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泰三子先生インタビュー後編
「漫画の素人」だから気づけた
泰三子流「まんが道」

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警察官から転身、いきなり『モーニング』の連載作家へ。ほぼ漫画を読んだことがなかったという泰三子先生は、類まれな行動力で自分だけのオリジナルな「まんが道」を切り拓いていった。後編では、そんな泰先生がプロと渡り合うために培ってきた漫画術について語ってもらった。

泰三子(やす・みこ)

某県警に10年勤務。2017年、担当編集者の制止も聞かず、公務員の安定を捨て専業マンガ家に転身する。
短編『交番女子』が掲載され話題になっていた「モーニング」誌上で、2017年11月より『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』の週刊連載がスタート!

アシスタントから作画は学べる!

――先生はかなり執筆が早いとお伺いしています。現在の執筆環境と、作業の流れについて簡単に教えていただけますか。

知り合いの漫画家さんが1人もいないので、「普通」が分からないんですけど…日中に机で描いています。紙に描いてスキャナで取り込んで。あとは遠方に、すごくうまいスタッフさんが1人います。

――漫画のアシスタントさんですか?

はい。普通は「アシスタント」と言うべきなんでしょうね。しかし、私の場合は、先生兼背景担当みたいな感じですから。そもそも漫画は「Z型に読む」くらいしかルールが分かっていない状態で描き始めたので…。その方にいろいろと指導をしてもらって、なんとか描いてきました。

――アシスタントさんは、編集部から紹介されて?

そうですね。どこからともなく凄腕のアシスタントさんが連れてこられて(笑)。それと、姉などの身内に手伝ってもらっています。

――『ハコヅメ』くらい描き込まれた漫画を、そんな少人数で連載されていることに驚きました。

人物は私が描いて、あとの車とか建物の背景はアシスタントさんにお任せしています。人物の絵ってそんなにうまくなくても、背景がうまいと人物も持ち上がってくるんですよね。「勉強になるなぁ」と思って精進の日々です。

――漫画を描いた経験がない人にとって一番のハードルは画力だと思います。先生は画力の重要性について、どのようにお考えでしょうか?

私が言っても「お前が言うな」と言われてしまいそう(笑)。絵を描けるかどうかを考えて漫画家になったわけではないんです。だから作画について言うなら、優秀なプロのアシスタントさんにサポートしてもらえれば、あとは努力と気合でなんとかするしかないと思います。

「没」にされたら数を撃て

――先生が、職業漫画を描く際に重要だと考えるポイントを教えてください。

そうですね…その仕事や登場人物に尊敬と愛着を持つことです。そうしないと面白くならないと感じています。

――キャラクターを、ただ面白いだけの人にはしないと。

『ハコヅメ』は、人の悪口ばっかり描いています。でも、登場するキャラが根底ではちょっとお互いのことが好きでないと、「悪口」として成立しないんです。尊敬を感じないものについては、なるべく描かないようにしています。

――前々回インタビューした弘兼憲史先生は、「漫画は画力よりも構成力だ」とおっしゃっていました。泰先生は、物語を作るネームの段階で苦労することはありますか?

そういえば、あまりないですね。ネームは、思いついたアイデアを描くというより、「今日の勤務は誰と誰にして、この事案をやらせる…はじめ!」という具合に登場人物がしゃべっているのを、紙に描いていく感覚です。

――ネームに関して、担当の方とは、どのようなやりとりをされるのですか?

編集さんに味見をしてもらうというか。話作りは料理と一緒で、最後にテイスティングをしてもらったときに、「ここが甘すぎる、苦みを足してくれ」というさじ加減が必要になってきます。それについては、担当さんにジャッジしてもらった意見を優先しています。

――これまで単行本7巻まで出してきたことで、学べたなという感触はありますか?

ないですね。いまだに担当さんから没と言われても、納得できないことが多々あります。没の理由が分からなくても、ダメと言われたらあきらめるんですが…。なにしろ私は漫画の素人です。どうやって素人が、プロの漫画雑誌で連載を続けられるかというと、数を撃つことだと思っています。数撃てば当たるんじゃないかという気持ちで、ダメと言われたら翌日の朝には違うネームを出します。だから、「没」の3時間後には、次のネームを描けるような心構えを、常に持つようにしています。

キャラのモデルは「ちょっとダメな人」ほど人気が出る

――これから漫画家を目指す人に向けて、「これは社会人のうちに経験しておいたほうがいい」というアドバイスをいただけますか。

自分の経験で、意外に役に立ったなと思うのが「ちょっとダメな人」です。ちょっとダメな人をよく観察して、モデルにすると、なぜかそのキャラって人気が出るんですよ。好きな先輩をモデルにしたキャラを出してしまうと、動かしづらくて話が転がっていかないのに、「ちょっとダメな人」をモデルにすると話がすごく作りやすい。キャラに人間味が出るんです。

――魅力的なキャラを作る秘訣は、「ちょっとダメな部分」にあると。

私は、そのキャラの悪いところから考えるようにしています。欠点をすべて固めてから、1割~2割くらい「良い部分」を足すといった比率です。長所が少ないキャラクターのほうが動かしやすいんですよ。

――先生のお気に入りは、どのキャラになりますか?

実は1人もいないんです。どのキャラクターにも思い入れはないですね。

――主人公の川合も、先生がモデルというわけではないんですか?

違います。よくいる新任の女の子という感じです。だけど実は、川合みたいに「警察官を目指していなかった」という女警さんに会ったことはなくて。女性警察官は倍率が高いんですよ。1浪や2浪は当たり前で、体力も必要ですし、勉強も相当やらないと受からない。川合のようなキャラは、リアルにはいないので、完全にフィクションですね。

――主人公をそのようなキャラに設定したのはどうしてですか?

大人の読者は、仕事終わりや合間の気分転換に『ハコヅメ』を読むと思うんです。そのときに、あんまり熱血なキャラだと、ちょっと暑苦しいかなと思って。読者が共感しやすいキャラのほうが良いというか、仕事の合間に話していて、楽な女の子というイメージですね。

――川合があこがれる先輩の藤も、モデルはいない?

モデルはいないんですけど、新任の女性警察官から見た先輩のイメージで描いています。私が初めて警察署勤務になったとき、刑事課の女性の先輩って、本当に神がかってかっこ良く見えたんです。場数を踏んで男社会の中で機転を利かせて、しかもきれいな先輩が多くて、すごい!っていう。2、3年したら、ものすごいかっこいいと思っていた先輩も、「こんなに美人なのに全然、彼氏できないじゃん」とかいろいろと見えてくるんですけど(笑)。

漫画家になったら走り続けるしか道がない

――最後に、先生が考える、漫画家として生きていく上で必要なことを教えてください。

ちゃんと連絡を取り合うことに関しては、自信があります(笑)。それと、期限を守ることです。ストレスになるので、ストックは多めに作っておかないと落ち着かないですね。

――賞の応募者に向けたアドバイス・激励をいただけますでしょうか。

早まるな、です(笑)。印税生活でゆっくりは、なかなか難しいので。副業でやる分には良いと思うので、その点は、よく考えていただきまして。やっぱり、その職業を好きな人が描いた漫画じゃないと面白みに欠けると思いますから、自分のお仕事の面白さをもっと多くの人に知ってもらいたいという方にとって、すごく良いチャレンジだと思います。

取材・文/プロダクションベイジュ

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