放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
今回のゲストも、前回に続きファーストサマーウイカさんです。タレント、俳優など多方面で活躍するウイカさん。その多才さの背景には、あるマイルールとポジティブなマインドがあるようです。先輩方から学びながら努力を続け、「人生ずっと右肩上がり」と話すウイカさんのキャリアアップストーリーをご覧ください。
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ファーストサマーウイカ 「BiS」ガールズグループ「BILLIE IDLE®︎」の元メンバー。
軽快な関西弁でのしゃべくりが人気で、バラエティ、ラジオ、ドラマと幅広く活動。 -
高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
あこがれは小池栄子さん。強すぎる先輩タレントたちに必死で食らいつく
ウイカ:この名前で得したこともいっぱいあるので名前は大事やなと思うんですけど、2024年の大河ドラマに出るにあたって、「もし名前が足かせになるようなことが万が一あれば、改名も辞しません」と。
高須:えーっ?
ウイカ:それこそ“小雪”さんみたいに“初夏(ウイカ)”って。
高須・ウイカ:(笑)
ウイカ:「全然そのままの名前で大丈夫です」って言っていただいて。フタ開けてみたら私と同じときにユースケ・サンタマリアさんも(お名前はそのままで)発表されていたから、それは大丈夫やわと思って。
高須:(笑)
ウイカ:でも名前で得することもあれば、先入観でちょっとふざけてると思われることもあるので。大丈夫なんかな? って。目指すところ、これから私は小池栄子さんみたいになっていきたいと思ってるんで(笑)。
高須:小池はね…パーフェクトやね。
ウイカ:本当頂点なんです。
高須:パーフェクト。あんなに肝っ玉据わってて。
ウイカ:面白いし、クレバーやし。
高須:美しいし。しかも役者としての能力もダントツにあるやん? あれなんやろね?
ウイカ:女性から見ても同業者から見ても本当にすがすがしいというか、シンプルに人としてあこがれます。タレントさんとして一回バラエティを席巻して覇者になってから、もう一度違うお城を横に建て直すみたいな。しかもさらに大きくて立派なお城を建てている感じが…。(小池さんの活躍を見ると)「目指せるものがあるというのは幸せなことや」と。超えることはできなくても、私の目下の目標は、小池さんといっしょにお芝居をさせていただくこと。
高須:共演したことは?
ウイカ:バラエティぐらいですね。映画でご一緒させていただいたことはあるんですけど、同じシーンでの掛け合いとかはまだないんです。
高須:飲みに行ったりとか話したりっていうのは?
ウイカ:なくて。あこがれすぎてそんなグイグイいけない(笑)。いつか飲みに行けるようになりたいなと思うんですけど…もう、大きい存在ですね。
高須:小池栄子はすごいな。初期のバラエティのときには普通のグラビアアイドルとして出ていたから、こんなにすごいとは。
ウイカ:本当、皆さんいろいろジャンルは違いますけど、若槻千夏さん、MEGUMIさん、小池栄子さんのようなグラビアからバラエティをやっている方は、強強の強(つよつよのつよ)。今も上田(晋也)さんの番組でMEGUMIさん、若槻さんとごいっしょさせていただいているんですけど、もう弾(たま)数も違えば一発の銃弾が重いんですよね。ズドドドドドッて。そこに太刀打ちするって、もう毎回へとへとになります。
失敗はすぐ忘れられる。先輩たちから学んだ芸能界を生き抜く処世術
高須:誰の演技が好き? 見てて「うわ、この人上手!」っていう人。
ウイカ:難しいなぁ。まだめちゃくちゃ時間浅いですけど、やっぱり(大河ドラマで共演中の)吉高由里子さん。全人類がきっと吉高さんのこと好きなんですよ。
高須:(好きな理由は)あの人の性格なのかな?
