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近内 瞳

足が止まる日まで、
“今”を楽しみ続けたい。

近内 瞳

SHOEHURRY.EXE

posted 2021/01/19

「人を倒してやろうとは思わないんですが、自分にだけは負けたくないんです」──これまで、実業団、Wリーグ、3x3.EXE PREMIERと、さまざまなカテゴリーに自ら飛び込み、新しい挑戦を続けてきた。ときに周囲を驚かせる決断や行動から豪胆無比な印象を受けるが、本人は「自分に自信がないしネガティブ」と意外な自己評価だ。日々葛藤やジレンマを感じながらも、それでもなお彼女を突き動かし、輝かせるものとはなにか。これまでの歩みを振り返るように、少しずつ語ってくれた。

戦力外
通告からの
再出発

近内 瞳

高校卒業後にWリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)でバスケットキャリアをスタートされた近内選手ですが、その経緯について教えてください。

高校3年のときに初めてインターハイとウインターカップに出場できたんですが、それがきっかけで地元チームの「日立ハイテク クーガーズ」から声をかけていただき、卒業後に入団しました。ただ、Wリーグではなかなか試合に出られなくて、3年目で戦力外通告を受けました。それでもチームに貢献したいという思いから、半年間はマネージャーとしてチームをサポートしていたんですが、ふと練習を見ながら、「体が動くのに、自分は何をしているんだろう」と思ったんです。やっぱりプレーがしたいという気持ちからチームを退団させていただくことになり、次年度から大阪の大学に進学することになりました。

一度社会人になってから、なぜ大学へ?

ひとつはバスケのため、もうひとつは興味のあった養教(養護教諭)の勉強をするため。せっかく違うことをするなら自分がやりたいことをやりたいなと思って、バスケをしながら保育士と幼稚園教諭の資格をとろうと思い、進学しました。もともと入学したのは短大で、卒業後は地元に戻って保育士か幼稚園の先生になろうかなとぼんやり考えていたんですが、卒業前にバスケ部の先生から「もう2年やってみないか」とお誘いを受け、4年制の大学に編入してバスケを続けることになりました。そこで自分を評価いただいたおかげで本気でバスケを続けられたので、今振り返っても大きなターニングポイントだったと思います。

近内 瞳

大学卒業後は、どういった道へ?

卒業後は静岡・沼津にある製造業の会社に入り、実業団チームでプレーをしていました。ただその会社はそこまで本気でバスケに取り組んでいるわけではなく、どちらかというと仕事がメインで、日中は総務の仕事をしながら細々とバスケを続けていました。実業団でプレーして2年ほど経った頃には熱が冷めてきて、「もうバスケットを辞めようかな」と思っていたんです。そんなときに、Wリーグの「山梨クィーンビーズ(以下、山梨QB)」がチームを再編するという話があり、誘いを受けて今のチームに入団することになりました。

8人で
Wリーグを
目指す

近内 瞳

バスケットを辞めようと思っていたなかで、もう一度Wリーグに挑戦しようと思った理由は?

2013年に山梨QBの母体企業が撤退して、チームが解散になったんです。地元の人たちの署名活動もあってチームの再建が決まり、もう一度ゼロから選手を集めていた時期でした。そんなときに山梨QBに加入が決まっていた実業団のチームメイトから「一緒にやらないか」と誘われたことがきっかけです。もう体も動かないし辞めようと思っていたけど、最初の日立ハイテクで結果を残せなかった悔しさがずっと残っていたんですよね。トップでやれる機会はもう二度とないだろうし、「最後のチャンスだと思ってやってみよう」と思ったんです。

近内 瞳

山梨QBに加入し、環境はどのように変化しましたか。

2014年発足時のメンバーはたった8人で、Wリーグに復帰するためには関東実業団リーグでベスト4以上になることが条件でした。みんな仕事が忙しいなか参加していたので、練習も3、4人しか集まらないこともザラ。私も生活を山梨に移し、法律事務所やカフェでかけもちのアルバイトをしながら必死でプレーを続けました。それでもなんとか2年目にリーグ優勝を果たし、Wリーグに復帰することができました。10年ぶりにWリーグの舞台に戻って来られて、感慨深い気持ちになったことを覚えています。今年でチーム6年目になりますが、現在は山梨の病院で医療事務の仕事をしながらプレーしています。

3x3.EXE
との
出会い

近内 瞳

その後、2020年シーズンから3x3.EXE PREMIERに参戦されていますが、その経緯は?

