【座談会】重度視覚障がい者が語る転職成功のポイント

視覚障がい者だからこその転職や就職の不安。「面接で工夫したことは?」「新しい職場にすぐ慣れた?」「職場で一番、困っていることは?」など、お二人の転職成功者にホンネで語ってもらいました!

座談会参加者プロフィール

■転職成功者

・KYさん 30代男性
・MYさん 20代男性

■オブザーバー

・北神様

特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク SPAN

・坂田様

社会福祉法人 日本盲人職能開発センター

・石川様

社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会 東京視覚障害者生活支援センター

■転職活動中・検討中の皆さん

・TKさん 40代男性
・SYさん 20代女性
・CKさん 30代男性
・TNさん 40代男性

MYさんの就職活動について

――まずは、MYさんの就職活動についてお聞かせください。

2年前、大学を卒業しました。卒業後は、パソコンの勉強をするために職業能力開発校に通学しました。就職しなかった理由は、就職できなかったからです。大学4年生のとき、200社の企業に、視覚障がい者の採用枠があるかどうか、電話しました。「できることは何か?」とよく聞かれました。しかし、私は、視覚障がいのある自分にできることを企業に伝えることができなかったのです。
そのため、パソコンの勉強をしようと思い、職業能力開発校に通うことにしたんです。半年間は勉強に専念し、昨年就活を再開しました。

――再開した就活はどのように活動したのですか?

就活のプロであるdodaチャレンジを通じて活動しました。dodaチャレンジを選んだ理由は2つあります。1つは、キャリアアドバイザーの方が熱心に支援してくれること、2つ目は、自分にあった求人があるとすぐ紹介をしてくれるからです。

――どのような希望条件で求人を探しましたか?

30歳、40歳になっても、自分の仕事の幅を広げられる企業を探しました。

――なぜ、そう思われたのですか?

大学4年生での就活で、悔しい思いをしたからです。その時、「できることを増やそう」と思いました。長期的に、自分を成長させられる企業に就職する、これが私の条件でした。

――今は、どんな仕事をしていますか?

障がい者の採用業務と障がい者採用枠の社員管理をしています。採用業務では、就職イベントの対応、面接前と面接後の連絡対応をしています。連絡手段は電話とメールです。社員管理では、社内理解の促進と研修などを行っています。

――働いてみて気づいたことはありますか?

作成した資料の見栄えまで気を付けるようにしています。ほかの社員には見えているので、見栄えの悪い資料ではいけません。見栄えのチェックは目の見える社員にお願いしています。

――仕事をして、一番困っていることは何ですか?

会社が導入しているクラウド型のシステムがあるのですが、それを音声読み上げソフトに読み込ませるのが大変です。あと、マニュアルがPDFだったので、自分でテキストにしたりしました。

――仕事で失敗した経験は?

文字の変換ミスですね。志と望むの「志望」と変換すべきところを別の漢字に変換してしまいました。あえて言いませんが、お察しください(笑)。場合によっては、見える方に最終チェックをお願いしています。

――紙の資料の読み込みはどうしていますか?

見える方にお願いしています。ほかの社員が資料を読んでいるタイミングで、教えてもらうよう依頼しています。

――ほかの方はいかがですか?

(KYさん)当社は紙の資料はあまりありませんが、スキャナーで読み込むことはあります。しかし、7割程度しか読み込まないので、結果的に、見える方に見てもらっていますね。

(TKさん)私の職場は障がい者が多いNPO法人だったので、見える方に見てもらうことに抵抗はなかったですね。

KYさんの転職活動について

――次にKYさんのお話です。ご経歴と前職をお聞かせください。

私は、大学での就活で苦労し、パソコンのスキルを身に付けるため3ヶ月間、勉強しました。その後、契約社員で就職し、採用業務を7年間勤めました。

――転職を考えたのはなぜですか?

最初の職場では、雇用形態が正社員に切り替わる可能性も低いこともあり、転職活動をやってみようと思いました。キャリアアドバイザーの方とお話したら、とても丁寧に支援してくれる印象があったので、転職を前向きに考えるようになりました。

――現職中の活動で大変でしたか?

