「良質な非常識に挑戦し続け」
スポンサーと新たな関係性を
横浜DeNAベイスターズ 営業部高瀬 裕貴さん
野球
高瀬 裕貴(たかせ・ひろき)さん 28歳
株式会社横浜DeNAベイスターズ
事業本部 営業部
営業第1グループ
大学まで野球を続け、大手電子機器メーカーに就職。しかし学生時代から抱いていたスポーツ業界へのあこがれの気持ちがふくらみ、社会人5年目に転職を決意した。新天地は横浜DeNAベイスターズ。営業という職種は変わらないものの、商材が変わり、仕事に向き合うスタイルも変わったことに難しさを感じつつも、そこには関わって初めて分かる楽しさがある。(2020年7月27日取材)
営業部で44社を担当
営業部でどんな業務を担当しているのでしょうか?
スポンサー営業や放映権の営業を担当しています。プロ野球はキャンプが始まる2月1日がシーズンのスタートで、そこからシーズンが終わる11月ごろまでが実質的なスポンサーの広告掲出期間になります。営業活動としては、新規のお客さまを常に探しながらも、既存のお客さまには10月ぐらいから翌シーズンのお話をさせていただき、遅くとも1月には契約内容を決め、2月からスポンサー各社さまと新シーズンの業務を開始しています。
シーズン中はどういった対応があるのでしょうか?
スポンサー契約をしていただいているお客さまには、ベイスターズのアセットをいかに活用していただくかという話を進めております。スポンサー各社さまに球団のロゴなどの商標や選手の団体肖像などをお渡ししており、それをいかに活用していただくかなどをお話しすることが多いです。もちろん、お客さまが球場にお越しいただいた際にご案内したり、試合自体にご協賛していただく冠ゲームもありますので、そちらでの対応もあります。さまざまな形で各社さまとご一緒させていただいています。
今球団には何社のスポンサーがいて、高瀬さんご自身は何社担当されているのでしょうか?
球団全体では二百数十社のスポンサーにご協賛いただき、私はそのうち44社を担当させていただいています。
かなり多い印象がありますが、営業部は何人ぐらい在籍しているのでしょうか?
営業部は21人在籍しています。その中でもお客さまと向き合う営業はマネージャーを入れると私を含めて8人です。ほかには商品設計や戦略を決めていく営業戦略グループ、私たち営業担当が受けた案件を円滑に進めていく営業推進グループがあります。
放映権販売について、今シーズンはどこで放送を予定しているのですか?
地上波放送はTBSで年間3試合、NHK総合で1試合放送いただきます。BS波でもBS-TBSで30試合、NHK BS1で4試合、CS放送はTBSチャンネル2で全試合放送がございます。さらに地元のテレビ神奈川で約40試合、例年関西の放送局さんで阪神タイガース戦、広島の放送局さんで広島東洋カープ戦、名古屋の放送局さんで中日ドラゴンズ戦をそれぞれ数試合放送していただくこともございます。また、インターネットではParavi、DAZN、ニコニコ生放送で主催公式試合の全試合配信やラジオ中継も実施しています。さらに、ファームの主催試合の中継もELEVEN SPORTSで配信していただいております。
球団に入って驚いたのは……
2014年に新卒で電子機器メーカーに入社し、2019年1月に横浜DeNAベイスターズに転職したとうかがいました。
転職エージェントにご紹介いただき、面接してここに入社することになりました。大学まで野球をやっていて、スポーツ関連の仕事に携わりたい思いはあったんですけど、その当時はここで働くことまでは明確には考えていなくて。エージェントから紹介され、自分でも調べていくうちに、いろいろと新しいことに取り組んでいて面白そうだなと思い、応募しました。
前職ではどんな業務を担当されていたのでしょうか?
キッチン用品の営業をしていました。包丁を中心にキッチン用品を販売していて、代理店とともに販売店のバイヤーさんに向けて営業活動をしておりました。関東地区の営業担当を約2年、免税店の担当を約1年、関西の営業を少し、最後の約1年半は海外営業をしていました。アジアを中心に担当し、シンガポールの支社を通じて、現地の商社と取引をしていました。英語ができるわけではなかったので、当時は必死に英語を勉強しました(苦笑)。
「スポーツ関連の仕事に携わりたい」と思っていた中、実際に業界に飛びこんでイメージの違いなどはありましたか?
大きなイメージの違いはないですが、クリエイティブにかけるパワーがすごいなと驚きました。営業担当をしているとそうした反応をいただくことが多いですし、自分でもカッコいいメッセージを打ちだしているなと感じることが多いです。
ベイスターズに転職して、商材が違うことに戸惑いはなかったですか?
