HOME  >  チャレンジャー  >  香山 リカ

チャレンジャー

転職支援サービスに申し込む

香山 リカ

香山リカ  失敗も成功も、偶然の出来事

香山リカ
1960年生まれ。東京医科大学 医学部卒業後、精神科医に。現在は、立教大学 現代心理学部の教授を務める傍ら、現代人の心の問題をはじめ、政治・社会・文化の批評など、幅広いジャンルで活躍している。著書に『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)、『勝間さん、努力で幸せになれますか』(朝日新聞出版)など。

可もなく、不可もなく。そんな人生がコンプレックスだった。

香山さん
京谷
はじめまして。今日はよろしくお願いします。香山さんは札幌ご出身なんですよね。ぼくは北海道の室蘭なんです。
香山
ああ、そうなんですか。こちらこそ、よろしくお願いします。
京谷
香山さんの本、読ませていただきました。その中に、医学部で唯一、適応できそうな精神科を選んで、それで精神科医になったとありましたけど、元々、人の精神とかには興味があったんですか?
香山
いや、まったくなくて。私、自分はあんまり人間好きだと思ってなくて、はっきり言えば人間嫌いだと思ってて……。高校生のころは、なるべく生き物から遠い、石とか星とか海とかを研究したいと思ってました。それで理学部を受験したんですけど、不合格で。当時は男女雇用機会均等法とかもなくて、理系で浪人の私の働き口は皆無とか言われる時代だったので、親からは手に職を就けろって言われました。理系で手に職っていうと医療関係に絞られるから、人間嫌いの私は嫌だって言ったんですけど、一浪以上はやらせないって言われて。それで医学部に行くことになりました。外科とか内科とかに実習に行くんですけどね、手先が不器用で手術ができないっていうこと以上に、そこの医師たちがとってもまぶしすぎちゃって、ついていけなくて。でも精神科に行ったら、そうでもなかったんです。ちょっと変わってるっていうか。これなら私も溶け込めるって思っちゃったんですよね(笑)。
京谷
なるほど(笑)。でも精神科って医療の中で一番難しい分野だと思うんですよね。あいまいな部分も多いと思いますし、患者さんそれぞれに向き合い方も違うだろうし。精神科医として、またはそれ以外でも、これまでの人生で最もつらかったことって何ですか?
香山
私ね、ほんとに、金太郎飴みたいに平凡で、すごく良いこともないけど、ひどいこともない、みたいな人生なんですよ。それはずっとコンプレックスで。ものすごく不謹慎だけど、つらいことを乗り越えた経験がある人とか、ちょっとうらやましいっていうか。そのぐらい何もない人生。でももう50歳なので、50年も平凡な人生が続くっていうのも、天然記念物じゃないけど、それはそれで珍しくていいかなって開き直ってますけどね(笑)。ただ、精神科医として一番つらい、非常にシビアなのは、患者さんが自殺してしまうことですね。医療の仕事をしていれば誰でもそういうことがあるんだから仕方ないって言い聞かせてる自分と、医師としてもっとこういう風に援助してれば救えたんじゃないかと思う自分と……。
京谷さん
京谷
それはつらいですね。仕方がないことだと分かってはいても。こういうことを乗り越える時もそうですけど、いろいろな物事を決断する時の判断軸は何ですか?
香山
それも全然なくて。その時の気分ですね。筋が通ってない人間っていうか。これもずっとコンプレックスです。ただ、世の中には強くて立派な人ばかりじゃなく、いろんな人がいる。精神科医をしてて一番思うのは、人間ってほんとに予期せぬ出来事の連続で人生が成り立ってるっていうことですね。患者さんが病気になった理由なんて何もないんです。偶然としか言いようがなくて。後づけで考えると、家族関係とか職場のストレスとかいろいろありますけど。でも同じ家族の中にいても元気な人もいるわけだから、これはもうある種の偶然っていうか。人間生きてれば一定の確率で病気にもなるし、事故にも遭うしね、いろんなことあるよなっていう感じがするんですよ。
 
そういう意味ではね、健康な人とか稼いでる人は、たまたま今うまくいってるだけであって、それがいつまで続くかも分かんないし、その人たちが努力したとか、偉いとかでもなくて、そういう条件がたまたま整ってただけのようにも思うんですよね。だから、いわゆる強い人とか勝ち組と言われてる人たちだけがいい思いをしたり、いかにも努力を積み重ねてきましたみたいな言い方する人に対しては、すごくむかつくんですよね(笑)。同じようなことしてきたのに、家族が病気になっちゃって努力を途中で断念する人とかね、そういう人もたくさんいるわけですよ。だから私自身は可もなく不可もなくみたいな人生できたけど、それを努力の賜物だとかそんな風に思わずにいたい。何か決断する時は、自分だけがいい目に遭うとか、そんな風にはならないようにしたいなっていうのはありますね。

転職お役立ち情報