ウイカ:それもあると思います。もう人間力みたいなところが役を超えて見えてしまうって。そこはもう圧倒的に勝てない。だから私はそういう方を「天才」と呼ぶんです。バラエティでもそうです。普通のことを言っていても、なんか面白く感じたりとか。(高須さんは)天才とばっかりお仕事されているから、きっと感じると思いますけど。
高須:でも役者の方はほとんど知らないから、どういう感じなのかなと思って。
ウイカ:私は天才だなと思う方には必ず聞くようにしていることがあって。ドラマって監督がオッケーって言ったらもうそれが通っちゃうから、「もっとうまくやれたのにと思うことないんですか?」とか。でも、「もちろんあるけど、監督がいいって言ったらそれがオッケーだし、ダメだったときは監督の責任だよ」って、みんな口をそろえておっしゃるんですよ。じゃないとやってられないっていうのもあるんですけど。
高須:でも他人からは普通に「下手やなこいつ」とか思われるやん。
ウイカ:しかもそれがDVDになって残るわけじゃないですか。映画だったら大きいスクリーンで何千人、何万人に見られるわけでしょ。バラエティは、その瞬間は何万人か見てるけど、忘れる。
高須:忘れる。すぐ忘れる。
ウイカ:だからこそ100%でやりきれるというか、もう今日死んでもいいと思ってやりきれるんですけど。最近ちょっと(忘れることが)できるようになりました。前まで2カ月ぐらいは引きずっていたんですよ。やっぱり芝居のことを引きずってはいけないんですよ。
高須:(引きずると芝居が)でけへんもんな。
ウイカ:なんかどんどん悪循環になるから。3日経って忘れるようになったら役者としてはいいと思うんですけど、(バラエティで)エピソードトークができなくなるっていう。これはすみ分けが難しい、ちょっと弊害だなと思うんですけど。
高須:忘れようと思ったらそんなものまで忘れてまうの?
ウイカ:すべて忘れていくんです。
高須:(笑)。すごい能力やなそれも。多分人の(記憶の)キャパはだいたい決まっているから、セリフを入れた分だけ出ていくんじゃないの? どんどんキャリアを積むと出代も増えるし、多分もうキャパを超えているんじゃない?
ウイカ:そうですね。(千原)ジュニアさんとかが常に新しい話題を入れたりするのを見てすごいなと思うけど、例えば恋バナとか、もう増えないわけですよ。基本的にはもう10代、20代前半の恋愛話を、いかに違う小窓から開けて入って出るかっていうことで。
高須:ほんまや。違う顔しているようなフリして出ていくかやな。
ウイカ:内容開けたら全部いっしょっていう。でも若槻さんとか大久保(佳代子)さんとか、いとうあさこさんとかの「違う番組でこの話聞いたけど、入り口と出口全然違うやん。すごっ」っていうのを見て覚えて。私も新しいエピソードがなくなってきたときには同じ手法を使っています。
ファーストサマーウイカさんのキャリアの転機|アテもなく上京してアイドルに。キャリアを着実に積む「ずっと右肩上がり」の人生
高須:キャリアの転機を教えてくださいっていうと、まさにカンテ(前編参照)なんやろね。
ウイカ:(カンテは)キャリアの中の大きなきっかけにはなりますけど、いちばん大きな転機でいうと、やっぱり上京だと思います。それもアテがあって上京したわけじゃなくて。芸大とかも行きたかったけど、学費高いし弟も居てたので、専門学校行ったりもしたんですけど、1年で辞めてそこからは小劇場で(役者を)やりながらテレアポとかのOLとして3年働いて100万円をためて。その100万円を持って、取りあえず東京に来たんですよ。
高須:それは何歳のとき?
ウイカ:22(歳)ですね。
高須:22か。「あれ? 思ったとおりに行かへんな」みたいな感じはあった?
ウイカ:一度も挫折したことがなくて。
高須:すごいなぁ!
