ただのおもちゃじゃない未来のプラットフォーム?

ウェアラブルおもちゃ『Moff Band』

スマホの画面でチャンバラのアイコンを選んで、チャンバラ遊びをすれば「カキーン、カキン」とチャンバラに合わせた効果音が。ギターを選んで、ギターを弾く動作をすれば「ギャーン、ギョーン」と、ギターの音色が……。高度な解析技術が詰まった、ごくシンプルなセンサーとスマホが連携し、体の動きに応じてさまざまな効果音が響きます。想像力次第で遊びが広がるウェアラブル・デバイス。

自分の子どもが生まれ、おもちゃと遊びの新しいあり方を考えた。

株式会社Moff 代表取締役・高萩昭範/Akinori TAKAHAGI 1977年生まれ。大阪府八尾市出身。京都大学法学部卒業後、外資系コンサルティング会社A.T.カーニーに就職。その後、モノづくりの現場に関わりたいと、メルセデス・ベンツ日本、外資系食品メーカーで商品企画を担当。2008年に独立し、Webサービスの開発や制作に携わる。2013年1月に開催された「ものアプリハッカソン」への参加を経て、ウェアラブル端末および、センサー解析プラットフォームを開発する株式会社Moffを設立。株式会社ACCESSの(共同)創業者で、ベンチャー起業の先駆者でもある鎌田富久氏からの支援も受け、2014年10月15日、『Moff Band』が発売された。【 取材日:2014年9月末 】

「顔と顔を合わせて体を使って。おもちゃは使い捨てせず
遊んでほしい」。出発点は、わが子への想い。

 もともと『Moff Band』の初期の形状は、腕時計型ではなくて、ぬいぐるみだったんです。2013年1月の「ものアプリハッカソン」には、加えたアクションで感情を読み解くような、簡単なアルゴリズムを組んだセンサーが入ったぬいぐるみで参加しました。「家族間のコミュニケーションを促しましょう」というのが目的でした。そこから、初期から意識していた「ハードウェアはシンプルに」という点と「機能やサービスはソフトウェアで拡張する」ことを進めていった結果、今の『Moff Band』の形状になっていったんです。
 その形状よりも『Moff Band』の根幹にあるのが、人間にとってより自然で、直感的な動作で操作可能な仕組み「ナチュラルユーザーインタフェース」という考え方。これに行き着いたのは、やっぱり自分に子どもが生まれたことに大きな影響を受けてますね。生まれたばかりの子どもと、顔と顔を向かい合わせた瞬間、生命が誕生するってすごいなって思ったんです。その一方で、今のコンピュータのインタフェースというのは、画面を介してコンピュータが真正面から向かい合っている状態。直感的にうちの子にはやらせたくないなって。
 別にコンピュータ否定派ではなく、むしろ大好きです。自分の子には、うまくつき合ってほしいんだけど、画面に真正面に向かってしまうと……。体を動かさないわ、顔と顔を合わせてのコミュニケーションをしないわ、どちらかと言うとクリエイティビティとか、想像力とかないような世界になっていく。これは全然人間的ではないなって思ったんです。
 そうなるとコンピューターというものが、いかに人間の前側から後ろ側に行って、黒子側として働くか。センシング、センサーを中心に、さまざまな人間からの思考や情報を読み取って、コンピューターの方から提案してくるという世界が、自分の子どもにとってもいいだろうなと思ったので。
 もう1つ『Moff Band』には、おもちゃの大量生産・大量消費という今の状況を変えたいという想いも持っていました。エネルギー問題なんかで、いろいろな商品やサービスで、サスティナビリティー(持続可能性)を追求しようとしているなか、おもちゃ産業は置いて行かれている。そうした考え方も、自分に子どもが生まれてきたことが理由として、大きく影響していると思いますね。

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コンサルティング+メルセデス商品開発+Webサービス運営=

父の影響でテクノロジー好きに。キャリアを重ね、
いざモノづくりで世界と勝負する舞台に向かって。

 僕の父は、公務員なんですが電気技師でした。それで、家の中にはハンダごてだったり、オーディオ系の機器、今でいうPCなんかもありました。父親自身が特許をたくさん出願していたので、特許書類なんかがその辺に転がっている。そんな環境で育ちました。だからテクノロジーは、もともと好きでしたし、ずっとやりたいと思っていました。
 ですが、僕が大学を卒業して就職する当時は、日本のメーカーはもう下り坂に入った時代。たぶん日本流のやり方というのは、行き詰まるだろうなと感じていました。それじゃあ、海外の、なかでもアメリカの当時強いと言われたコンサルティング業界の手法や文化ってどんなんだって、知りたくてコンサルティング会社に就職したんです。日本がアメリカや他の海外に負けているとは、全然思っていませんでした。ただ、やり方に関するノウハウ、方法論は、向こうのほうがあるなという印象を持って、彼らのやり方に興味があったということなんです。
 それほど緻密に、計画的にキャリアを考えてというわけではないんです。ですが、モノづくりから離れていると、やたらとモノづくりがしたくなって、メルセデス・ベンツ日本に転職しました。そこでは、商品企画という開発と密接に関わる部署だったので、比較的エンジニア色の強い仕事をしていました。だから、どちらかというとソフトウエアよりはハードウエア主義の人間だったんです。
 それが、独立してからの6年の間に、自分でプログラムを勉強して、Webサービスとかアプリ開発とかをやりだしてからは、ソフトウェアにも興味を持ってきて。ですが、なぜそのサービスが売れるのか、自分のつくっているのも、何が良くて何が悪いのかよく分かりませんでした。ただ、ハードウェア側の世界とソフトウェア側の世界を経験して分かったのは、それぞれの世界で完結する話のマーケット(市場)も、プレイヤーも出てきていること。2つの世界が一緒になれば、それまでにない新しいものが生まれるはずだと思っていました。
 いろいろチャレンジングなプロジェクトをしている人たちや、「ものアプリハッカソン」という場でメンバーとの出会いがありました。それで、だんだんハードとソフトを動かしただけで何かつくるというよりも、そこから得られたデータを元に、また新しい体験を提供する方向に進むべきだと思ったんです。

子どもの卓球シーン
  • Moff 開発者 高萩昭範氏01
  • Moff 開発者 高萩昭範氏01
  • 起業サポーター 鎌田富久氏01
  • 起業サポーター 鎌田富久氏02