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齊藤 桃子

子どもたちと共に。
一日を懸命に
生きていく。

齊藤 桃子

SIMON.EXE

2019シーズンを終えたとき、彼女は表彰の舞台に立っていた。個人得点ランキング3冠、WOMEN MIP受賞というタイトルは、まさにニューヒロイン誕生のストーリーを思わせた。しかしそんな華々しい舞台の裏側には、驚くほど自然体で飾り気のない、一人の社会人の姿があった。「ずっとやりたかった」という児童発達支援の仕事。子どもたちに向ける優しい眼差しの奥から、“もうひとつのストーリー”が見えてくる。

3人制
バスケットで
プロ契約

齊藤 桃子

齊藤選手がバスケットを始めたきっかけを教えてください。

初めてバスケットボールに触れたのは、小学校3年生のとき。隣の家に住んでいたお姉さんに誘われたのがきっかけです。それまではスポーツの経験どころか、習いごとをやった経験もなし。両親がバドミントンをやっていたので体育館にはよく行っていたんですが、私はずっと倉庫でかくれんぼばかりしている子でした(笑)。そんな自分が初めてバスケットをやって「楽しい!」と思えた。その日にやると決めて、ミニバスのチームに入りました。それ以来、中学、高校、大学でもずっとバスケ部に所属していました。

学生時代はずっと活躍されていたのでしょうか?

いえ、全然です。昔から怪我が多くて、高校も大学も、半分ぐらいしかまともにプレーできていませんでした。大学でも一年生のときに怪我をして、一年間はマネージャー生活。大学卒業後は3年間、大学職員として働きながらバスケ部のアシスタントコーチをしていました。その間は選手活動をしていなかったので、再開するまではかなりブランクがありました。

齊藤 桃子

アシスタントコーチ時代から、現在に至るまではどのように?

25歳頃から神奈川のクラブチームで2年ぐらいプレーをしていたんですが、あるとき「3人制の試合に出てみないか」と誘いを受け、今のチームの一員として3人制の大会に初めて参加しました。3人制は体の接触が激しいので、その時期から課題だったフィジカル強化のためにウエイトトレーニングも始め、少しずつ試合で通用するように。その後、2019年の5月に正式に「SIMON.EXE」と契約させていただき、2019シーズンから3x3選手として活動を始めています。

児童発達
支援との
出会い

齊藤 桃子

選手として活動をしながら、今はどんな仕事をされているのでしょうか。

大学職員として勤めた後、児童発達支援を行う会社に転職し、4年ほど前から発達障害を持った子どもたちの支援の仕事をしています。0歳から18歳まで通えるデイサービスで、私は2歳から中学3年生までを受け持っています。仕事としては、未就学の子を対象にしたマンツーマンの個別指導や、子どもたちそれぞれの困りごとや悩みごとの手助けをする個別療育、小学生を対象にした学習支援などさまざまです。

齊藤 桃子

なぜ、児童発達支援の仕事を始められたのでしょうか。

最初に興味を持ったきっかけは、小学校の頃に発達障害を持ったクラスメイトがいたことです。その子とよく一緒に遊んでいたんですが、中学進学後は進路が別れてしまって「あの子はどうなったんだろう」とずっと気になっていました。そこから学校の先生の仕事に興味を持つようになり、教員免許をとろうと大学に入りました。その後、教職実習やボランティアで小学校に行ってみると、同じような障害を持った子たちや“グレーゾーン”と呼ばれる子たちがたくさんいることがわかったんです。そこで「この子たちに一番近い場所で力になれる仕事はなんだろう」と考えた結果、今の仕事にたどり着きました。

実際に仕事を始められていかがでしたか?

