職場の人事部門などに合理的配慮の要望を伝えても、一度ではそれが通らなかったとします。そのような場合、どのように対処を行う必要があるのでしょうか。

再度の対話を試みる

合理的配慮について要望を提出しても、一度では要求が通らなかったとします。要求が通らなかった場合でも、再度説明を試みることが重要です。なぜなら、1回目の要望の内容や伝え方ではそのニーズや要求が十分に理解してもらえない場合があるためです。一度で諦めてしまわず、再度対話を試みてみましょう。より詳細な要件を抽出し、それらを説明することで、先方の理解を得るよう努めます。

外部の支援を求める

外部の専門家・専門機関に相談してみることも、一案となり得ます。例えば、職場の労働組合や労働局、支援機関、弁護士などが挙げられるでしょう。第三者である外部関係者にはたらきかけることで、サポートが得られる場合があります。特に、法的な観点からのアドバイスが必要な場合には、このルートで支援を受けられるかどうか模索してみると良いのではないでしょうか。

転職を考える

ご自身のニーズをどれだけまとめて提案しても、要求に沿った措置を行ってもらえないことも考えられます。配慮を得られないままの職場環境ではたらき続けることは、心身にとって大きなストレスとなります。そのような状況で仕事を続けるよりは、新たな職場を探すことを考慮するべきかもしれません。
思い切って、必要な配慮を受けられる職場への転職を試みることも一つのアイディアといえます。しかし、一般の転職情報を探しても、ご自身の障害に対する配慮の度合いは推し量りにくいものです。そこでおすすめなのが、障害者向けの転職支援サービスを利用して転職活動をすることです。

合理的配慮が提供される職場に転職するためには

スタートからゴールまでのステップ

合理的配慮を提供してもらえる職場への転職を考える場合、どのような手順で転職活動を行えば良いのでしょうか。ここでは、合理的配慮の提供を受けられる職場へ転職する際の転職活動についてご紹介します。

企業の障害者対策を調査する

まずは、さまざまな企業について障害者への対応状況を確認してみましょう。企業のWebサイトや口コミ、情報提供サービスなどを通じて、各企業における障害者対策の具体的な取り組みを調査してみてください。
しかしそうはいっても、詳細な実態を自分で調べることは難しいと思われます。そのような場合、障害者向けの転職支援サービスなど障害者の雇用を熟知したプロの知識を借りることが有用です。

面接での合理的配慮の確認

転職活動において、最初にご自身の状況や要望をはっきり伝えられる場といえば面接です。ご自身のニーズをまとめておき、面接時にそれを伝え、企業側の合理的配慮の有無や状況について確認してみる方法もあるでしょう。

転職支援サービスの活用

これまで挙げた2つの手順には、自分一人だけで実行するのが難しいという側面もあります。先にも触れていますが、その難しい部分をカバーしてくれる存在が、障害者向け転職支援サービスです。
パーソルダイバースが運営するdodaチャレンジも、障害者向け転職支援サービスの1つ。障害者手帳をお持ちの方・申請中の方を対象としています。
一般には公開されない「非公開求人」を中心に、ご自身の障害やそれに見合った配慮などを考慮した職場の紹介のほか、書類作成支援や面接対策が受けられるなどのメリットもあります。無料で相談できますので、ぜひ活用を検討してみてください。

まとめ:必要な合理的配慮を受け、はたらきやすい環境を手に入れよう

合理的配慮は、障害がある方が無理なく仕事をしていくために必要なものです。合理的配慮の提供を受けるためには、単なる「わがまま」として捉えられることのないよう、ご自身のニーズやどのように困っているのかをていねいに職場に伝えて協議を重ねるなどの取り組みが必要です。
しかし、要求がうまく通らず、転職を検討する場合もあるでしょう。そのようなときは、転職支援サービスを活用するのも1つの手です。自分一人では難しい転職活動も、障害者の転職事情をよく知っているプロのキャリアアドバイザーの助言を得ながら進めていくことができるでしょう。
職場選びで困ったら、ぜひdodaチャレンジまでお気軽にご相談ください。

公開日:2023/7/6

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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