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デジタル技術との融合こそ
プロレス業界の未来
SPORT LIGHT Academy
第3回レポート

新日本プロレスリング株式会社 代表取締役社長 兼 CEOハロルド・ジョージ・メイさん

プロレス

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ハロルド・ジョージ・メイさん 
新日本プロレスリング株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

大浦征也doda編集長とのトークを通して“スポーツ×ビジネス”で成功する秘訣をひもといていく「SPORT LIGHT Academy」。第3回のゲストは新日本プロレスのハロルド・ジョージ・メイ社長。今回、新日本プロレスの魅力を世界に発信すべく、新たな取り組みを推し進めているメイ社長に、スポーツ業界に限らず社会人として必要とされるスキルと心得、さらにはさまざまなフィールドで活躍できる人物像について語ってもらった。

メイ社長はお手製の“社長ベルト”を持って登場した[写真]兼子愼一郎

スポーツ業界で必要な5つのスキル

イベント冒頭、大浦編集長から自身のキャリアやスポーツ業界の求人の傾向、月1回のペースで行っている「SPORT LIGHT Academy」の特徴や狙い、今後スポーツ業界で活躍するために身につけてほしいスキルなどが説明された。その後、大浦編集長の合図で新日本プロレスのテーマソングが流されると、お手製の“社長ベルト”を引っ提げてメイ社長が登場。会場に詰め掛けた参加者から大きな手拍子が沸き起こった。参加者の多くがプロレスファンであることを察したメイ社長は「今日はアウェイになると思っていたから良かった!」と冗談交じりに笑顔を見せつつ、プロレス業界全体の時代背景と今後の展望から語り始めた。

メイ社長は「昭和の時代、日本のプロレス業界はテレビを中心にビジネスが成立していました。その後、平成に入ってから“興行色”が強まり、令和を迎えた今後はIP(intellectual property/知的財産)、つまり現在のプロレスの中身をいかにしてほかのビジネスに転換していくのかが重要視される時代になっていくだろう」との見解を示した。さらにこれからはゲームや出版、越境EC(国境を超えて行われるECサイト上での取引)などに結びつけていくこと、とりわけデジタル技術との融合が大きなポイントになると強調した。

続けて、「スポーツ業界で求められている人材」について聞かれたメイ社長は、「スポーツ業界は小規模の会社が多く、働く人材も少ないので、『私はこれしかできません』ということでは通用しない。1人で何役もこなすことが当たり前というのがスポーツ業界の特徴の一つ」と前置きした上で、①起業家精神を持つこと②イニシアティブを取ること③論理的にコミュニケーションすること④Adaptability(柔軟性/適応力)を持つこと⑤仕事に対する愛情を持つこと、という5つのスキルを身につけることが重要であると力説した。

中でもメイ社長が大切にしているのが仕事に対する愛情だ。「これまでの経験でどんな会社でも仕事はできます。でも、そこに愛がなければ、興味もわかないし、イニシアティブを取ることも、起業家精神を発揮することもできないと思う」と明かす。もちろん自身が新日本プロレスの社長に活躍の場を移したのも「もともと好きだった」ことが理由の一つ。加えて、「(新日本プロレスの魅力を世界に発信できていない現状を)もったいない」と感じ、「新日本プロレスを、日本を代表するスポーツコンテンツ会社にしたい」という就任時の思いを、自分のスキルで実現しようと考えたのだという。まさに“プロレス愛”がメイ社長の仕事へのエネルギーになっていることをうかがわせた。

自身の経験からも、仕事への愛情がいかに重要かを語った[写真]兼子愼一郎

デジタル技術導入で広がるプロレス業界の可能性

現在、新日本プロレスでは年間に約150大会、2日に1大会のペースで興行が行われているが、選手の休養や会場への移動も考慮すると、試合数をさらに増やしていくのは不可能とのこと。その中で、今後、どうやって収益を上げていくのか? こうした今後のプロレス業界の未来像について話題が及ぶと、メイ社長は包み隠すことなく明確なビジョンを明かしてくれた。ポイントはやはりデジタル技術を活用した新時代型のサービスだ。

1年間の興行回数を増やせない以上、会場を大きくすることで来場者数を増やし、1興行当たりの収益を上げる方法も考えられなくもない。ただし、その場合も見込みどおりに集客できるとは限らない。こうした課題に対して、メイ社長は「動画配信サービスを駆使すること」をポイントに挙げた。「インターネットにつながってさえいれば、会場に来られなくても、世界中どこにいても会場にいるのと同じようなバーチャル体験ができますから」と話し、デジタル技術を導入し、時代に即したサービスに解決策を見いだそうとしている。

とはいえ、これから先の興行を成功させるための解決策の一つとされる動画配信サービスにも課題はある。「もちろん動画配信サービスも無料ではありません。世界中のプロレスファンに視聴料を払ってもらうために、一度は海外に出ていって興行を行うことも重要。そこで新日本プロレスを知ってもらい、タッチポイントを増やすためにYouTubeやPodcastといった動画サービスのほか、Twitter、Facebook、InstagramといったSNSを駆使して私たちとの接点を増やしていきたい」とデジタル技術を積極的に導入していく構えだ。

イベント後半ではメイ社長との質疑応答が行われ、参加者から多くの質問がぶつけられた。なかでも「優秀な社員を集めるために、どのように夢を持たせているのでしょうか?」という質問に対して、メイ社長は「非常にいい質問ですね」と笑顔を見せながら「お給料だけで言えば、新日本プロレスよりも待遇のいい会社もあるでしょう。でも、ここでは好きなプロレスに毎日携われますし、お金には代えられない“何か”がある。それは夢であり、自分の力で会社を伸ばしていくことでもある。小さな会社だからこそ、イニシアティブを取っていろいろな仕事ができる。そういうこともメリットになると思っています」と回答。なるほど、プロレスというファンに夢を与える業界を引っ張る経営者として、それを支える社員も夢を持ち、主体的に会社を動かしている実感を持てることも重要ということなのだろう。

約2時間にわたって展開された今回の「SPORT LIGHT Academy」では、今、実際にスポーツ業界で起こっている多くの話題が取りあげられた。その一つひとつに対して、分かりやすく、そして熱心に説明するメイ社長と大浦編集長に参加者たちの“熱い視線”が注がれていた。イベント終了後、「メイ社長のたとえ話やご自身のエピソードがとても面白く、あっという間でした」という男性参加者は「新日本プロレスの具体的な話を通して、プロレス団体だけではなく日本のさまざまなスポーツビジネスがどう動き、どう回っているのかが分かりやすかった」と話してくれた。同様の思いを持ち帰り、スポーツ業界への転身への思いをさらに強くした参加者も多かったに違いない。

熱心に話すメイ社長と大浦編集長に、参加者たちの“熱い視線”が注がれた[写真]兼子愼一郎

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