専門職の方と関わりながら心と身体の発達の仕組みを学ぶことができ、成長していく子どもたちを間近で見られることにもやりがいを感じます。最初は子どもたちを正しく理解できるか不安もあったのですが、一人ひとりと向き合うほどにいろんなことを知ることができ、今は楽しむ余裕も持てるようになりました。特に嬉しいのは、その子がどんどん変わっていく姿をご家族が喜んでくださること。お母さんから「聞いてください、最初は大変だったけど今はこんなことができるようになったんです」と嬉しそうに言っていただいたり、子育てに前向きになっていく姿を見ると、この仕事の喜びを感じます。

無駄な時間は
とことん削る

齊藤 桃子

仕事と選手の兼業は、どのようにされているのでしょうか。

平日は9時に出社してから、早い日で18時半ぐらいに終業して練習に向かっています。練習は、普段は週4~5日ぐらいで、シーズン中は週6日ペース。5人制バスケをやっていた頃の活動は週末だけでしたが、3人制に移行してからは平日も活動できるようになって、毎日が楽しみ(笑)。仕事が忙しい時期は両立が大変ですが、スケジュールを切り詰めて仕事をすることもモチベーションになっています。日中も「無駄な時間を全部削ろう」という意識で業務管理をしていると、自然と残業も減るようになった。競技を始めてから仕事の質が上がったと感じています。

齊藤 桃子

そんな中で、2019年はWOMEN MIP受賞など大活躍でしたが、
初年度のシーズンの感想を教えてください。

正直、MIPを受賞したときは本当に驚きました。でも、これはチームのみんなが自分を生かしてくれたおかげなので、個人賞というよりはチームで獲得した賞だと思っています。私はこれまで、誰かのために何かをすることが好きだったんですが、3x3選手になって思ったことは「誰かに応援してもらえること」がこんなにも幸せなことだったんだ、ということです。会場で観客の方から「頑張ってね」と声をかけてもらったり、SNSで試合の感想を書いてもらったり、たくさんの人にバスケットを楽しんでもらえていることが本当に嬉しい。3人制バスケットの普及も含めて、競技の盛り上がりに少しでも貢献できたら、と思っています。

「今日も
がんばったね」
と言えるように

齊藤 桃子

これからの目標があれば教えてください。

私はあまり目標を立てるのが得意ではないのですが、毎日自分にできる精一杯のことをやって一日を終えたいと思っています。自分が受け持つ子どもたちに対しても、「今日はできた」「がんばった」と思ってその時間を終えてほしい。いろんな事情を抱えている子たちなので、荒れているときもあるし落ち着いているときもある。けど最後に、「今日もよくがんばったね」「こんなにがんばったのはすごいことだよね」と言葉がけができるような時間を過ごせるよう努めています。一日一日を一生懸命過ごすことは、私も子どもたちも変わらないんだと思っています。

齊藤選手にとって、
スポーツを続けることの価値とはなんでしょうか。

あるとき試合を観に来てくれた小学生ぐらいの子が、「このまえの試合を観てミニバスを始めました」と言ってくれたことがあったんです。そうやって誰かのバスケットを始めるきっかけだったり、観るきっかけになってもらえれば嬉しいですね。私は他のスポーツは何もできないし、バスケしかできない。だからこそ、大好きなバスケで誰かを勇気づけたり楽しい気持ちになってもらえたら、こんな幸せなことはないなと思っています。

齊藤 桃子

齊藤 桃子(さいとう ももこ)

1990年4月10日生まれ、北海道出身。桐蔭横浜大卒業後、大学職員を経て、2015年より児童発達支援業に従事。同時期、神奈川県内のクラブチームで選手活動を開始。2019年4月、「SIMON.EXE」と契約。3x3.EXE PREMIER参戦初年度となる2019シーズン、個人得点ランキング3冠を達成し、WOMEN MIP(MOST IMPRESSIVE PLAYER)受賞。現在チームの主軸として活躍中。167cm、53kg。

  • Text by Naotaka Ashizawa
  • Photograph by Mao Shimizu
  • Website Design by Sonoko Hayashi
  • Art Direction by Junya Sakai
  • Coding by Aki Kuroda
  • Photo Provided by 3x3.EXE PREMIER

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