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武井 晋平

地域と3x3の発展は、
変化の先にある。

武井 晋平

3x3 Referee

posted 2021/06/29

生まれ故郷である栃木県足利市に貢献したい。その思いから、武井は大学卒業後、足利商工会議所の職員になった。商工会議所とは、地域活性化を推進する経済団体のこと。地域の中小企業や市民と日々向き合い、地域を守っていく。バスケットボールの試合では審判員を担当し、「安心感」を与える存在として活躍しているが、武井が大切にしている価値観を聞いたところ、返ってきたのは、意外にも「変化」という言葉だった。

審判員を
目指して

武井 晋平

バスケットボールとの出会いについて教えてください。

スラムダンクのアニメにハマったのをきっかけに、小学校4年生からバスケ部に入り、高校生まで選手としてプレーしていました。もともと球技が苦手だったんですが、バスケだけは唯一夢中になって取り組めましたね(笑)。高校のバスケ部は人数が少なく、強豪校でもありませんでしたが、部長を務め、がむしゃらにプレーしていました。大学からは審判員として一本でやっていこうと決めていたので、集中するために部活には入りませんでした。

大学から審判員に注力しようと決めた理由は?

審判員が単純に面白かったんです。初めて審判員をしたのは、中学2年生。後輩が1年生大会を控えていて、練習試合をすることになったとき、ちょうど顧問の先生がおらず、私が審判員をすることになりました。なんとなく流れで引き受けましたが、いざやってみると、選手とはまったく異なる客観的な立場から試合に関わり、笛を吹いて進行していくのが、とても新鮮で面白かった。審判員が大切な役割であることも身を持って実感しました。高校でも練習試合などで審判員をしていましたが、いよいよ本格的に審判員の道を歩みたいと思うようになったので、大学1年生でB級審判の資格を取得しました。週末の大会が楽しみで仕方なく、当時はバスケのことばかり考えていましたね。

3x3で
笛を吹く

武井 晋平

3x3で審判員をすることになったきっかけを教えてください。

2016年に宇都宮市で開催された「2016 FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Masters」です。会場は、宇都宮市の中心街にある二荒山神社前のバンバ広場。世界No.1のクラブチームを決めるために、海外から複数のチームが集まりました。私の役目はテーブル・オフィシャルズ。タイマーで競技時間を計ったり、得点やファウルを記録したりしていましたが、世界トップレベルのプレーがすぐ目の前で繰り広げられ、非常に大きな衝撃を受けましたね。自分の地元の、しかもバスケをやるイメージがないような場所で、エキサイティングな試合が開催されたことに感激し、3x3に一気に惹きこまれたことを覚えています。

3x3の試合を盛り上げるために、審判員としてこだわっていることはありますか?

一つひとつのプレーを自分の目で確かめて、ルールに照らし合わせ、きちんとジャッジしたいというのは前提に、「リスペクト・フォー・ザ・ゲーム」の精神のもと、選手とのコミュニケーションを大切にしています。試合の展開が盛り上がってくると、選手がジャッジに納得できず、取り乱してしまう場面も増えてきますが、それは仕方のないこと。きちんと向き合って説明を行い、落ち着いてプレーに戻ってもらうようにしていますね。試合の合間でルールの確認なども行います。そのほかのスタッフや審判員とも対話しながら、関係者全員が一体となり、より良い試合を作れるよう働きかけています。

武井 晋平

円滑な試合運びのために、常に周囲に気を配り、進められているのですね。審判員としてのキャリアは10年以上となりますが、どうしてここまでモチベーション高く続けてこれたのでしょう?

何年も続けていると、反省する日や悔しい思いをする日が何度もありました。その度に、審判員は大変な役目だなと感じます。しかし同時に、その経験を生かして次の試合ではもっと良い判定をしようという意欲もわいてくるので、長期的に見ると、失敗経験がモチベーションを高めてきたと言えるかもしれません。全てのジャッジが正しく、審判員が100点を取ることはないと思っていますが、できるだけ勝者も敗者も100%納得できる試合に近づけるようにしたいです。そのために私ができることは、判定力を磨き、とにかく審判員の技術を高めることです。

守りたい
ものと、
変わるべきもの

武井 晋平

審判員として活躍しながら、普段は足利商工会議所で勤務されています。お仕事内容について教えていただけますか?