仕事と転職活動の両立ができたのは、dodaチャレンジのサポートがあったからです。

――転職の報告したときの、周りの反応はいかがでしたか?

とても応援してくれました。転職先で困らないようにと、私の「取扱い説明書」を作成してくれたんです。

――KYさんの取扱い説明書とはどんなものですか?

私の得意な業務は何か?あまり得意ではないことは何か?とか、食べ物の好みは?まであって、面白おかしく私についての情報をまとめた10ページの冊子を作ってくれました。壮行会で、これを次の職場に渡してね、と10部もくれました。その取扱い説明書のおかげで、転職先では、私のことをスムーズに理解してもらえました。

――転職先は、部品の商社でしたね。仕事内容をお聞かせください。

人事労務室で社宅関連の業務を担当しています。毎月50人ほどの社員が入社し、10~15人ほどの社員が社宅対象者です。入社者だけでなく、異動者、退職者の社宅契約対応も行っています。

――前職は採用業務でしたが、戸惑いはありますか?

新しい業務に挑戦させてもらっていると感じています。こういう環境も前職と違いますね。

――そのほかにも違いはありますか?

大きくは2点の違いがあります。一つ目は、組織体制です。前職は、リーダーがいて、メンバーがいて、複数からなるチームで仕事をしていました。今は、社宅に関する業務は、私一人で完遂する担当制です。二つ目は、システム・ドキュメントに関する違いです。前職は、昔ながらの日本企業。現職は、新しい技術、新しく良いものをどんどん導入する環境。使ったことがないツールもありましたが、慣れたら効率が良いです。

――環境の違いで困ったことはありましたか?

音声環境は、前職の方が整っていました。今の職場のものは、初めて使うシステムなので、使いこなせるようになるまではエネルギーが必要でした。

――転職先で工夫したことを教えてください。

まず、自分の「人となり」を周りの方に知ってもらうことです。前職からもらった「KY取扱い説明書」はとても役に立ちました。

――そのほかに工夫したことはありますか?

他の社員がどんな仕事をしているか、理解しようと努力しました。自分から周りを理解しようとする姿勢が、結果的に、相手の社員も私を知ろうとしてくれるので、良好な関係を早く築けました。

――できることを、自分を知ってもらうことの大事さは、KYさん、MYさん、共通していますね。

(KYさん・MYさん)はい、そうですね。

お二人の転職成功の秘訣とは――?

――さて、ここからは、転職活動中の皆さんからKYさん、MYさんお二人にお聞きしていきます。

(KYさん・MYさん)はい。

――(CKさん)面接でのアピールで工夫したことを教えてください。

(KYさん)履歴書、職務経歴書に、「できること」をきちんと書くことを大事にしました。どうしても面接で言い忘れてしまうこともありますよね。面接官も、後から読み返してくれることもあるので、「できること」を文章に残しておくことは大事だと思います。

(MYさん)事前にインターネットで「よくある質問例」を調べて、面接のロールプレイングをしていました。ひとり言のように、ぶつぶつ言葉にしていました。実際に話して練習しているので、本番の面接ではドギマギしませんでした。

――(SYさん)前職では人間関係に戸惑いがありました。周りの方に自分の障がいを理解してもらう、認めてもらうための工夫を教えてください。

(KYさん)私は、雑談、たわいのない話をしてお互いを理解することを心がけました。たとえば、一緒にランチしたりしていました。自分から声をかけて繋がりを持つことを大切にしましたね。「そんなに身構えなくていいよ」と伝えることもしました。そうしていくうちに打ち解けていきますよね。同僚も、視覚障がいがあることを忘れて、アイコンタクトしてきたり。「あ、ごめん、KYさん、見えなかったね」とお互い、笑ってしまうこともよくあります。

(MYさん)仕事においては、「私にできること」をやるのではなく、目の見える方の仕事から引き算で考えることを大事にしています。同じ業務をベースにして、目が見えないことでできないことを引き算していく考え方です。たとえば、イベント会場の設営で実際にあったことです。周りの社員は、私に設営はできないだろうと思って手伝おうとしてくれたのですが、私はできるんです。会場を理解して、イスや机を並べたりすることはできます。「私にできること」を足し算ではなく、目に見える社員と同等の仕事から引き算していくやり方で、自分の成長につなげたいと考えています。
あと、もう一つ。私は、自分の視覚障がいを気に入っています。見えていないからこそ、面白い出来事があるし、たくさん笑うようにしています。これも周りの人に自分を理解し、認めてもらうことにつながっていますね。

――周りの方の接し方、態度はいかがですか?

