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DJ NECO

スポーツDJが紡ぎ出す
“一体感”の意味。

DJ NECO

3x3.EXE PREMIER DJ

posted 2020/11/04

生まれ育った土地・栃木を拠点に、クラブやバーのみならず、夏祭りなどの地域イベントから、3x3.EXE PREMIERやアイスホッケーといったスポーツシーンまで幅広く活躍するDJ NECO。平日は特別支援学校(知的障害教育校)で教員を務めている。彼の提供する音楽は、大人も子どもも、音楽好きもそうでない人も、選手も観客も、あらゆる人を巻き込み、さまざまな"常識"を覆していく。

特別支援学校の
教員に

DJ NECO

現在はDJとして活躍されているNECOさんですが、音楽は子どもの頃から好きだったのですか?

洋楽好きな母、R&B好きな父の影響で、幼少期からいろんなジャンルの音楽を聴いていました。特に洋楽が好きでしたね。初めてCDを買ったのは小学校3年生のときで、ディスコのオムニバスCDを購入しました。洋楽ばかり聴いていたのは、ちょっとかっこつけの部分もありますけどね(笑)。音楽以外で学生時代に夢中だったのはサッカーで、小学校から大学までプロを目指して本気でやっていましたよ。高校のときは県3位になり、その後特待生として名古屋の大学に入学し、東海リーグでプレーしていました。

教員を目指そうと思ったきっかけは?

高校の部活の顧問の先生がとても芯のある方で、すごく尊敬していたんです。教員をしながら当時のJFL所属の選手(栃木SC)として活躍していて、僕たちは日頃から試合に出て結果を残している先生の姿を見ていました。だから、どんな指導にも説得力がありましたね。自分も生徒の目標になるような教員になりたいと思い、大学で教員免許を取ることにしました。

DJ NECO

特別支援学校での教員生活は9年目とのことですが、現在のお仕事内容を教えてください。

うちの学校は、知的障がいのある生徒が通う学校です。小学部・中学部・高等部があり、発達段階や障がいの状況に応じて、日常生活の指導、国語や算数などの教科、職業の知識など幅広く教えます。現在は高等部を担当していますが、生徒の障がいのレベルはさまざまで、異変があればすぐに気づけるよう視野を広く持つ必要がありますね。専門の保健体育以外に音楽や総合的な学習の時間などの授業も行いますし、行事の準備もあって忙しい環境ですが、何かできたら純粋に喜び、音楽を聴いたらノリノリで踊るような素直な子どもたちと毎日を過ごせるのが純粋に楽しいです。伸びしろは無限で、どこで芽が出るかわからない彼らの可能性にワクワクしますね。

DJのキャリアを
駆け上がる

DJ NECO

DJを始められたのは24歳からとのことですが、その経緯を教えてください。

DJの魅力に取りつかれたのは、大学3年生のとき。名古屋のクラブに行ったんですが、サッカーが人生のすべてだった僕にとっては、こんな世界があるのかと衝撃的でした。曲によってフロアの雰囲気が変わり、初めて会った人でも皆同じ気持ちになれるのが、すごく良いなと思いましたね。その熱度のまま大学卒業後に地元のクラブに行ったら、生意気ながら都会とのレベルの差を感じたんですよ。それがすごくもったいないと思って。常に新しい発見があるような質の良い曲を流し、自分の力で地元の音楽カルチャーを変えようと思いました。数カ月独学し、地元の大きいクラブに直談判してプレーさせてもらい、DJとしてのキャリアをスタートしました。

その後、2018年に京都で開催された「DJ THE NEXT GENERATION BATTLE OF KYOTO」で優勝されていますが、その要因は何でしょう。

評価の基準は、技術、観客の盛り上がり、選曲のセンスでしたが、優勝できたのは、自分の色がしっかり出せたからだと思います。僕は良いものは良いという考えで、HIP HOP、R&B、ロックなどジャンルに関わらず、自分が心から良いと思えるものを選曲します。いろいろな人のサポートのおかげで、大会では思いっきり自分を表現することができましたね。優勝後は、地元の新聞記事やNHKの番組に取り上げてもらえたので、多くの地元の人、そして学校の先生たちが僕の活動を知ってくれました。DJは良いイメージがないということもあり同僚には黙ってたんですけど、みんな暖かく応援してくれてうれしかったですね。

