30秒の動画で
サービス業の生産性を激変させる
ClipLine株式会社
「日本のGDPの7割以上を占めるサービス業において、生産性を向上させる」をミッションに掲げる。外食チェーンや小売店をはじめとしたサービス業に対し、動画型マネジメントシステム「ClipLine」による多店舗ビジネスの経営・オペレーション改革の総合支援を行っている。導入実績は約15,000店舗。
ClipLine株式会社 代表取締役社長 高橋 勇人 Takahashi Hayato アクセンチュア株式会社、株式会社ジェネックスパートナーズにおいて多店舗展開企業の経営改革を主導。2013年、株式会社ジェネックス・ソリューションズ(現・ClipLine株式会社)を設立。趣味はスキーとテニス。
現場と本部をつなぐ「どこでもドア」
「ClipLine」を簡単に説明すると?
小売店や飲食店などのサービス業の店舗で、言葉や文章にするのが難しい業務ってありますよね。例えば、商品の作り方や接客の動作など。従来、そういった業務は本部が各店舗と直接やりとりをすることで指導してきました。
この部分を30秒くらいのとても短い動画によって、効率よくできるようにしたのがClipLineというプラットフォームなんです。
「ClipLine」の特徴は?
一番の特徴は、双方向にやりとりができるということですね。本部から送られてくる動画を現場で共有するだけでなく、店舗でカメラを立ち上げ、撮影した動画を送り返すことができるんです。分かりやすく言えば、世界中どこの店舗からも、もちろん本社からでも、ほかの店舗の様子を動画を通じて、まるでその場にいるように見渡せる。これは「どこでもドア」のイメージに近いと思います。
動画による伝達やマネジメントは確実に店長や拠点長の負担を減らし、現場の最前線で働くスタッフが活躍しやすい環境をつくり出します。また、いち現場のスタッフのすごい技術を全国どの店舗にも瞬く間に共有することが可能です。これは私の個人的な望みなのですが、このような個人技が評価にも反映されて、仕事ができるスタッフの給与がぐんぐん上がるようなシステムができたらいいなと考えています。
「伝言ゲーム」による
情報のバラツキを解消したい
「ClipLine」を発想したきっかけは?
コンサルティング会社で外食や小売りなどのナショナルチェーンブランドの経営改革を支援していたとき、多店舗展開企業の業績を上げるにはアルバイトを中心とした現場スタッフの働き方をいかに改善するか、その実行管理が必要だと感じるようになりました。
皆さんも外食や買い物をする中で、同じチェーンなのに店舗によって店員の対応や商品のクオリティが違うと感じた経験があるのではないでしょうか。本部から指示された同じマニュアルに従って接客や調理をしているはずなのに、現場で正しく再現できていないのです。
本部の施策、熱い思いを現場の数万人に届けるのに、クライアントは多大な労力を使ってきました。しかし、たいていの場合、その労力を使って伝えるのは店長・拠点長まで。その先のパート・アルバイトには店長が持ち帰って伝えるケースが多かったのです。トップからの伝言ゲーム的な情報伝達の流れの中で、裾野に位置する実店舗まで行き渡る情報にバラツキが生じてしまうのです。
また、現場で働くスタッフにはすごい人たちがたくさんいることも日々感じていました。見たこともない速さで調理の仕込みをする人、ちょっとした工夫で店舗全体の業務効率を上げる人などを知って、「日本のサービス業はこの人たちに支えられているんだ」と実感したものです。それなのに、惜しいことにそのすごい技術は同じ現場の人にしか共有されない。この技術を会社全体に広めることができたら生産性が一気に上がることは明らかなのに、その手段がないのです。
そんな問題意識から、ITを使って企業全体の生産性向上、店舗力の底上げに役立つ仕事ができないかと考えるようになりました。
教育をデジタル化し、
ヒトの価値を最大化する
「ClipLine」が世の中に与える影響は?
サービス業の、特にチェーン店は世界的に増え続けていて、これは世の中が豊かになっているということでもあります。それを縁の下から支える存在になりたいですね。
人材不足が問題となる今、急速にデジタル化が推進され、AIが浸透してきています。それでも、リアル店舗が提供するサービスの付加価値の源泉はずっとヒトであり続けるでしょう。そして、ヒトに期待される役割はますます多彩に、高難易度になっていくはずです。「ClipLine」を普及させて教育をデジタル化することで、ヒトの価値を最大化していけると確信しています。
また、現在のコロナ禍において、「ClipLine」は非接触コミュニケーションの手段としてこれまで以上の注目を集めています。デジタルとは縁遠かった業界でも、積極的に活用されるようになりました。対面でのコミュニケーションが難しい今だからこそ、サービス業の発展のために私たちができることは多いと感じています。
日本の「おもてなし」を世界へ
今後の目標は?
これは起業当初からの目標の一つなのですが、ゆくゆくはグローバル展開をしていきたいと考えています。日本発のグローバルサービスはまだまだ少ないのが現状です。1980年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代の日本企業の台頭から久しく、欧米はもとよりアジア圏においても中国に圧倒的な差をつけられ、グローバル市場での日本企業はすっかり存在感をなくしてしまいました。
日本には、世界に誇る素晴らしいおもてなしの精神があり、几帳面でまじめな国民性によるていねいなサービスが外国人にも好評であるのは周知のとおりです。これを世界に出さずしてどうするのかと思うのです。私たちの手で、日本の「おもてなし」を世界に広げていきたいですね。