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田島隆先生インタビュー前編
『カバチタレ!』
原作者・田島隆が伝授する超実践的漫画メソッド!

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モーニング編集部が新たに創設する「〇〇だったけど転職したら夢の印税生活で賞」略して「転生賞」。漫画家になりたい仕事人のための漫画賞だ。
今回は、現役の海事代理士・行政書士で、『ナニワ金融道』との出会いから漫画原作者の道を歩み始めた『カバチタレ!』の田島隆先生に、今日からできる超実践的な漫画メソッドを教えてもらった。

田島隆(たじま・たかし)

1968年広島県呉市生まれ。家庭の事情で高校を中退。1983年以来、独立して生計を営み、数多くの職を経験する。1988年に法律家を志し、司法書士補助者を経て1991年に海事代理士試験に合格。同年、呉市に田島海事法務事務所をかまえ、現在まで海事代理士・行政書士として活動している。1996年より大手法律資格学校講師も経験。1999年より「モーニング」にて『カバチタレ!』、2005年より同誌にて『特上カバチ!!』、2001年より「イブニング」にて『極悪がんぼ』を連載。2009年9月より『激昂(ブチギレ)がんぼ』の連載を開始、2013年5月より『カバチ!!!』の連載を開始した。広島県呉市在住。

きっかけは青木先生との出会い

――先生は海事代理士・行政書士を生業としながら、漫画原作者としてデビューされました。改めて、漫画原作を手掛けることになるまでの経緯をお聞かせください。

田島私は『ナニワ金融道』という漫画が好きでした。『ナニワ金融道』には弁護士や司法書士、行政書士が出てきます。当時、私は日本で一番マイナーな法律家といわれていた海事代理士の事務所をやっていましたから、海事代理士も出してほしくて、船舶関係の法律書類を漫画用に書き直した分厚い資料を作って、編集部に送ったんです。売り込みとかじゃなくて、熱烈なファンレターのつもりだったんですけれど、そうしたら作者の青木雄二先生本人から「取材させてくれや~」と電話があって。それからは、私からも青木先生の事務所に何度も行く関係になったんです。それで、いよいよ海事編が始まるとなったときに、法律の構成とネームの監修を任されました。

――最初はファンレターから始まったんですね。

田島いまになって考えると、ディープな読者ですよねぇ(苦笑)。それでも、海事編を進めていくうちに、法律だけでなく、一緒にネームを作らせてもらったり、キャラクターのセリフ案を起案させてもらうようになりました。

初めて書いた原作を編集部に持ち込み

――それで、漫画原作者になろうと思われたんですか?

田島その当時はそんなことは考えもしなかったのですが、その後、青木先生が「わしは漫画で一生食えるだけの金を稼いだから辞めるで」と言って断筆宣言されたんですね。それで、せっかく好きな漫画業界を垣間見たんだから、ちょっと自分でもやってみようかなと。でも、ぼくは絵を描くのが好きじゃない(笑)。それなら、文章でシナリオを書けば良いのかと思って書いたのが『カバチタレ!』でした。

――青木先生には原作を見せたんですか?

田島いえ、本音を言えば原作を書いて青木先生に編集者を紹介してもらえないかなんて下心もあったんですが(笑)、「もうわしは漫画に関わらんと世に宣言したから紹介もなにもできまへんで」と言われてしまいました(笑)。それで、複数の出版社の青年誌編集部に原作を郵送したら、すべての編集部から使いたいと言っていただいて。そのなかでモーニングさんにお願いすることになったんです。その後は、従弟の東風孝広を編集部に紹介したら作画家として起用してもらえることになりまして、おかげさまで今日に続いています。

実務案件は役に立たない! 見るべきものは当事者の表情

――行政書士の実務経験の中で、特に漫画作りに役立ったことはなんだったでしょうか。基本的にはお仕事から得たアイデアですか?

田島それがそうではないんですよ。実務案件をそのまま使ったことはないですし、ヒントになることもまずないんです。ぼくらの漫画はリアルに描いているつもりですし、リアルであることが作品の生命線だと思ってますけど、やっぱり事実をリアルに描いたからといって漫画になるわけじゃないんです。

――実務経験が漫画に役立つことはないのでしょうか?

