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角田 大志

非エリートが、
異色のプロになるまで。

角田 大志

HACHINOHE DIME.EXE

posted 2021/06/08

プロバスケット選手であり、プロ雀士。「型やぶり」と表現するには十分すぎる肩書きだ。くわえて3x3でのパワフルで雄々しいプレースタイルからも、さぞ破天荒で豪快な人生を送ってきたのだろうと想像を膨らませたが、その予想はあっけなく覆された。「自分は何も成し遂げたことがなかったし、空っぽだったんです」過去の自分を回顧して、そう語る。曰く、「劣等感の塊だった」という浪人時代から、一転して恐れを知らぬ挑戦者に変貌を遂げた背景には、何があったのか。自らを「雑草」と称する男のこれまでの歩み、これからの道について訊いた。

ゼロからの
出発

角田 大志

まずは、角田選手がバスケットボールを始められたきっかけを教えてください。

僕、バスケットのデビューが遅いんですよ。初めてプレーしたのは、高校1年の夏終わりぐらいですかね。もともと僕はバレーボール部だったんですが、バスケ部の友人から「人が足りないから来てくれ」と頼まれて参加したのがきっかけです。本当にド素人だったので、とりあえずゴール下のシュートの打ち方だけ教わったんですが、初めて出た試合で54点とったんです。バレーをやっていたので、リバウンドを取る力がけっこうあったみたいで、「俺、バスケの才能あるな」って思いました(笑)。そこからバスケットが楽しくなっていって、高校2年の春頃にバレー部からバスケ部に移りました。とはいえ、当時部員は7、8人しかいない都大会予選3回戦止まりの弱小校だったので、卒業してからバスケットでプロを目指すなんてまったく考えていなかったですね。

高校卒業後は、どのような進路に進まれたのですか?

卒業時点で特にやりたいことがないまま、実家が医師家系で長男だからという理由で、医学部を受験することになりました。ただそれまでろくに勉強したこともない自分が受かるはずもなく、2浪して受験するも失敗。モチベーションのないままの浪人生活に限界を感じ、医師の道を諦めました。その後も無気力な状態で昼夜逆転のニートのような生活を送っていて、精神的にも最悪の状態でした。高校を出てから2年以上誰とも接しない生活を続けていたので、「とにかく外に出なきゃ」という気持ちでアルバイトを始めましたが、それでもまだ将来は何も見えないまま。そんな自分を見かねた友人から突然、「お前はこのままじゃダメだ」と、東南アジア一周の旅に連れ出されたんです。初めてバックパック一つでいろんな国を旅したんですが、各国で逞しく生きる人たちとのふれあいや出来事を経験して、それまでの自分がいかに温室育ちだったかと思い知らされました。そこから、小さなことで悩んでいる暇があったら行動するほうがいい、と思うようになり、少しずつ意識が変化していきました。

角田 大志

2年間人と接しなかった環境と比べると、大きな変化ですね。その後はどんな行動をされたのでしょうか。

帰国後に、「シンガポールにあるマーケティングのベンチャー企業が人材を募集している」という話を姉から聞き、面接を受けてみたところ、自分を気に入ってもらえて採用になったんです。仕事としてはインターネット広告のコピーライティングやメルマガの配信などで、僕は日本にいながら在宅のリモートワークという形で働いていました。マーケティングの知識どころかPCを使った仕事の経験もなかったので、最初はメール一通作るのに丸一日かかるレベルでしたが、少しずつ学びながら仕事を楽しめるようになっていきました。その会社は「納期さえ守れば、仕事の進め方や働く時間は自由」という方針だったので、人から決められたことをやるのが苦手だった自分にはすごく合っていたんです。そこで初めて、「自分の意思で物事を決めて行動する」ということができるようになったのかなと思います。

ストリート
から
3x3へ

角田 大志

お仕事が軌道に乗った一方で、バスケットの競技活動を本格的にスタートされたのはいつ頃ですか?

22歳のときに、人に誘われてストリートボールの大会に出たんです。そこで初めて3人制バスケットボールをプレーして、こんな世界があるのかとびっくりしたことを覚えています。5人制と違って3人制はほとんどが1対1の局面なので、そこで相手とバチバチぶつかり合う感じがすごく楽しかった。その頃は体重も平均的だったんですが、3人制を始めてから当たり負けしない体を作ろうとフィジカルトレーニングを始めました。それまで自分は人生で何かを成し遂げたことがなかったので、体を鍛えたり1対1で勝てるようになっていくうちに、成長を肌で感じることができて嬉しかったですね。初めてプロテインを一袋使い切ったときには、今まで感じたことのない達成感がありました(笑)。

角田 大志

その後、2019年にHACHINOHE DIME.EXEに加入されました。3x3参戦の経緯は?

ストリートボールでプレーしていた当時、最初の会社の元上司と一緒に輸入物販の事業で独立したんですが、新しい仕事を始めて半年ほど経った頃、たまたまDIMEの方からお誘いの話をいただいたんです。そこでDIMEや3x3.EXE PREMIERのお話を聞いて、「挑戦したい」と直感的に思いました。エリートでもなんでもない自分が、バスケット選手になれるチャンスなんてもうないだろうと思ったんです。せっかくやるなら中途半端にせずバスケットに専念しようと思い、会社も辞めて個人事業に切り替えました。2018年はTRプレーヤーとしてPREMIERに参加し、2019年から正式にHACHINOHE DIME.EXEに加入しました。

角田 大志

3x3.EXE PREMIERのどこに魅力を感じられたのですか?