一度、3x3の大会に出場したことがきっかけで声をかけていただき、3x3.EXE PREMIERでプレーする機会をいただきました。山梨QBも6年目になり、ちょうどなにか新しいことにチャレンジしたいと思っていた時期だったので、誘っていただいて嬉しかったですね。今の「SHOEHURRY.EXE」のメンバーとしてプレーすることになり、「3x3.EXE PREMIER JAPAN 2020 CUP」で初めて公式戦でプレーしました。

3x3.EXE PREMIERの公式戦でプレーされた感想はいかがでしたか?

やっぱり、5人制とはルールも違うし、スピード感やプレーの質も含めて、まったく別のスポーツだなと思いました。人数が少ないぶん、自分一人で局面を打開することもできるし、味方を生かすこともできる。すごく頭を使う競技だなと感じました。デビュー戦は、10分があっという間でしたね。思ったことがなかなかできないまま負けてしまって悔しかったですが、もっと連携を深めて勝ちにこだわっていきたいと思いました。

近内 瞳

働きながらWリーグ、3x3のかけもちでプレーを続けるのは大変では?

仕事との両立自体はもうずっと続けているので気持ち的にはぜんぜん苦にならないですね。体はもうキツいですけど(笑)。仕事をしていてよかったなと思うことは、同僚が応援してくれることですね。「この前の試合すごかったね」とか、「頑張ってね」と声をかけてもらえることが嬉しいし、力になる。家族やファンの方もいつも応援してくれるから、「私もまだ頑張っていいのかな」と思えます。いろんな人に支えられて今の生活があるので、本当に感謝しています。

今を生き、
今を楽しむ

近内 瞳

これまでたくさんのチャレンジをされてきた近内選手ですが、モチベーションを持ち続けられる理由は?

私、性格がネガティブなんで、毎日落ち込んでますよ(笑)。やってもやっても上手くならないし、体も動かないし……。落ち込んで、周りの若い子たちを見て刺激を受けて、また頑張ろうと思う。で、また落ち込むの繰り返し(笑)。それでもここまでやってこられたのは、人には負けても「自分には絶対負けたくない」という気持ちがあったから。新しい環境に行くことは勇気がいるし大変なことも多いですが、いざそういう強い気持ちを持っていくと、必ず応援してくれる人と出会える。そしてまた周りの人のために頑張ることが自分のモチベーションになっていますね。

これからの目標を教えてください。

今後なにか違うことをやりたいなと思っているんですが、まだ模索中です。これまで自分に負けない気持ちを持ってやってきましたが、そういう気持ちって年齢を重ねるにしたがって弱くなっていくと思うんです。きっと、そのときが競技の世界を辞めるときなんだろうなと。そしたら今度は自分以外の人に還元していくことに繋げられたらいいなと思います。私は起こることすべてに意味があると思っていて、だからこそ今をしっかり生きたいし、楽しみたい。今は競技活動を精一杯続けながら、自分にできる新しいことを探していきたいと思っています。

近内 瞳

近内 瞳(こんない ひとみ)

1986年7月27日生まれ、茨城県出身。土浦日大高校卒業後、Wリーグ「日立ハイテク クーガーズ」に入団。2008年にチームを退団し、大阪人間科学大学に進学。卒業後は実業団でのプレーを経て、2014年にWリーグ「山梨クィーンビーズ」に入団。2020年には3x3.EXE PREMIER「SHOEHURRY.EXE」に加入。現在は病院の医療事務として勤務しながら、Wリーグ、3x3.EXE PREMIERでプレーを続ける。170cm、63kg。

  • Text by Naotaka Ashizawa
  • Photograph by Masaki Yamauchi
  • Photo Provided by 3x3.EXE PREMIER

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