田島そうですねぇ。一番作品に役立っているのは当事者さんの感情ですね。具体的に言えば、実務で目の前に現れる当事者さんが見せる表情です。困っている人の顔、苦しんでいる顔、怒っている顔、助かったときの顔、顔、顔。作品に役立っているのは、目の前に現れる人の表情を通じて伝わってくる当事者さんたちの感情です。それがぼくのインスピレーションになっています。

――なぜそこまで表情を重視されるのでしょうか?

田島ドラマはキャラクターの感情によって展開されるものですから、その感情が如実に表れている相談者さんの表情はぼくにとって重要なものとなります。
それだけではありません。少年誌やヤング誌と違い青年誌で作品を描く場合、荒唐無稽な演出は好まれません。荒唐無稽な演出や勢いだけの演出よりも、ちょっとした心の機微を描くことが読者に支持されます。そうすると、主人公が跳んだり跳ねたりすることなく、心の機微を描くには、やっぱりキャラクターの表情が重要なんですよ。
ぼくがデビューしたばかりのころにこんなことがありました。モーニングのある作家さんの作品を見ていて、主人公が別の巻でまるっきり同じポーズで描かれているコマを見つけたことがあるんです。2つのコマは同じアングル、同じポーズ、キャラを描くアップ率も同じに見えました。もしかしてコピーした絵を原稿に貼って使ったのかなと思ったのですが、それにしては、絵を見たときに受ける印象がコピーと違って描き下ろしの迫力のある絵に見えるんです。そう、主人公の表情が同じはずなのに違って見えたんです。それでも、その2つのコマを並べて分析的に見れば見るほどコピーしたとしか考えられないくらいにそっくりに見える。ぼくは困惑してしまい、自分なりにいろいろと検証してみたんですよ。そして、その一環で、そのコマをコピー機で30倍くらいに拡大したときに初めて理由が分かりました。同じに見える絵でも一方のコマでは、主人公の顔の輪郭線、口の線、目の線の幅が、少しだけ細かったんです。それだけの違いでした。本当に驚きました。これだけの違いであんなに印象が違うものなんだと。青年誌の一流作家さんはこのレベルで表情を描き分けているんだと。
以来、青年誌での漫画作品は表情を描けないとダメだと確信しています。

漫画原作は「読んで面白いもの」を書くだけでは不合格

――漫画の原作を書く上で、先生が大事にしていることやモットーがあれば教えてください。

田島漫画で一番大事なのは、ストーリー構成だと思っています。「漫画はキャラクター」という金言もありますが、それにしたってストーリーがないとキャラは活きてきません。そして、そのストーリーは構成次第で面白くも、つまらなくもなります。カバチタレ・シリーズは最初の10年以上をぼくがネームを切っていたので、なおさらストーリーの構成にこだわっているのかもしれませんけれど。なにしろ、原作でストーリーの構成が悪いとネームにしたときに、明らかにつまらない作品になっちゃいますから(苦笑)。

――それはつまり、ドラマ作りを重視しているということですか。

田島はい。法ネタも大事ですけれど、やはりそれもドラマあって活きるネタ。ドラマが生命線だと思ってやっているつもりです。
ぼくの原作者としてのポリシーは、「原作は読んで面白いものを書いただけだと不合格、見て面白いものを書いて初めて合格」というものです。漫画原作者は読んで面白い原作を書くだけじゃだめなんです。

――「見て面白い」とは具体的にどういうことですか。

田島例えば、『カバチ!!!』は、実際の法律相談案件をそのまま描けば簡単に終わっちゃうんです。実務では電話相談で終わりになることも多いですから、漫画も田村勝弘が電話で回答して終わることもできる。でも、それだと漫画にならない(笑)。だから漫画では、相談者が何やら相談にのってほしいということまで電話で聞きだしたら、田村に「ちょうどこのあとそちら方面に行く用事があるので、お宅にお伺いさせてもらいますよ」と壁の時計でも見ながら言わせて、事務所から出しちゃうんです。
田村が相談者の自宅に行ったら、暗い顔の女性が出てくる。家に招き上げられると、扇風機が倒れていたり、ふすまに穴があいていたりして、その女性に「実は旦那がDVで……」と涙目で訴えさせるんです。
そういう展開にすれば、この相談者の置かれる立場がビジュアルで見える。セリフで説明するよりも分かりやすく、インパクトもあるんです。
そして、その際に一番大事なのが、その人がどれくらい困っているかを伝える表情というわけです。

取材・文/プロダクションベイジュ

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