イチローでも打率は3割。リスクをある程度許容し、スピードで勝負をする。

成功の可能性50%。大企業では許されない数字も、
ベンチャー企業にとっては「できたも同然」。

 日本の大企業は、資金力もあって、優秀な人もいっぱいいるし、できないことはないくらい優秀だと思うんです。なかなか新しい物が出てこないのが、不思議でしかたがないですね。やっぱりリスクを取ることと、スピードがネックになっているのかもしれませんね。そんな何もかもすべてが成功するはずはないので、ある程度の打率で許容するしかないと思うんです。失敗するものも当然あるし。イチロー選手でも3割は打てても、10割は打てないわけだから。ベンチャーは、それくらいのリスクは取って早くやる。そうすると、いくつかは当たるというか、大成功するということだと思います。やっぱり大企業には、そんな「リスクテイク」と「スピード」が足りないんじゃないですかね。今のように変化の激しい時代には、まずは小さくスタートしてやってみるということは重要だと思います。何事もやってみないと分らないわけですからね。
 ベンチャー企業の経営者は、皆そうだと思うんですけど、成功の可能性が10パーセントもあると、「すごい可能性がある」って感じるんです。半分の50パーセントぐらい可能性があると「もうできたも同然」ぐらいの感じで。大企業は、新しい分野の開拓にベンチャーをもっと活用すると良いと思います。ベンチャーに投資したり、提携したり、ある意味しばらくやらせておいて、ある程度進んで来たらM&Aして本格的に参入するというのも1つの戦略です。米国では多いパターンです。
 髙萩さんと米坂(元宏・共同創業者)さんというMoffのファウンダー2人は、すごくコンビネーションもいい。これから仲間も増やして行って、とにかく思い切ってやればいいと思いますね。最初から日米グローバルにやろうとしているところもいいですし。「まず日本で成功してから」とか思ってないところがいいですよね。最初から世界を狙うというスタンス。いろいろ今でもたいへんなことは多いですし、これからもたいへんなことは多いんですけれど。それを楽しみながら、克服していくパワーがありますからね。どんどん進むだけじゃないですかね。

鎌田氏が共同創業した株式会社ACCESS
前向きに、前向きに。困難に直面しても常に前に進むパワーを。

会社は、その成長過程で必要な人材も経営も違う。
Moffで伝えていきたいのは、自分の失敗からの学び。

 髙萩さんへのアドバイスですか……。僕たちがACCESS(1984年に共同設立した有限会社アクセス)を創業したころは、今の会社法ではなく、株式会社というのは資本金1,000万円以上という時代でした。だからまず有限会社として、資本金100万円で始めたんです。
 運が良かったのは、その後、制度が変わって日本にもベンチャー企業向けの株式市場「東証マザーズ」が、1999年にできたことです。われわれ(ACCESS)が上場したのが2001年なので、ちょうど会社が成長するときに、そうした波に乗れたんだと思います。
 1998年ごろ、世界で初めて携帯電話でインターネットができるようにする技術を開発して(後に、NTTドコモさんの「iモード」に採用される)、またとない大きなチャンスがやって来ました。一気に進めるには人を雇わなくてはいけないので、資金が必要となり、思い切って大型の資金調達をしました。当時としてはすごく珍しかったのですが、海外のベンチャー・キャピタルから約20億円を調達しました。さらに上場して、社員も20〜30人から300人ぐらいまで、バーッと一気に増えましたね。その間にいろんなことがありました。失敗もいっぱいしましたし、海外展開もいろいろ苦しみながらやりました。Moffがそういう局面になれば、僕がやったときよりも、うまく行くようにアドバイスできるんじゃないかなと思います。
 失敗で言えば、やっぱり最初は人を見る目がなかったこと。採用では、かなり失敗しましたね。そもそも会社勤めの経験がなかったので、何が普通かが分からない。そこで経験ある方に「これが普通だよ」というようなサジェスチョンをされると、「まあ、そうかな」って思ってしまう。でも、実際に採用をしてみるとピンと来なかったり……。別にその方が悪いわけではなく、会社のカルチャーに合う合わないといった話なんですけれど。おかげさまで、1,000人以上面接したと思いますので、今ではスゴく見る目があると思いますよ(笑)。
 さらに会社というのは、いろいろな成長段階のステージで、本当にそのとき必要な人も、経営も変わってきます。髙萩さんは、社会人としての経験が十分あるので、スタートのレベルがしっかりしていると思います。
 人間誰しも目の前のことがけっこうたいへんだと、「本来どうあるべき」というところを、見落としがちになります。難しいかどうかはともかくとして、「本来こうあるべき」「こう考えるべきだよね」という話はよくします。いろいろなことを進めるときに、見落とさないようにしたいですよね。
 あとは選択肢を想像するということでしょうか。目の前にけっこういい話が来た。でも、もっといい話もあるかもしれないわけですよね。選択肢というか可能性というか。後から「しまった」ということもあるので、できるだけ僕が思いつくことを話をして、その上でどうするかという感じです。
 髙萩さんは、すごく前向きですね。ベンチャーには、難しいこと、困難なことが山盛り来るので、それをいちいちめげていたら続かない。どんなときでも、髙萩さんはこの笑顔で対処してますからね。そういう、何があっても前に進むパワーを感じます。ベンチャー企業の経営者に、ある意味いちばん必要な資質かもしれません。

高萩昭範氏と鎌田富久氏
  • Moff 開発者 高萩昭範氏01
  • Moff 開発者 高萩昭範氏01
  • 起業サポーター 鎌田富久氏01
  • 起業サポーター 鎌田富久氏02