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ラグビー界には
ビジネスパーソンが
もっと必要

元ラグビー日本代表
株式会社HiRAKU 代表取締役
廣瀬 俊朗 さん

SPORT LIGHT Academy 第8回レポート

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廣瀬 俊朗(ひろせ・としあき)さん 38歳
元ラグビー日本代表
株式会社HiRAKU 代表取締役

スポーツ業界で活躍する著名な方をお招きし、大浦征也doda編集長とのトークを通じて“スポーツ×ビジネス”で成功する秘訣をひもといていく「SPORT LIGHT Academy」。2019年11月13日に行われた第8回のゲストは、ラグビー元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さん。ラグビーワールドカップ2019アンバサダーや株式会社HiRAKUの代表取締役を務める一方、ドラマ出演など多方面で活躍する廣瀬さんに、自身のキャリアや今後について語ってもらった。

2004年から東芝でプレーし2016年3月、34歳で引退した[写真]兼子愼一郎

現役を退き東芝を退社

廣瀬さんはラグビーが盛んな大阪府の出身で、5歳のときに「両親に無理やりスクールに入れられて(笑)」競技をスタートさせた。その後、豊中市立第十四中学校でも部活とスクールでラグビーを続け、高校は進学校の北野高校へ。高校日本代表のキャプテンを務めるなど文武両道を貫き、大学は指定校推薦で慶應義塾大学の理工学部に進み、引き続き勉学とラグビーを両立させる日々を送った。

学歴を考えれば、卒業後に大手企業で社業に専念する道もあったが、廣瀬さんは東芝に入社し、東芝府中ブレイブルーパス(現東芝ブレイブルーパス)でプレーする道を選んだ。「ラグビーは若いうちしかできない。勉強やビジネスは後からでもできると思った」というのがその理由だが、「プレーするのは最初の4年間だけ」という当初の約束はいい意味で反故にされ、結局は12年にわたって現役生活を続けた。その間、日本代表でもプレーし、2012年にはキャプテンに抜擢。南アフリカから大金星を挙げた2015年のラグビーワールドカップでもメンバーに名を連ねた。

2016年3月に現役引退を表明。「W杯で素晴らしい成績を収められて、めちゃめちゃハッピーでした。2015年をキャリアのハイライトにして、W杯が終わったら引退しようと自分の中で決めていました」と、現役を退くことに迷いはなかった。2019年2月に東芝を退社した際も「やりたいことがこんなにたくさんあるのに、東芝で働き続けていたらできなくなってしまう」と、自ら決断した。

「やりたいことがたくさんある」の言葉どおり、俳優デビューを飾り、大学院に通って同年9月にMBA(経営学修士)を取得し、W杯のアンバサダーを務めるなど、精力的な活動を続けている。大会参加国の国歌で来日する方々をおもてなしする「Scrum Unison」プロジェクトも廣瀬さんの発案だ。

退社から半年あまりの間にこれだけ精力的に活動してきたが、廣瀬さんの意欲は尽きない。「キャプテン同士で学び、いいキャプテンを育てるためのプラットフォームを作りたい」「4カ月間ラグビーをやって、4カ月間サッカーをするみたいな感じで、いろいろなスポーツを体験できるアカデミーを作りたい」「プロアスリートの資産運用のサポートをしたい」「ニューヨークやパリに『みそカフェ』を出店して、みそ汁を広めたい」「健康産業も大事だと思うので、『iPhone』と『Apple Watch』を連携させて従業員の健康状態を見る、みたいなサービスも、知り合いの人と話を進めています」

その口から次々にプランが明かされた。多方面にアンテナを張り巡らせ、計画を練り続ける理由を、廣瀬さんはこのように説明した。「種をまいておかないと、どれが成功するか分からないじゃないですか。ある程度の事業計画みたいなものを作っておいて、1年後、2年後に『あれをやりたい』となったときにパッと出してやれるようにしておきたいんですよ」

スポーツ以外の事業を含め、計画中のいくつかのプランを明かした[写真]兼子愼一郎

スポーツ界が進むべき道

廣瀬さんは、こうした考え方は転職を考えている方々にも応用できるはずだと話す。「転職するにしろしないにしろ、ある程度のプランを作っておくのは、いいシミュレーションというか、トレーニングになると思います。『自分にはこれしかない』という考え方で動こうとすると、うまくいかなかったときに厳しくなる気がするので。どんな業種の会社でも行けるぞ、ぐらいのずぶとさを持っていたほうがいい」