ウイカ:人生の感覚でいうと、なんか“すごろく”っていうよりかは“積み木”のイメージで。常に積んだ瞬間が頂点。だから今も「人生ずっと右肩上がりや」って思ってます。ちっちゃい劇場で初めてちっちゃい役で出たとしても、「人前でお芝居ができる。うれしい」「お金取れる。プロや!」って。で、「(芝居の)2回目ができる」みたいに、着実に積んでいっているんで。規模はどうあれ、隣の芝を見たら青いけれども、「今は昨日より良いとこにおるもんな」って思って。
高須:ポジティブやなぁ!
ウイカ:そうですね。根はポジティブです。でも役者目指して上京してきたんですけど、2、3週間ニートをしていたときに、Twitter(現X)を見たらアイドルの募集があって。一曲も知らんし、メンバーの名前一人も知らんけど、オーディション受けに行ったら受かって、アイドルになりました。
仕事のマイルール|ブレてきたからたどり着いた現在のキャリア。肩書きにこだわらず、多方面に挑戦する
ウイカ:自分のマイルールっていうものがあるとすれば、「ブレない」じゃなくて「ブレる」。免震みたいな。
高須:おー、なるほど。
ウイカ:鉄骨で頑丈にしたら、多分大きな力がドーンって来たときにポッキリ折れてしまうと思うんです。けど、私なんかゴムみたいなのでできてて(笑)。
高須・ウイカ:(笑)
ウイカ:力が来たほうに一回バーンってはね返して、そのバネを利用してもう一回はね返したりとか。流木のように流れ着いたところで、「じゃあ一回やってみよう」と思ってアイドルをやったり。NIGO®︎さんに誘われてガールズユニットやるとか。バラエティタレントの仕事が来たからバラエティをやる。そうやって回り回って流れ着いて遠回りしたけど、役者の港にもう一回流れ着けたなっていうのがあるから。ブレてきたからこそたどり着いたと思っています。
高須:確かにいろんなことやってると、なんか自分の中に違う筋肉がつく感じはするよね。それってどこかに活かせるやん。カメラに向き合うときの腹積もりとか、ちょっとアドリブが入ったときに「負けへんで」っていう意識とか。職業は何て言うの? 今。
ウイカ:音楽番組やったらアーティストって言いますし、俳優雑誌とかやったら俳優って言います(笑)。そのときに都合のいい、相手にとってベストな表現を提出しますけど、自分としては。
高須:決まってない?
ウイカ:決まってないですし、「どれでもいい」っていう、ある種こだわりがないというか。でもマルチとは言いたくないっていう謎のこだわり(笑)。
高須:な。マルチはちょっと嫌やな。
ウイカ:何でもできますっていうわけじゃなくて。事務所にも変に役者役者しすぎない、平場でしゃべっても面白いっていう先輩がたくさんいはるんで。なんか来るべくして来た事務所だなとも思うし。変にイキった「女優です!」みたいなことには…まあ、なれないですけどね、もう。このパブリックイメージからは。
高須:今やそういうスタイルで確立されているから、いいんやと思うよ。もう“ファーストサマーウイカ”っていうのが、なんか出来あがってるよ。いい意味で。
ウイカ:ありがとうございます。そうですね。これから10年後、20年後、小池栄子さんみたいに、こんな変わった名前でもタレントからバーッていったらすごいな、みたいな。でも音楽もやっぱやりたいですね。ツアーを回りたいんですよ。全国各地を回るって、音楽が多分いちばん細かく地方を回れるんですよ。
高須:いいやんか。バラエティもやれる、芝居もやれる、音楽で地方も行ける。
ウイカ:それが理想的ですね。だからバンドやりたいです。「今いちばんやりたいこと何?」て言われたらバンド。
高須:ちょっと待って(笑)? 「芝居頑張る」って言ったやんか。
ウイカ:俳優がライフワークになるようになりたいんですけど、ライフワークとしてお金にならなくてもいいからバンドをやりたいなって。今バンドメンバー募集中です。
高須:へぇー!
ウイカ:(一緒に)やります? バンド。
高須・ウイカ:(笑)
――ファーストサマーウイカさんのキャリアアップストーリー、いかがでしたか?
次回のゲストは演出家の乾雅人さんです。お楽しみに!
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