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阿刀 秀嗣

「はたらく」は、使命。
熱意で人に喜びを。

阿刀 秀嗣

KARATSU LEO BLACKS.EXE

posted 2020/02/25

自らを「極度の目立ちたがり屋」と称するその男は、福岡にいた。試合中は大きな声でチームメイトを鼓舞し、ひとたびゴールを決めれば、派手なアクションで唸り声をあげ客席を沸かせる。そんな熱血漢なアスリートが持つのは、「保育園の事務職員」としてのもう一つの顔だ。バスケットボールと、保育園。阿刀秀嗣という男の実人生を形作ってきた、この二つのテーマを紐解いていく。

生まれた
ときから
バスケット

阿刀 秀嗣

まずは、阿刀選手が生まれ育った環境について聞かせてください。

生まれは、福岡市博多区。3兄弟で、妹と弟がいます。父親は自分と同じ福大大濠高校のバスケ部出身で、バスケのすべては父から教わりました。母親も大学までバスケをやっていたので、長男だった僕はもう生まれた瞬間からバスケットボールと一緒に写真に写っていましたね(笑)。ちなみに兄弟全員バスケプレーヤーで、妹は高校時代ウインターカップで優勝した選手。弟の阿刀竜嗣も、現役のストリートボール選手です。

まさにバスケ一家ですね。幼少期からずっとバスケットを?

物心がついた頃からずっとバスケを続けてきて、中学、高校までは順調に活躍できていたんですが、大学のバスケでつまずいてしまった。20歳の頃に試合に出られない日が続いて、もうバスケを辞めようかと思っていたんです。そんなときに、知人の誘いで出場した3人制のストリートバスケの大会で、かなり活躍することができた。それをきっかけに「やっぱりバスケを続けよう」と立ち直ることができました。そこから、SOMECITYや3x3 PREMIERなどの舞台で10年以上活動を続けています。

平日は
保育園職員

阿刀 秀嗣

大学卒業後の、社会人歴について教えてください。

大学を出た後、東京の会社で3年間、営業の仕事をしていました。その後、実家が経営している地元福岡の保育園に、事務職員として転職しました。学生の頃は、「いつかは家業を継ぐのかな」とぼんやり考えていたんですが、やっぱり社会人としての基礎をちゃんと積みたいという気持ちから、最初は一般の企業に就職しました。そこで得たビジネスの経験は、今も生きていると思います。

阿刀 秀嗣

保育園ではどのような仕事をされているのでしょうか。

事務職員という肩書ですが、人事、総務、経理、庶務までなんでもやります。デスクワークもやるし、切れた電球も取り替えます(笑)。平日は8時に出社してデイリーワークをこなしてからは、書類仕事をしたり、役所に行って話をしたり、日によってさまざま。18時頃まで仕事をして、そこから練習に向かいます。

仕事をする上で大切にしていることはありますか?

一番は、全員が安心できる保育園を運営すること。仕事上、園児や保護者の方とも接する機会が多いので、コミュニケーションは特に意識しています。たとえば、うちは170人園児がいるんですが、170人全員の顔と名前を覚えています。子どもって、実はいろんなことを見ているし、理解している。だから、ただ「おはよう」と声をかけるよりも、「◯◯くん、おはよう」と名前を呼んで挨拶したほうが嬉しいはず。園児であっても一人の人間として接することで、信頼関係や安心が生まれると思っています。

3x3は
唯一無二の
スポーツ

阿刀 秀嗣

バスケットに話を戻しますが、
阿刀選手から見た3x3の魅力とは?

僕にとっての3x3の一番の魅力は、“選手・観客・会場”の一体感です。客席から2~3メートルの距離で、世界レベルの技術やコンタクトが見られるスポーツなんて他にないし、あの迫力は絶対に生で体感しないと損ですね。10分しかない試合時間の中でバンバン点が入って、音楽やMCが会場を盛り上げるあの雰囲気は、他では味わえない。3x3はいろんな場所でやっているので、ぜひ観に来てほしいですね。

選手として、大事にしていることはなんでしょうか。

競技を始めてからずっと大事にしているのは、“熱意”をもって臨むことです。正直、技術だけを見るのであれば、今はNBAでもBリーグでも、ハイレベルなものはいくらでも見れる。でもそうじゃなくて、わざわざ会場に足を運んで“僕ら”を観に来てくれる人のためにすべきことは、全力で自分を表現し、興奮や感動を肌で伝えることだと思っています。観てくれた人に「またあいつらに会いたい」と思ってもらえるように、熱意をもってプレーすることが自分のモットーです。

「はたらく」
ことが
持つ意味

阿刀 秀嗣

阿刀選手にとって、
「はたらく」とはどういうことでしょうか。

バスケでは、選手として自分が目立って注目される側ですが、保育園では逆に、園児や保護者からは普段見えないところで環境を良くしていく「黒子」のような役割。でも、自分が頑張ることで誰かに喜んでもらったり、影響を与えられることは同じだと思っています。特に保育園では小さな子どもの命を預かっているので、単なる「仕事」の枠に収まらない感覚はあります。今の園や子どもたちを守るという仕事は、大きく言えば自分にとっての「使命」。子どもたちがここで充実した時期を過ごし、この先立派に巣立っていけるように、自分の責任を果たしたいと思っています。

阿刀 秀嗣

最後に、これからの目標を教えてください。

抽象的な回答になってしまうんですが、目標は「誇れる自分になること」。昔から自分の周りには、大卒でプロになった先輩や、日本代表になった同級生、会社を興して社長になった後輩など、若くして何かを実現した人ばかりでした。昔はそういう存在が眩しすぎて、自暴自棄になったりバスケから逃げたくなった時期もありましたが、結果的にそのおかげでハングリーな気持ちを持ってここまで戦って来られた。彼らのおかげで目標や挑戦心を持ち続けられるし、今は感謝しかありません。どんなときも“今やれることをやり尽くす”という気持ちで、自己実現を目指していきたいと思います。

阿刀 秀嗣

阿刀 秀嗣(あとう しゅうじ)

1987年7月31日生まれ、福岡県出身。福岡大大濠高、国士舘大卒業後、3x3.EXE PREMIER「SUNS.EXE」、ストリートボールチーム「BALLZY」等で活躍。2019年4月、佐賀県初のプロバスケットボールチームとなる「KARATSU LEO BLACKS.EXE」に入団し、FIBA 3x3 Challengers 2019 南京大会に出場。183cm、80kg。

  • Text by Naotaka Ashizawa
  • Photograph by Masashi Mitsuhashi
  • Website Design by Sonoko Hayashi
  • Art Direction by Junya Sakai
  • Coding by Aki Kuroda
  • Photo Provided by 3x3.EXE PREMIER

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