広い視野を持つ廣瀬さんだが、プロ化への道を歩み始めているラグビーの現場に携わる意思はないのだろうか。大浦編集長の問いかけに対して「監督をやる勇気はまだない」と回答する一方で、別の可能性を示唆した。

「経営については、やったことがないので自信があるかどうかは何とも言えないですけど、興味はあります。ラグビーをビジネスにしていきたいし、お客さんが増えたら選手に還元できる部分もたくさんあるはずです。選手の環境を良くしたいというのはずっと思っているので、興味はありますね」

では廣瀬さんは、ラグビー業界も含めたスポーツビジネス業界は今後、どのような道を進むべきだと考えているのだろうか。「皆さんのようなビジネスパーソンがもっと必要だと思います。競技出身者ばかりで協会やチームを運営するのには限界があると思いますし、営業活動なども改善の余地はあると思います。アメリカではスポーツ業界にビジネスパーソンがどんどん入っていますが、そういった流れが大事だと思いますので、皆さんにどんどん入ってきていただきたいです」

資金調達や広報活動、商品開発、ファンエンゲージメントなど、外部からの人材が必要な分野は多岐にわたる、というのが廣瀬さんの意見だ。スポーツ業界への転職を望む多くの方に活躍できるフィールドがあると考えている。

「監督をやる勇気はまだない」が、ラグビーチームの経営には関心を示す[写真]兼子愼一郎

最終的には「自分がどうしたいか」

さまざまな経験を積んだ廣瀬さんのエピソードは尽きないが、1時間を過ぎたあたりで出席者からの質問に廣瀬さんが直接、回答する時間が設けられた。ある女性参加者は「いろいろなスポーツを体験できるアカデミーを作りたい」という廣瀬さんの計画に興味を持ったようで、「私たちのような一般の会社員は、どのような形でその計画に携わることができるでしょうか」と質問。廣瀬さんはいろいろな形でサポートしてくれるスタッフを必要としているようだ。「サポートスタッフのような形になると思いますが、子どもたちへの連絡や活動場所の確保など、裏側でサポートしていただく方はかなり必要だと思っています。その方たちに対してどれだけの金額を支払えるかはまだ分からないですが、授業料やスポンサー契約料としてお金をいただいて、その中からお支払いできるような形を作った上で助けていただけるようになるといいですね」

アメリカンフットボールをやっているという男性からは「競技人口が少ないのでいろいろな方に知ってほしいと思っています。個人的な努力としてボールを持ってランニングしたり、アメフトのボールでキャッチボールしたりしているんですが、個人的にできる努力にはほかにどんなことがあるでしょうか」という切実な質問が投げかけられた。廣瀬さんは「一番は日本代表が勝つこと」と言いつつ、この男性の活動を評価し、このような言葉で後押しした。

「競技の普及を考えて動いているのはすごくいいことだと思うので、あとはどうやって周囲を巻きこむか、どれだけ仲間を増やすか、だと思います。小さな活動をしている人はほかにもいると思うので、それぞれの“点”をつなげていってほしい。やりながら少しずつ増やしていってほしいですね。あと、SNSを使うのが今の時代ではポイントかな。ラグビー選手とコラボしても面白いでしょうし、著名人の方を巻きこんでもいいかもしれないですね」

濃密な質疑応答が続く中、大浦編集長からも「他競技の経営や運営に携わる可能性は?」という質問が投げかけられ、廣瀬さんは前向きな姿勢を示した。「まったく知らないところに行くのが好きなので、機会があればやる気になると思います。そのほうが客観的にラグビーのことを見られるかもしれないし、面白そうです。実際、アイスホッケー業界に一度、勉強しに行こうと思っています」

それぞれの質問に回答するうちにイベント終了の時間が来た。廣瀬さんは出席者たちに次のようなメッセージを送り、今回のイベントを締めくくった。「最終的には『自分がどうしたいか』が本当に大事だと思います。そこをもう一度、掘り下げて、小さな“冒険”をしながらどんどん(可能性を)広げていってほしいですね。本当に好きだったら広げていけるはずです。いきなり転職しないまでも、何らかのアクションを起こすことが大事だと思います。やらないままで終わるより、ダメだったら戻るぐらいの感じでどんどんチャレンジしていってください。その姿勢を見たら周りの人もついていきたくなります。チャレンジする人はカッコいいですし、そんな人が日本に増えたらうれしいですよね。皆さんはこのイベントに来た時点でそういう可能性があると思いますので、皆さんと一緒に、過程を苦しみながらも楽しんで進めていけたらいいですね」

大浦編集長からの「他競技に携わる可能性は?」という質問に、「機会があれば」と前向きな姿勢を示した[写真]兼子愼一郎

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