勝利をも
左右する、
音楽の力

DJ NECO

2019年から、3x3.EXE PREMIERやアイスホッケーチームにてスポーツDJとしても活躍されています。プレーしてみた感想をお聞かせください。

クラブ以外でプレーできるのは、DJのカルチャーを広める機会となるので、うれしかったです。3x3.EXE PREMIERでかける曲は1日に150曲以上。PCで事前に曲をジャンル分けしておいて、ゲームの展開を見ながら瞬時に曲を選びテンポも変えます。試合が停滞したときはMCの方と連携を取って曲を盛り上げることもあり、それで試合が大きく動く場合もあります。観客のテンションが上がれば歓声が大きくなり、選手の士気も高まるので試合の流れにも影響するんです。そのライブ感がスポーツDJならではの魅力ですね。

試合中にこだわっていることはありますか。

会場にいる全員に、スポーツも音楽も楽しんでほしいと思っているので、選手の国籍や年齢層を見て好きそうな曲を準備したり、客層に合わせてわかりやすい曲をかけたりします。飽きてしまわないよう、試合の流れはもちろん、休憩中、試合中、タイムアウト中など全体を通して曲の波をつくったりもしますね。決勝など、ここぞという場面では、そのチームの会場でよく流れる曲を事前にリサーチしておき、盛り上がりが最高潮になるように仕掛けます。ただし、みんなが喜ぶものをそのままかけるのではなく、自分のエッセンスを加えるようにしています。それが他のDJとの違いで、僕がDJをする意味ですから。

DJ NECO

試合の盛り上がりにはDJの選曲がとても大事なんですね。試合前の準備も含めるとかなり大変そうですが、教員の仕事とどのように両立されていますか。

大変ではありますが、どちらも好きで楽しいことなんで苦にはならないです。むしろ、DJの準備をするために仕事を効率的に終わらせたり、DJをやるぶん仕事で気が引き締まったり。良い相乗効果になっていると思います。2つの仕事をしているからこそ、それぞれで良い結果が出せているのかもしれません。教員をしていると子どもの表情から感情を察することが多いですが、その力がDJとして場の雰囲気を読むときに役立つこともあります。一方で、授業でDJを取り入れたこともありました。曲に合わせて表情をころころと変える生徒たちを見て、改めて音楽のすごさを感じましたね。

人と人を
つなぐ

DJ NECO

教員として今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。

僕の信念は、できることを伸ばすこと。今後も授業には楽しいことをたくさん盛り込み、いっぱい褒めてあげながら子どもたちが意欲的に学習できるようにしたいです。授業には教員が3~4名つくんですが、生徒だけでなく、先生も楽しませるように意識しています。観客を巻き込んで試合やイベントを盛り上げるDJと一緒ですね。結局僕が1番楽しんでいるかもしれません(笑)。

DJとしての今後の目標についても教えてください。

DJの世界大会で優勝したいです。栃木からでもトップレベルの音楽は発信できるんだというのを形で示し、それが誰かの活力になればうれしいです。また、DJとして活動の場はさらに広げていき、地元のいろんなDJが活躍できる機会を増やしたい。それが栃木にDJのカルチャーをもっと根付かせることにつながると思います。以前、地元の盆踊り大会でDJをしたときに、自分の生徒が街の人たちと輪になって踊っているのを見て、音楽の力を実感したんです。「共生社会」っていうと難しく感じるけど、音楽こそそれを実現するきっかけになるんじゃないですかね。その場に合う音楽を流し、年齢や国籍、健常者か障がい者かなども関係なく、誰もが一緒になって楽しめる空間をつくっていきたいと思っています。

DJ NECO

DJ NECO(でぃーじぇー ねこ)

1990年1月17日生まれ、栃木県出身。2012年から教員、2014年にDJとしてのキャリアをスタート。栃木県宇都宮市を中心に活動中。80's~から現代の音楽までALLジャンル幅広くプレーすることを得意としている。2018年に京都で開催された「DJ THE NEXT GENERATION BATTLE OF KYOTO 」では優勝。MIXCD.DVDの制作活動も行っている。2019年から3x3.EXE PREMIER のDJを務め、H.C.栃木日光アイスバックスのアリーナDJも行い、スポーツシーンでのDJ活動も精力的に実施。

  • Text by Ayano Morimoto
  • Photograph by Masaki Yamauchi
  • Photo Provided by 3x3.EXE PREMIER

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