商工会議所は、地域の企業と地域全体を元気にするための経済団体です。名前から堅いイメージを持たれがちですが、足利花火大会といった地元のお祭りの運営なども行っており、業務内容は多岐に渡ります。私が10年近く携わったのは、テレビの仕事。地場企業やイベントの情報を発信する地元のケーブルテレビの番組を担当し、テレビ局の方と協力しながら、編集をしたり、ナレーション担当をしたりしていました。現在は、商業観光課に所属し、なかでも商工会議所青年部という、会社の後継者や経営者、若手社員が集まるグループの事務局を担当しています。市民を元気づけるイベントや各社の事業の発展につながる企画を行うことが仕事です。

かなりお仕事の範囲が幅広いですね。商業観光課では具体的にどのような企画をされているのですか?

最近は新型コロナウィルスの影響で自由に外出しづらいので、そんななかでも非日常を味わい、楽しい時間を過ごしてもらいたいと考え、「足利ロケめしアター」というイベントを開催しました。商業施設の屋外駐車場に巨大スクリーンを立て、車内で映画を鑑賞できる「ドライブインシアター」。それから、足利市ではドラマや映画の撮影が数多く行われているということもあり、ロケの際に出演者やスタッフに提供される「ロケ飯」をテーマとしたお店を出店させました。
一方で、過疎化や経営悪化などで、困っている事業者を助ける仕事もあります。例えば毎日通っているラーメン屋さんの補助金申請を手伝ったことも。結果的に、古びた店舗の内装をリニューアルし店舗が新しく生まれ変わったときは、店主もお客さまも喜んでくれて嬉しかったですね。どんな仕事でも、誰かが喜んでくれる姿が自分の活力になります。

武井 晋平

地域活性化というテーマにさまざまな角度からチャレンジされていますが、お仕事を通して、地域を盛り上げるためには、どういった姿勢が大切だと思われますか。

私はもともと、地域に貢献したいという思いからこの職業に就きました。県外に出た友人たちがいつ戻ってきても、変わらずあたたかく、受け入れる存在でありたいです。だから、今まで積み重ねてきた歴史や伝統、時間を大事に守っていきたいなと思います。しかし、活性化という観点だと、古いままでは不十分です。「不易流行」という考えのもと、積み上げてきたものを残しつつ、新しいことを取り入れて、地域を元気にしていきたいですね。実をいうと、これは審判員としても大事にしていること。5人制バスケや3x3で培ってきた経験をベースに、新しいルールやトレンドを常に取り入れ、自分自身が進化していくことで、より良い試合をつくっていきます。

発信者という
立場から

武井 晋平

栃木県バスケットボール協会の審判委員会で副委員長されるなど、多くの役割を担っていますが、そこでのミッションを教えてください。

栃木県審判委員会では、県内の審判運営の全般を担当するほか、来年に迫った栃木国体に向けた準備も今後本格化してくる見込みです。JBA(日本バスケットボール協会)審判委員会の3x3部会では、東日本エリアを担当し、ルールやマニュアルなどを全国の審判員にしっかりと伝えていきながら、全国に3x3を普及する重要なポジションを担っています。まずは3x3を身近に感じてもらうことから始め、より良い試合を多くの人に届けたいですね。ゴールさえ設置できれば、学校や商業施設などどこでも開催できる競技なので、いろんな地域の方々に楽しんでもらえたらと思います。

非日常を感じられる3x3の試合は、地域を元気にするイベントとも言えますね。今後、3x3を普及するために、審判員に求められることは何でしょうか。

良い試合を運営することにつきますかね。タフな試合になればなるほど、負けたチームは悔しい思いをしますし、きっと審判に言いたいこともたくさんあるはずですが、それでも最後はお互いに拍手を送り合い、関係者全員を尊重しあえる試合こそ私は「良い試合」だと思います。実際、私の判定を受け入れてくれるだけでもありがたいのに、試合が終わった後に握手を求められたりすると、非常に感慨深いですね。「この人になら安心して任せられる」と、信頼される審判員を目指し、最後に全員が握手で終えられる試合を運営していきたいです。そんな試合を一目見れば、きっとたくさんの人が3x3を好きになってくれるはずです。

武井 晋平

武井 晋平(たけい しんぺい)

1985年2月27日生まれ、栃木県出身。JBA公認A級審判のライセンスを保有。3x3や5人制バスケットボールの全国の試合を担当しつつ、栃木県審判委員会では社会人カテゴリーの審判委員長、3x3委員会では委員長を務め、第一線で3x3の普及に貢献している。今後も3x3各種大会へ出場予定。

  • Text by Ayano Morimoto
  • Photo Provided by 足利商工会議所, 3x3.EXE PREMIER

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