それまでプレーしていたストリートボールはどちらかというと個人が前に出る文化で、自分でゴリゴリ点をとるスタイルだったんですが、3x3.EXE PREMIERはより競技性が強く、仲間に点をとらせるためにスクリーンをかけたり、「チームで戦っている」という印象でした。自分の感情だけでなく、お客さんが見ているなかで最後まで諦めない姿勢だったり、プロ意識を持って戦えることに魅力を感じています。さっきの筋トレの例でいうと、82kgから3年で104kgまで増量したんですが、当たり負けしなくなった反面スピードが落ちて、思うように動けなくなってしまった。そのときに、これはプロ選手として失格だと痛感しました。そこから体を絞り、結果的にリバウンドやスピードなどパフォーマンスがぐっと上がったんですが、それを機にプロ意識というものをあらためて考えるようになりましたね。

興味を
持ったら
即行動

角田 大志

現在、競技活動の他に「negobALL」という活動に参加されていますが、具体的にどんなことをされているのでしょうか。

negobALLは、全国を旅して人や地域の情報を発信したり、チャリティーを行ったりする活動なんですが、参加のきっかけは「EPIC.EXE」のGMでnegobALL発起人のikkiさんと知り合ったことです。もともと慈善活動に興味があって、バスケット選手として地域の方や子どもたちになにか貢献できたらと思っていたので、この活動を知って「ぜひやらせてほしい」と直訴しました。これまでの活動としては、山梨の養護施設に洋服やスポーツ用品を寄付したり、地元の子どもたちとバスケットをしたり、あと、新型コロナウイルスの影響で移動ができなくなってからはネットラジオも始めました。チャリティーや交流活動を通じて、バスケット以外の業界の方と関わる機会も増え、自分の世界がどんどん広がっていると感じます。

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それから、これは触れずにはいられないのですが、角田選手は日本プロ麻雀連盟所属のプロ雀士でもあるとか。バスケット選手がなぜプロ雀士に?

情報がゴチャついててすいません(笑)。今年(2021年)の3月にプロテストに合格してプロ雀士になりました。麻雀は学生時代に覚えて、社会に出てからも月に一度ぐらいのペースで遊び程度にやっていたんですが、コロナ禍でバスケットがまったくできなくなって、ネット麻雀を始めたんです。するとやっていくうちに面白くなっていって、「せっかくやるならプロを目指してみるか」と(笑)。麻雀って、昔はアングラなイメージがあったと思うんですが、今は競技麻雀がプロスポーツ化していて、「Mリーグ」っていう公式のプロリーグがあるんです。単純に強くなっていきたいというのもありますけど、自分がそこに入っていくことによって、競技としての麻雀をもっといろんな人にも知ってほしいなと思っています。

失うものは
何もない

角田 大志

3x3や麻雀など多方面で精力的に活動されていますが、共通して大事にされていることはありますか?

僕が一番大事にしているのは、やっぱり気持ちの部分ですね。バスケットで何の実績もない超雑草の自分が、頑張りと気持ちだけでプロになれた。それはやっぱり、「このボールを絶対にとってやる」という気持ちだったり、ラスト2分の一番キツいときに戦えるかどうかで結果が変わってくるんだと思っています。それから麻雀や私生活も含めて、今は「好奇心があるかぎり、やれることは全部やろう」と思って行動しています。思い返せば浪人時代は劣等感しかなかった自分ですが、「なんでも自分で決めていいんだ」と気づいてから、すごくポジティブになれた。それまでは何もかも中途半端だった自分がコンプレックスだったけど、「中途半端でもやらないよりやったほうがいい」と今は思えるようになりました。

角田 大志

最後に、これから先の目標があれば教えてください。

まずはHACHINOHE DIME.EXEとしてのRound優勝が目標です。良い状態で試合で活躍して、チームの優勝に貢献したいですね。あと個人の目標としては、いつか3x3の日本代表になってみたいと思っています。今、TOKYO DIME.EXEの方と一緒に練習しているんですが、落合選手など日本代表選手が近くにいるとやっぱり憧れを感じるし、目標にもなります。それこそエリートじゃない自分が日本代表にでもなれたら、同じような境遇の人の希望にもなるんじゃないかなと。それから麻雀の方も、賞金が出る大会で結果を出して上を目指していきたいですね。今はバスケットも麻雀も、全力でやり続けていればきっと何かにつながると信じてやっています。失うものは何もないし、あのときやっておけばよかったと後悔するぐらいなら、ぜんぶ挑戦したい。そういう意味で、今が人生で一番楽しいですね。とにかく今は、自分がやりたいと思ったことに全力で挑戦していくのみです。

角田 大志

角田 大志(かくた たいし)

1994年1月26日生まれ、東京都出身。聖徳学園高校卒業後、ストリートボールチーム「Commander Ginyu」に加入し、SOMECITY等でプレー。2019年、「HACHINOHE DIME.EXE」と契約し、3x3.EXE PREMIERに参戦。また競技活動の傍ら、旅を通じて人と人の繋がりや各地のカルチャーなどの情報を発信する「negobALL」の活動を行う。2021年には日本プロ麻雀連盟のプロテストに合格し、プロ雀士としても活動中。189cm、96kg。

  • Text by Naotaka Ashizawa
  • Photograph by Mao Shimizu
  • Photo Provided by 3x3.EXE PREMIER

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