(KYさん)前職のことです。最初は、「目が見えない社員がきた」という反応でした。同じチームのメンバーは、事前に聞いていたようですが、他の部署の社員たちは、戸惑っているのが分かりました。社内で視覚障がいの勉強会を開いてもらい、これがきっかけで周りの社員の理解が進みました。

(MYさん)私の部署は、体育会系のノリ。肩を組んで「よし、行くぞ」といった雰囲気です。たまに、後ろから、急に肩を組まれることもあり、びっくりします。しかし、周りがそれを見て、「そんな感じでいいんだ」と構えがなくなるみたいです。私は、他部署にも知り合いが多いのですが、実は困っていることがあります。笑い話のようですが、名前が分からないということ。最初、お互い名乗って挨拶はしていますが、そこで覚えないと、後になって今さら聞けないというわけです。名札を見て名前を確認することができないので、最初に覚えることが肝心ですね。

――(TNさん)音声読み上げソフトがうまく作動しないときの対処を聞かせてください。

(MYさん)再起動できる場合は再起動します。それもできないときはPCをシャットダウンするしかありません。週に何度かありますよね。

(KYさん)作業中のデータを保存しておきたいときは、見える方の力を借りています。そこまで保存しなくても良い場合は、シャットダウンさせます。

――(TKさん)仕事の流れができるまでどれくらい時間がかかりますか?

(KYさん)前職は半年くらいでしょうか。今の職場は、退職者の後任の仕事でしたので、1ヶ月の引継ぎ期間で、できること、できないことを整理していきました。そして、上司に報告しました。

(MYさん)私は社会人としてまだ半年なので、ミスや間違いのない仕事を重視しています。資料作成や電話対応は時間をかけて行い、まず、一人で完結し、上司には最終の見栄えチェックをしてもらっています。PCのマニュアルをしっかり読み込むことを心がけています。理解することで、効率が上がります。

――オブザーバーの方から、メッセージをお願いします。

(石川様)お話を伺って、お二人自身の対応で、視覚障がい者の働き方のハードルを下げていると感じました。お二人が構えすぎないからこそ、周りの社員の構えが緩み、ハードルが下がっている。これは、ぜひ就活中の方に伝えたいと思います。

(北神様)自分自身を障がい者扱いするのではなく、構えすぎず振舞っていると、周りも目が見える社員と同じように接してくれるものですよね。もしかしたら、障がいがある人の方が、垣根をつくってしまって、結果、働きにくくしていることもあると思いました。

(坂田様)視覚障がいがある方が、就労後に継続して働くために必要なサービスも考えていきたいと思います。

最後に

これまでの活動から、企業側に対する啓蒙の重要性を実感してきました。視覚障がいの方は何ができるのかを知らない企業がほとんどですし、音声読み上げソフトって何?というところから知っていただくこともあります。私たちdodaチャレンジの役目は、「視覚障がいがあっても、できること」を企業側にしっかり伝えることだと考えています。たとえば、デモ、動画で伝えるなどの工夫にも取り組んでいきます。
お二人の転職成功者の貴重なお話を伺って、今後の支援サービスの拡充にもつなげてまいります。ありがとうございました。

まとめ

・視覚障がい者の転職活動において「自分にできることを知ること」、それを「応募先の企業に伝えること」がとても重要。

・音声読み上げソフトのエラーや、紙の資料、新しいシステム導入時に起こる困難への対応は、遠慮せずに周囲の助けを得よう。そのために、お互いの信頼構築、環境づくりが大切。

・働きやすい環境づくりのポイントは、自分自身が視覚障がいがあることに「構えず」、「人となり」を周囲に理解してもらうこと。