前職では、消費者であるお客さまに直接販売するのではなく、まずバイヤーとお話しして、それからお店とお話して、店舗に置いてもらうという流れがあり、最終消費者と直接コミュニケーションを取ることはありませんでした。また、商材も決まったものというところで商品ありきの営業をしていました。でも今は、ダイレクトにお客さまとお話ができるので、そこが大きく違いますね。お客さまとお話をする中で課題を見つけることから、それに適した商材を選択していくこと、さらにはベイスターズのアセットを活用していただき、課題解決をしていくので、そこが難しくも楽しい部分ですね。
担当企業と結んだ新しい形の契約
営業担当として、ベイスターズの売りや強みはどんなところにあると思いますか?
「良質な非常識に挑戦し続けます」という文言が、球団のコーポレートアイデンティティーの一部にあって、実際新しいことにチャレンジし続けているところは強みだと思います。毎年同じことをやる、ではダメなんですよね。「去年と違うところは?」「どこが良くなったの?」とみんながより良くしようと考えて取り組んでいて、同じところにとどまらない社風はすごくいいところだと思います。自分も営業として、過去になかった取り組みを実施して、スポンサーと新しい関係性を作っていければと思っています。
実際にご自身が新しく取り組んだことなどはありますか?
以前から支援していただいている企業と、スポンサーシップではなく、パートナーシップ契約を結ぶことになりました。新しい契約では、通常のスポンサーさまでやっている広告掲出や球団のアセットを活用したプロモーションに加えて、球団の各事業部門とビジネス面で連携してアクションを起こしていく予定です。具体的な内容はこれから決めていくのですが、こうした契約は球団初で、12球団全体でも珍しい取り組みだと思います。
そのほかスポンサー企業とのタイアップで印象深いものは?
ある会社さまとのスポンサードの取り組みを大きく変えたことが1つありました。いろいろな球団と取引されている中、我々とは課題感をヒアリングする中で広告宣伝よりも、体験型の取り組みを重視させていただくことになりました。例えば来場されたお客さまが使われるカップにご協賛いただき、オリジナルデザインにしてその中にQRコードを付け、先方が運営される特設サイトに誘導する仕組みを作っています。また、BOXシートにもご協賛いただいており、年間シートをお渡ししております。特設サイトではチケットキャンペーンを実施し、球場に来ていただいたお客さまがQRコードからサイトにいき、その中で先方の取り組みに触れていただきながら、チケットキャンペーンでまた球場に来ていただくというように、協賛の商材で連動することで、ファンの皆さまとの接点を作っていただくストーリーづくりをしております。特設サイト内では広報と連携し、選手への取材の様子などを記事として掲載することなども実施しております。
プロ野球はテレビでよく映るバックネット裏の広告が多様化しています。そこの構成も営業部で設計しているのですか?
はい、営業戦略グループが商品設計をしています。バックネットの広告は今年、固定看板だったものをLEDビジョンにリニューアルしました。LEDビジョンに変えたことで枠も見せ方も大きく変わりました。また球場内で言うと、一昨年はライトウィング席、昨年から今年にかけてレフトウィング席が増設され、個室観覧席や屋上の「ベイディスカバリーBOXシート」もできました。それぞれスポンサー企業にご支援いただき、個室観覧席には「NISSAN STAR SUITES(日産スタースイート)」、屋上の6人用ボックスシートは「J:COMベイディスカバリーBOXシート」という名称がついています。
スポーツ界を支えていきたい
コロナ禍で就労環境は変化したかと思いますが、スポンサー企業とはどのような形でコミュニケーションを取っているのでしょうか?
今は在宅勤務が基本で直接お会いする機会は少なく、ほとんどZoomなどのオンラインツールでパソコンの画面を通してコミュニケーションを取っています。ただ私は放映権の担当もしているので、中継があるときはスタジアムに行くこともあります。
今後取り組んでいきたいことは?
これからも外部との折衝や交渉が多い仕事に携わりたいなと思っています。営業のほかに興味があるのが、横浜スタジアムのそばにある横浜市庁舎跡地の再開発に関する事業です。DeNA本社が関わっている案件で、2025年にホテルや体験型施設が入った複合施設ができあがる予定なのですが、球団のスポンサー企業各社さまとも何かご一緒できないかなと考えています。
最後に、仕事における目標や夢を教えてください。
転職して1年半経ちましたが、自分はスポーツのことをまだ全然知らないなと思うことがよくあります。今は野球に携わっていますけど、グループ会社にはバスケットボールのチームなどもありますし、個人的にはいろいろなものに関わっていきたいと思っています。競技もそうですし、事業面でもチケットだったりグッズだったり、いろいろなものを見てみたい気持ちがあります。スポーツは街づくりとの親和性もあり、そういう意味でも面白いコンテンツですし、これからもいろいろなことを経験しながら、将来的にはスポーツを支えることができるようになりたいです。